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京都弁男子に溺愛されています〜憧れの小説作家は気になる彼でした〜  作者: 一ノ瀬灯


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女子会という名の飲み会

 一週間仕事を乗り切って、今日は華の金曜日。岩澤が飲み会しようと言ってくれたので、同僚達と飲みに行くことにした。


「……ということがあったんですよぉ! あいつ最低ですよね!?」


 飲んだくれて管を巻く寧々に苦笑しつつも、飲み会に参加してくれたメンバーは寧々に味方してくれた。


「篠原ちゃんの元彼くん、爽やかでかっこよかったもんねえ。まあ、それが浮気していい理由にはならないけど」


 先輩もそう言ってくれた。確かに拓也はイケメンの部類に入っていたが、先輩の言う通り浮気していい理由にはならない。本当に最低な男だ。

 ようやく吹っ切れたら、今度は拓也に対して嫌悪感が出てきた。彼女より若い女の子と浮気するだけではなく、妊娠させるなんてひどい話である。


「でも、その割にはあんまり落ち込んでないよね。なにかあったの?」


 岩澤の鋭いツッコミに寧々は固まる。

 それを見た岩澤は「やっぱりなにかあったんだ」とにやにやしてきた。


「ちょっとね」

「そのちょっとが聞きたいんだけど?」


 岩澤だけではなく、先輩もじっと見つめてくる。これは、話さなければ今日は解放してくれないだろう。

 寧々は「実は……」と、この一週間の出来事をざっくりと話した。


「ええ! なにそのイケメンはんなり男子! 気になる!」


 岩澤は俄然伊織が気になったらしい。先輩も頷いて岩澤と一緒になって詳しく聞かせてくれとせがんでくる。

 伊織は名前しか教えてくれないのに優しくて、なぜか寧々のことを気に入ってくれているらしいことと、デート一回につき伊織のことを一つ教えるという約束を話した。


「話聞いてたらその人なんだかうさんくさくない? 篠原ちゃん騙されてないよね?」


 先輩は怪しげにそう言った。確かに客観的に見た伊織はそんな風に思われても仕方ない。だって、本当に怪しさしかない男だから。


「騙されてるなら、とっくにホテルに連れて行かれてると思いますよ。でも、篠原ちゃんは違うって言ってるし、なんなら健全な関係だから大丈夫なんじゃないですか?」

「まあ、岩澤ちゃんの言いたいことは分かるけど……」


 伊織のことを信じている寧々を、岩澤は信じてくれるようだ。心強い。

 そんな岩澤を見て、先輩も寧々に「いい関係築けてるならよかったよ」と微笑んでくれたのが嬉しかった。


「そんで? その清水さんとやらといい感じの篠原ちゃんは、実際のところどうなの?」


 相変わらず鋭いツッコミをする岩澤は本当に人をよく見ていると思う。

 しかし、伊織に対して嘘はつきたくなかったので、正直に「気になってる」と小さく呟いた。


「そうだよ、元彼なんて忘れて次の恋しようよ! 今日は私が奢るから、篠原ちゃんもたまには飲もうよ」

「先輩がそう言ってくれるなら、少しだけでも飲ませていただきます」

「篠原ちゃん、飲も飲も!」


 女三人での飲み会は恋バナや愚痴、世間話などで楽しい時間を過ごすことができた。


「来月はあじさいデートだっけ? 風情だねえ」


 岩澤の言葉に寧々は頷いた。


「あじさいを見に行こうって年上の男が言うのはなんかエモいかも」

「そうなんですよね。強引すぎないところがまたイイ男感が出てるというか」


 岩澤の言葉に先輩が返した。

 伊織はぐいぐい来るくせに、最後はこちらに委ねようとするのがまたずるい男だと思うのだ。嫌だと感じさせない絶妙な距離感の取り方がうまい。

 そういえば、一週間前は伊織と出会ってそのまま酒を飲み明かしたことを思い出した。まだ出会ってたった一週間しか経っていないのに、どうしてこんなに彼に会いたいと思うのだろう。


「篠原ちゃん、聞いてる?」

「あ、ごめん! 考え事してた」


 岩澤に名前を呼ばれるまで気づかなかった。飲み会に参加しているのに、ぼーっとして伊織のことを考えていたなんて言いにくい。


「篠原ちゃん、清水さんのこと考えてたんじゃないのー?」


 岩澤の容赦ないツッコミに寧々は白状した。どうせごまかしても、勘のいい岩澤にはバレてしまうのだから。


「……うん、そうです」

「これはもう確実に恋だね」

「うん、恋だよ」


 恋。客観的に見ても、寧々はどうやら伊織に恋をしているようだ。なんだか無性に恥ずかしくて、寧々は俯いてしまう。


「ああ、ごめん! そんなに恥ずかしがることないって! 素敵なことだと思うよ」


 恋をするのは確かに素敵なことだと思う。

 だが、寧々が気にしているのはそこではない。


「……振られたその日に会った別の男の人に惚れるのって、変だと思いませんか?」

「篠原ちゃん……」


 寧々が気にしているのは、身勝手な生き方をしているように見えているのではないかということだった。拓也のことは到底許せないが、だからといって伊織に恋をするのはそれでいいのだろうかと悩んだりする。


 実際のところ拓也とは破局になったのだから気にしなくていいのだが、真面目なところがあるゆえに寧々は考えてしまっていた。


「恋は自由だよ、篠原ちゃん。拓也くんとは残念な結果になったけど、それはそれ。清水さんが魅力的な人だから、篠原ちゃんは次の恋にいけたんだよ」


 岩澤は寧々のよき相談相手なので、こうして悩む寧々の背中を押してくれる貴重な人だ。岩澤の言葉に寧々は自信を持って伊織のことが好きだと言ってもいいのかもしれないと思えるようになってきた。

 寧々は伊織との関係を意味のあるものにしたかった。

 だから、うだうだと考えてしまったのだろう。


「……そうだよね、次にいっても、いいよね」

「そうそう! 女は度胸だよ!」


 岩澤と先輩はにっこりと微笑んで寧々を応援してくれた。

 それならば、前を向いていよう。恥ずかしくない人間であるために。


 飲み会は寧々にとって有意義な時間をもたらしてくれた。少しずつ、伊織にアプローチしていこう。

 だって、寧々は伊織のことが好きなのだから。

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