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ストーカー・オリジン2

 数週間が経ち、肌寒くなってきたある日、俺はホームに響く軽快な音楽と共に、電車を降りた。

 ちょうど他校の下校時間と重なっているという事もあり、駅のホームには人が大いに行きかっていて、俺は彼女を見失わぬよう追いかける。

 エスカレーターを何度か乗り降りして、キオスクが並ぶ一本道に出ると、より一層人口密度が上がった。

 ただ、そんな猛烈な人混みの中でも、宙を舞っているブレザーの右腕の袖は、他の何よりも人々の視線を集めていて、見失いそうになることなど一時も無い。

 外に出ると、迷子になって泣きそうになっている女の子を見つけた彼女は、すぐさま声を掛けて、左手で女の子の頭を撫で、優しく笑いかけた。

 たとえ右腕が無くても、どこまでも優しくて、明るい。彼女はそんな人間なのだ。

 彼女が交番まで少女を送り、警官に事情を話している間、俺は少し離れた場所でスマホの画面を見つめる。

 開いているのは、つい最近ようやく入れてもらえた、クラスのグループメッセージにメンバーとして登録されている、彼女のアカウントページだ。

 蝶野八重――――その文字の下にある、登録のボタン。

 俺はそれを押そうとしたけれど……押せなかった

 スマホの電源を切ると、真っ黒の画面が僅かに俺の顔を反射させる。

 俺の顔は、どこまでも地味で、一片の魅力も無かった。

 自分の容姿に今更落ち込んでいると、蝶野さんが交番から出てきたため、俺は再び彼女の後姿を追う。

 やがて蝶野さんは階段を上り始め、少し遅れて俺もその階段を上った。

 見上げると、普段の角度では決して拝む事の出来ない、蝶野さんのスカートの深いところまで覗き見る事ができた。

 パンツまでは見えなかったけれど、そのスベスベな純白の生脚を拝んだ俺は、心臓を跳ね上がらせた後でニヤニヤと笑う。

 そして、それと同時に、そんなことで喜んでいる自分にため息が出た。

 やがて彼女の家が近くなってきて、今日も今日とていつも通りの一日だったなと思っていると、その時は突然訪れた。

「通り魔だッ」

 遠くの方から、そんな声が聞こえて来て、それと同時に、前方から黒いパーカーでフードをかぶった男がナイフを持って走ってきた。

 幸い、まだ距離はある。今なら、蝶野さんを守ることが出来る。

 俺は蝶野さんと通り魔の間に入るべく、一歩を踏み出そうとした。

 でも――――足は動かなかった。

 全身から力が抜け、絶望感が俺を包む。

 俺のせいで蝶野さんが死ぬ……そんな事実が、俺の頭を駆け巡る。

そんな中、俺の横を一つの人影が通り抜けて行った。

 ……そいつは、とても美しくて爽やかな顔立ちの男だった。

まるでそこに通り魔が来ることが分かっていたかのような、滑らかな動きで蝶野さんと通り魔の間に入り、そいつは通り魔にハイキックを食らわせた。

 すると通り魔は、白目を向いて気絶した。

 見事に、その男は蝶野さんを救って見せたのだ。

「大丈夫かい?」

 透明感のある声で、そいつは蝶野さんにそう尋ねる。

「は、はい――――」

 頬を赤くしながらそう答える蝶野さん。

 やがて周囲にいた人たちが二人を取り囲み、数々の黄色い声をそいつにかけていく。

 みながそいつを、英雄かのように称え、称賛を送って行く。

 そいつの名は清原。俺達と同じ高校で、校内でも特に女子人気の高い、いわゆるイケメンという奴だ。


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