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閑話(宵視点)

 今、私と灯はフローラという名のお邪魔虫に案内されて洸ちゃんが捕まえたゴミクズ(勇者)のいるところへと向かっていた。まったく、何故このようなことになったのかしら。本当に忌々しいったらありはしない。




 今からもう十何年も前の話。確か灯もいたし、私が3、4歳位だったかしら。ある日お母さんに連れられて灯と一緒にある家へと出掛けたの。家とは言っても当時はお互いにアパート暮らしで、この日も何処とも知れないアパートだったわね。そして、そこで初めて洸ちゃん(とお父さん)に出逢った。


「ほら、(よる)。新しいお父さんと弟よ」


 お母さんは他にも色々言ってたけど、そう言ったことだけは覚えてる。でも、その時私は妹である灯の世話をさせられていたこともあり、さらに面倒がかかると思って不貞腐れてそっぽを向いていたわ。

 その初顔合わせから一ヶ月の間、一週間に一度、日曜にどちらかがどちらかの家に赴いていたわ。多分、私達が慣れるようにと思っての行動だったのだろうけど、効果はなかった。あるはずがなかった。

 だって、日曜はよく友達と遊んでいたのにそれが出来なくて、おまけに嫌な(この当時は、よ!!)弟になる子供と一日中一緒。向こうが話しかけてきても無視してたわ。灯の世話だけをしてほったらかしにしていたの。


「お姉ちゃん……」


 見捨てられた子犬のような構いたくなるような声で何度も呼ばれていたけど、すべて無視したわ。応える義理はなかったもん。今からじゃ考えられないけどね。

 その後、全く新しいアパートを借りて一緒に暮らすようになっても対応は同じ。お母さんもお義父(とう)さんも心を開いてあげてと言ってきたけどしなかったわ。

 灯については私に遠慮したからか、洸ちゃんと仲良くすることはなく、家で洸ちゃんに構うのは両親だけになっていった。

 それからもずっと冷たくしていると、いつしか洸ちゃんも諦めたのか、私に関わることはなくなった。灯にも消極的にしか関わっていなかったわね。それでも灯は洸ちゃんを嫌う事はなかったみたいだけど。

 小学校に入ってからは冷たくしていることに少し気まずさを感じるようになったわ。分別が付くようになったと言うのもあるし、登校班の他の皆の目があったから。だけど、だからと言って止めるわけにはいかなかった。今更どんな顔をすればいいのか考えられなかったもの。


 でも、ある日を境に私は変われた。


 それの理由は覚えていないけれど、今思うと因果応報だったのかしらね。私が五年生のときだったと思うわ。その頃くらいから自分で言うのも驕ってるみたいなのだけど、とても可愛らしかったの。そして、それを自覚していたから、かさに着て威張り散らしていたの。

 そんな日々を過ごしていると、ある日私は学校の男子から苛められたのね。多分彼らの鬱憤が溜まりに溜まった結果ね。放課後だったと思うわ。周りに人はいなかったから。

 私は数人の男子に髪の毛を引っ張られ、ランドセルの中身もゴミ箱に捨てられた。流石にショックだったけど、それはまぁ回収すればいいだけ。そう思って強気な姿勢を崩さないでいると、それだけでは飽き足らなかったのかしらね。男子は気持ちの悪い笑みを浮かべてこう言ったのよ。


「おい、こいつ脱がして写真とろうぜ。写メにして回しゃ言いなりに出来るぜ」


 恐怖した。何とか止めさせようと懸命に暴れたわ。でも男子の力の前には無力だった。いつも粋がっていたけど結局純粋な力には勝てなかった。こんなゴミ屑のために綺麗にしてきた訳じゃなかったのにって涙したわ。

 そして、そんな私の様子に満足しながら主犯格がハサミを手に服を破り捨てようとしたその時だった。


「お姉ちゃんから離れろ!!」


 そう叫んで洸ちゃんが箒を手に男子達に襲い掛かったのよ。私はビックリしたけれど、それ以上にビックリしたのは男子達だったわ。呆然としてたせいで箒で叩かれまくっていたわ。

 でも奇襲だけでは追い払えることはなく、何時しか男子たちも反撃に出たの。そして、洸ちゃんはあっという間に劣勢に追いやられて、袋叩きにあった。本気で殴っているのが判ったわ。だって洸ちゃんは頬を赤く腫らして、口からは血が滲んでいたのだから。体を丸め亀のように防御していたけど、それが嗜虐心をくすぐったのね。暴行は激しくなるばかりだったわ。


「こらーーー!! お前たち何をしている!!」


 この時、こうして先生か来なかったら洸ちゃんは本当に死んでいたのだと思う。先生は灯が呼んできてくれたみたい。

 元々は洸ちゃんと灯の二人で私を探していたみたいで、私が男子数人に苛められているのを見た洸ちゃんが灯に先生を呼んでくるよう言い付けたらしいの。

 男子は全員先生に連れていかれた。先生は一人だけだったから洸ちゃんは私と灯の二人で保健室に連れていくこととなったのだけど……。

 その時、私は謝れなかった。ずっと冷たくしていた私を助ける代わりにボロボロになった洸ちゃんに謝れなかったのだ。今までのやり取りが脳裏をよぎって言葉を消し去っていった。

 私は無言で灯も気を使って無言。でも、ただ一人、洸ちゃんだけは私の姿を見てこう言ったのだ。


「お姉ちゃんが無事で良かった」


 泣いた。わんわん泣いた。灯が心配するほどに泣いた。洸ちゃんに抱き付いて泣いた。洸ちゃんはそれ以上は何も言わずに抱き締めてくれていた。背中をポンポンと優しく叩いてくれたのは多分ずっと忘れないわ。

 その後、洸ちゃんの怪我で学校と揉めて、結局転校することとなった。でもそれはそれで良かったと思う。金輪際あいつらの顔を見たいとは思わなかったのだから。

 あの事件以来、私の中での弟株は急上昇したわ。ナイトのように私を助けたくれたのだから当たり前なのだけどね。

 その後、紆余曲折ありはしたものの、私と洸ちゃんとの仲は良好。洸ちゃんも満更ではないみたいだし。そして、いつか灯を出し抜いて洸ちゃんと結ばれる予定だったのよ。

 なのにラク(腐れ外道)(注:先輩)のせいで、それは引き裂かれた。あいつはいつか燃えるゴミに出すことに決めたわ。


「お姉ちゃんなんだか怖いよ?」


 剣呑な気配を悟って灯が呟いてきたけど、仕方がないわ。あれの事を考えると怒りが抑えきれないのだし。

 と、先導していたフローラがある扉の前で止まった。どうやらここが目的地らしいわね。


「着きました」


 思った通りここにいるみたいね。フローラは簡単に扉を開けて中に入っていった。それに私と灯が続く。中では三人の女性が下着姿で肩を寄せ合っていたわ。一人、私の目から見ても美人だと言える者がいる。なるほど。これは危険だわ。フローラの危惧は正しいわね。

 私が観察していると、その美人が話し掛けてきた。


「貴女達が助け役? 漸くここから出られるのだな。もう少し早くしてもらえると助かったが、ペナルティとしては仕方ないか」


 ……何か勘違いしているわね。

 白けた顔で見ていると、フローラが三人に現状を説明してくれた。それに対して三人の反応は不思議なものだったわ。


「今すぐ解放したら神罰はなしにしてやる。僕たちをすぐに出すんだ」


「この方が勇者と知っての狼藉なの? 悪いことは言わない。今すぐに釈放するのよ」


「…………出しなさい」


 何故こうして上から目線なのかしら? 捕まっている自覚がないんじゃないの?

 首を傾げていると、フローラが言い返した。あ、こめかみがひくついてる。怒りを我慢するなんてしなくてもいいと思うのだけど。


「此度のマイマスターは大神に祝福されていますからその脅しは無効です。それよりも、そこの勇者。名前はなんと言うのですか?」


「……サシャ・クランドール」


 憮然とした顔つきで名乗ったわ! 偽名という感じはしないし、正直に名乗っていそうだわ。この子、案外馬鹿じゃないかしら。


「ではサシャ。マイマスターからの命令を伝えます。ダンジョンで侵入者を撃退しなさい」


「はっ。僕を舐めているのか? 誰がそんな命令を聞くか。そもそもダンジョンマスターなんて屑ばっかじゃ──」


 次の瞬間、サシャが吹き飛んだ。あらあら。そして、飛んでいる途中なのに彼女は首根っこを捕まえられた。そのまま首をガシッと掴んだ人物からドスの効いた声が聞こえてきた。


「お兄ちゃんを侮辱するのは許さないよ。ここで死ぬ? ねぇ死にたいの?」


 首が絞まっているのかしら。顔色が悪いわあの子。まあ、灯の言っていることは間違いないのだから問題ないけれど。洸ちゃんを屑とかどう考えたら言えるのかしらね。

 サシャを助けようと残っていた二人が動こうとしたけれど、先にフローラの魔法が発動して夢の世界に旅立っていった。

 その崩れ落ちた二人を目にしたことでサシャが顔色を変え、必死に手を外そうとしている。けれど、灯はあれで中々に力があるから外れない。そうしている内に段々暴れ方が弱々しくなっている。そろそろ危険かしら。


「灯、それ以上すると本当に死んでしまうわ。そうなると洸ちゃんも困るわよ」


 洸ちゃんの名にピクリと肩が反応する。私もだけど、どうしてこうまで洸ちゃん命になったのかしら。


「ふん、後で調教してやるもん」


 手を離した結果、その場にうずくまってえずいているサシャに灯が言う。サシャのほうはえずきながらも憎しみ100パーセントの視線で灯を見上げていた。


「彼女達に、手を、だしたら殺す」


「そんなこと言える立場じゃないんだけどね~。お姉ちゃんこいつ一度折っちゃっていいかな? お兄ちゃん怒らないかな?」


「んー、大丈夫と思うわ。遠慮なくやっちゃいなさい」


「うん!」


 OKを出すと目を輝かせてサシャに近づいていく灯。この後、とてもお子さまには見せられない拷も、ううん、調きょ、ううん、教育が繰り広げられた。私はフローラと一緒に残り二人を洸ちゃんが作ってくれた部屋へと運んでいたから詳しくは知らないのだけどね。戻ったときに彼女の目から光が消えていたことからその教育の仕方は中々のものね。我が妹ながら恐ろしいわ。うふふ。



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