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奇襲

今度こそ本当に年内最後の投稿です。

『この部屋が情報に上がっていた沼地と高台か』


『その両方に敵はいるって話だけどね。もっとも沼地の方は魚類だから僕達には関係無いかな』


『あら? そのようなことを言ってていいのかしら? 相手は弓を射るという話だったと思うのだけど?』


『そうそう。そのままバビューンて撃ち抜かれて沼地にア~レ~ってなるよ。にしし、そうなっても助けて上げないからね』


『下らんお喋りはその辺にしておけ。さっさと攻略して戻るぞ』


 順に槍士(♂)、弓士(♂)、弓士(♀)、槍士(♀)、魔法士(♂)の発言。今の会話の流れからするに気を付けないといけないの魔法士か。どうにもリーダーみたいに指揮を執っているし。


 シュッ! ザシュ!!


 その時、その魔法士の頭にいきなり棒が生えた。周りにいた残りの冒険者達が目を丸くしている。ちなみに、僕も目を見開いている。いきなりのことに理解が追い付いてこなかった。まさか一番の難敵だと思っていた魔法士がこうもあっさりと殺られるとは思いもしなかったのだ。


『うふふ。油断しすぎよ』


 呆然とする彼彼女らに場にそぐわない妖艶な声が降り注いだ。4人全員がそちらの方へ顔を向ける。

 そこは入り口から見て横手、左の方でちょうど画面から見切れてしまう所だった。しかし、声音からそこに誰がいるのかははっきりしている。


 義姉さんだ。


『前の組も入った直後に気を抜いていたから試してみたのだけど……案外上手くいったわね。ありがとう、貴重な体験をさせてくれて、ね。お、バ、カ、さん』


 その言葉に思考停止していた4人の顔が真っ赤に染まる。代表してか、槍士(♂)が吼え猛った。


『貴様、よくもトーキンを! 許さん!!』


 そして、そのまま義姉さんに向かってその背の羽根をはばたかせて飛び出す。槍士(♂)の後ろでは弓士(♂)が残りの2人に合図を送って簡単なフォーメーションを組み出した。

 案外切り替えが早い。魔法士の事はひとまず無視している。それと、リーダーと思われる魔法士が居なくなったから烏合の衆になるかと思ったのに、あの弓士(♂)も中々にやるな。


『ふふふ。そんなにがっついては駄目よ』


 槍士(♂)の飛び出すスピードは特筆すべきものがあったが、既に義姉さんは離脱を始めていたようで、すぐに画面の中に姿を現し、そのまますいすいと義妹達がいる所へと飛んでいっている。


『待て!!』


 槍士(♂)はそれを追いかけて義姉さんに勝るとも劣らない速度で追いかけて来ている。後ろからは弓士(♂)を中心に残り二人の女性も一緒になって止まるよう指示している。しかし、単に聞こえていないのか、それとも無視しているのかは分からないが、槍士(♂)が止まることはなかった。

 そのまま義姉さんと槍士(♂)の二人は世界スプリンターのような速さで沼の上を通過する。今回は流石にフレッシェンシャークであっても襲えないようで、その姿を現すことはなかった。後ろからはまだ制止を呼びかける声が続いている。しかし、それを遮るかのように義姉さんの挑発が飛ぶ。


『ほらほら、鬼さんこちら。そのような鈍間な動きでは捕まえることは出来ないわよ』


『黙れぇぇぇぇぇぇぇ!!』


 そのまま義妹達のところまで引っ張って仕留めるのかと思いきや、義姉さんは沼の上をぐるぐると回りだした。フェイントも入れているようで、槍士(♂)のほうはそれに引っ掻き回されている。

 義姉さんの狙いは何なのか。今一つ見当が付かない。それは相手側も同じようで、罠を警戒して残りのメンバーは動くに動けない状況になっている。 


「フローラには姉さんが何をしようとしているか分かる?」


 ふと思いつきでフローラに尋ねてみるも、彼女は力なく首を振るだけだった。


「いえ、(わたくし)もあれが何を狙っての動きなのかは分かりません」


「ううーん。一体何がしたいんだか……」


 未だ沼の上を縦横無尽に移動して撹乱している義姉さん。楽しそうではあるけど、相手の方はだんだん疲れてきたのか速度が落ちて来ている。顔にも苦悶の表情が見え隠れしている。

 前に聞いた話だと空を飛ぶ有翼人種は、鳥たちみたいに羽を利用して揚力を得て飛んでいるのではなくて、魔力を用いて力場を生成して飛ぶのだという。ちなみに背中の翼はその力場を生成するための器官らしいので、そこが傷つくと力場を維持できずに墜落してしまうらしい。

 つまり義姉さんもあの槍士(♂)の人も魔力が尽きれば飛べなくなる。そして義姉さんは魔力こそ常人並みだけど、なんちゃって人外のような俊敏値なのでワンアクションに使用される魔力は圧倒的に小さい。結果、相手の方がガス欠になるのが早い。


『ふふ、もうへばってきたのかしら?』


『くっ! なんのまだまだぁぁぁぁぁぁ!』


 義姉さんが更に相手を煽りたてている。槍士(♂)は粋がっているものの魔力は嘘をつかない。飛行がふらふらしている時点でガス欠寸前なのは明らかだ。義姉さんはこれを狙っていた?

 その時、ふと残りのメンバーの方へ視線を向けると、彼らはたがいに頷き合っていた。そして勢い良く飛び立つと槍士(♂)のところまですぐさま近寄った。多分義姉さんの行動の意図がガス欠狙いだと判断したのだろう。


『あらあら、漸く助けに入ったのね。もう鬼ごっこは終わりかしら』


 彼らが近寄ったところで義姉さんはその場にホバリングして彼らに問いかける。まだまだ魔力に余裕がありそうで、疲れている様子は見えない。


『化け物め……』


『コルスがこんなに魔力を消費するなんて……』


『コルにーちゃんとトーキンさんの仇はとらせてもらうよ!!』


 順に弓士(♂)、弓士(♀)、槍士(♀)の順で三者三様の反応だ。コルスと呼ばれた槍士の人は弓士(♂)に抱えられると、そこで緊張感を維持できなくなったのか、ふっと気絶した。


『ニルス、コルスが気絶した。一旦引き揚げるよ』


 弓士(♂)が冷静に判断した。しかし、ニルスと呼ばれた槍士(♀)は兄(?)同様にまるで人の話を聞いてない。槍を構えて義姉さんの隙を窺っている。それを受けて、弓士(♀)のほうも弓に矢を番えて義姉さんを牽制している。弓士(♂)は溜め息を一つ吐くとすすすと後ろに下がろうとした。その時だった。


『灯!』


 義姉さんが義妹に呼びかけた。今の今まで高台の後ろに隠れていた義妹がその姿を露わにしている。既に弓矢を構えていた義妹はニヤリと人を食った笑みを浮かべて矢を放った。


『荒山流弓術奥義「叢雨」!!』


 数本束ねた状態からそれをバラバラにならないよう纏めて放つ荒山流奥義の一つ。義妹が使えるのは知らなかったが、この場面で放つくらいだから練習はしてきてたんだろう。矢はバラける事なく真っ直ぐに彼らへと向かって飛んでいく。

 さらにここは異世界。そして義妹も既に人間ではなく妖精族。その要素を活用するかのように義妹はそれに精霊術をオンした。


『偉大なる風の精霊シルフよ。彼の矢に力を与えたまえ。ウィンドフォース!!』


 矢の速度が途中でグンと上がる。その現象に驚き目を剥く彼らに義妹が放った矢は殺到した。しかも狙い澄ましたかのように最後に少しだけバラけ、彼らの急所である翼へと突き刺さった。


『ガアアァァァァァァ』


『キャアアアアアアア』


『イヤアアアアアアア』


 3人は翼を貫かれた影響で力場を維持できずに沼に向かって真っ逆さまに落ちていく。そこで義姉さんは何を思ったのか、槍士(♀)と弓士(♀)の翼を掴んだ。流石に魔力は厳しかったのか、少しだけよろよろしながらも二人を高台の上まで連れて行った。

 ん? 男二人はどうしたって? 沼に真っ逆さまに落ちてそのまま鮫の餌になりましたよ……南無。



11月からの投稿でしたが、今年はありがとうございました。

皆さまのおかげでなんと評価が500ポイントを超えました。人気作家と比べますとあれですが、自分としては大変嬉しく思います。

お気に入り、評価、感想を下さった方々誠にありがとうございます。また来年もどうぞよろしくお願いします。

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