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ここのところ、忙しくて更新遅くなりすみません。

 それは丁度ダンジョンを始動させてから一週間(こちらの(こよみ)は日本の暦と何故か同じ)たった頃。三日目と同じように順調に冒険者を義姉さん達が蹴散らしている場面を観ていた時だった。


 ビーーーーーー!!


 警戒音のようなビープ音が支配の間に響き渡った。

 一体何事か!? と一瞬慌てた。ぶっちゃけると、先輩が何か罠でも仕込んでいて、それが発動したのかと思った。思わず部屋中をぐるりと見回すが、特に変化はない。

 いきなり先輩が登場してくるとか、そういったハプニング的な出来事も一切起きてない。逆にそんな状況が怪しい。

 訝んでいると、しかし、横からフローラがいつもと変わらぬ声を掛けてきた。


「マイマスター、画面の左隅で御座います」


 その声で反射的に画面に目を戻す。おお、確かに左隅にアラートマークが浮き上がっている。先程のビープ音の原因はこれなのだろうか。いや、フローラが指摘してるんだからあの音と同時にこれが表示されたと考えるべきで、原因はこれで間違いない。

 そうして原因が判ったところで、途端に慌てて取り乱したことに気恥ずかしさが込み上げてきた。多分耳とかが赤くなってると思う。だって少し熱くなっているのが分かるし。

 それでも表面上はそんな気持ちなんておくびにも出さないよう振る舞い、フローラに礼を言う。


「本当だね。教えてくれてありがとう」


「いえ、マイマスターのお役に立てましたのであれば嬉しい限りでございます」


 慇懃に言葉を返してきたフローラの声音は本当に嬉しそうだった。そこまでストレートだとなんだか少し面映ゆい。

 が、今は取り敢えずこのアラートマークだ。車のハザードマークのような三角の中に「!」が入っている奴だ。


「どことなく嫌な予感がするのだけど、開けないわけにはいかないよねぇ」


 一人ごちつつも、ちらりとフローラを見ると、その視線に気付いた彼女は微笑みを湛えながら首肯した。仕方ない、パネルを操作してアラートマークの詳細を表示させる。

 すると、画面いっぱいに先輩の姿が表示された。背景は真っ白でいつかの夢の時のような場所にいるらしい。先輩の他には何も映っておらず、ではその先輩はというと非常ににこにこした表情で立ってるだけだった。


「これ、一体何が始まるのかな?」


「……(わたくし)には計りかねますが、この方がお出でになっていますので、それなりに重要事かと思われます」


 お互いにヒソヒソと声を潜めて話していると画面の中の先輩が何かに気付いた素振りを見せた。


『え? もうこれ録画されてるの? やだなあ、早く言ってよ。後輩君に先輩の威厳というものを教えられないじゃないか。頼むよ』


 恐らく、カメラを持っている人に文句を言っているのだろう。カメラの人はひどく狼狽した声で謝ってる。けど先輩、威厳なんて前々からありませんよ。

 

『ま、いっか。では気を取り直して……こほん、やあ後輩君。元気にしているかな? 君たちの活躍はこちらでも見せてもらっているよ。そんなに奇をてらっていないのに負けなしなのは凄い凄い。宵さんや灯さんの貢献が大きくとも彼女達が力を発揮できているのは君の力だよ』


 何故だろう、全然誉められている気がしない。先輩は本心ですよ、といった顔で言っているけれど、胡散臭さが増しているように感じた。


『ともあれ、この映像を見ているという事は君は無事に冒険者を200人撃退したんだね。おめでとう!』


 声と共に拍手をしだしたら、先輩の後ろで花火が上がり、脇からは拍手喝采が聞こえてくる。……これって確かCDの効果音シリーズに入ってたやつだな。花火もよく見ると映像を投影したものだ。


『と、いうことで君はこれからダンジョンランクが上がって「ランク2」となる。ただ上がるだけではなくて、特典もどっさりだよ。配下召喚の種類も増えるし、商会呼出で買える品目も増える。それに何と言っても新しいフロアが作れるんだよ』


 確かに最初の頃にフローラが教えてくれた気がする。ランクが「2」に上がることで選べるフロアも増えるんだっけか。


『あ、後僕からも君に折角だからお祝いの品を送っておくよ。この映像が終わったら勝手に召喚されるから確認しといてね。それじゃこれからも負けないよう頑張ってね。ばいば~い』


 大きく手を振る先輩の姿が数秒映し出された続いた後、ブツンとテレビの電源を切るような音と共に映像が途切れた。それと共に隣の召喚の間から大声が響いてきた。


「うっはー。ここがマスターのいるところですねー。あれー? マスター、どーこーでーすーかー? かくれんぼしてないで姿を見せてくださいよー」


 可愛らしい、そう所謂ロリボイスとかいう声だ。しかし、言っている内容は頓珍漢なもの。


「……あまり頭は良くなさそうだね。悪いけど連れて来てくれるかな、フローラ」


 振り返りながら頼んでみたものの、フローラの様子がおかしい。憂鬱そうに額に手をやって溜め息まで吐いている。美人がやると様になるから問題はないけど……もしかして知り合いなのかな?


「フローラ」


「はあ、まさかあの子が来るなんて。あの方も何故無茶な人選になさるのでしょうか」


「おーい、フローラさーん」


「まず間違いなくマイマスターを巡っての争奪戦が勃発しますね。特に灯とは……はぁ」


「フローラ、フローラったら。ううーん、全然聞いてないなあ」


 致し方ない。彼女の目の前に手を差し出し……。


「あら?」


 パチン! それに注意が行ったところで叩く。フローラは「ひゃっ」と可愛らしい悲鳴を上げてから漸く僕に視線を向けてくれた。


「あ、いえ、その、マイマスター如何なさいましたでしょうか?」


 あ、誤魔化そうとしてる。よく見ると頬や耳が微かに赤くなってる。


「うん、ごめんだけど、隣で騒いでいる子を連れて来てくれるかな?」


「畏まりました。すぐに連れてまいります」


 フローラはいつもよりも早い速度で歩いて召喚の間へと向かっていった。そして、そのまま扉を開けて、連れてくるのかと思いきや、中へ入っていった。

 次いで聞こえてくるのはフローラの声とロリボイス。詳しい内容は分からないけれど、何だか揉めてそうだ。フローラがあそこまで声を荒げるなんて一体どんな子なのだろうか……。







「と、いうことで今日から新しく配下になるヘリアンサスさん」


「ヘリアンサスです。よろしくですよー。あ、そうそう、ヘリアンサスって名前あまり可愛くないからリアって呼ぶですよー」


 僕が紹介すると、彼女は自ら名乗ってくれた。

 が、最初会った時もそうだったけど、テンションが高い。今もそのテンションの高さから来る明るさを前面に押し出して、義姉さんたちを圧倒している。悪い子ではないのだけど……疲れる。


「妹キャラはあたしだけで充分なんだけど?」


「妹にも種類はありますからー。私は明るく快活な愛されキャラですよ? ほら被らないではないですかー」


「むきー!! 明るく快活愛されキャラはあたしだーーー!!」


 知らないうちに義妹とリアが喧嘩しだした。聞いていると、妹がどうのこうのと言っているのだけど……妹は灯だけだよ?

 義姉さんとフローラも義妹とリアの行状に溜め息を一つ。しかし、あの二人に何か言う事もなく、僕に視線を向けてきた。


「で、洸ちゃんのランクが上がったのは良い事なのだけど、フロアが増えるのかしら?」


「マイマスターが創造なさらない限りは増える事はありません」


「ふぅん。洸ちゃん、どうするの?」


 うん、折角リアも来てくれたので、彼女を入れたメンバーでの防衛を色々と考えたのだけど、実はあまりいい案が浮かばなかった。そこで、今回はフロアが増えた事をいいことに、全く別のアプローチをしてみようかなと思っているのだ。

 その事を簡単に義姉さんとフローラに説明し、フロアの使い方についても話してみる。全てを話し終えた段階で、義姉さんは呆れた表情を、フローラは崇敬の念を込めた表情をくれた。


「ある意味博打よね、これ。下手したら簡単に突破されちゃうわよ」


「いえ、しかし、この方法ですと、冒険者側も大いに戸惑いますし、何より人手を掛けなくて済みます」


「それはそうだけど……サシャ、貴女はこういったダンジョンに入った事があるかしら?」


 義姉さんはフローラの言葉を受けて、はたと思いだしたように勇者へと話を振った。完全に蚊帳の外に、というよりも部外者なのに何故居ないといけないのかと不満そうな顔をしていた勇者は思いもよらない話にひくっと喉を鳴らした。


「あ、あの、いえ。僕はこういったダンジョンには入るのを止められていましたので、話に聞いた限りのことしか分からないです」


「じゃあ、その話を教えて」


 義姉さんが頼むと、「村のおっさん連中から聞いた話で、酒の入った事なので真偽は不明」と断りを入れてから話しだした。

 それによると、僕の考えているダンジョンは意外や意外、攻略に時間が掛かっていたそうだ。酒の時の話で、誇張してそうだから鵜呑みには出来ないけれど、やってみる価値はありそうだ。

 

「ふう、仕方ないわね。洸ちゃんの考え通りにしましょう」


 義姉さんが折れた。

 こうして、新しいフロアのうち一つは構造が決定した。もう一つについては……DPが溜ってからでいいんじゃないかな。うん、そうしよう。

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