ストーカー・ソウル4
「明日は曇りか――――」
屋上のフェンスに寄りかかりながら、雲一つない空を見て、俺はそうつぶやいた。
「前々から思ってたけど、あんたのその異常なまでに正確な天気予報は、どういう理屈なの」
開きっぱなしになっていた屋上のドアから、駒井がやって来て俺にそう尋ねた。
「さあ。自分でも良く分からないけど、気温とか湿度とかで、何となく分かるんだよ」
もっと詳しく言語化したいところだが、本当に、何となく分かってしまうのだから仕方があるまい。
「空間把握能力が異様に高いって感じ?」
「まあ、そんなところなのかな」
他人に才能があると言われるのは、やはり悪い気はしない。
だが、天気予報のできる才能なんて、あって無いようなものなのだが。
「なんだか、あんたが異様なまでに方向感覚が良いのも納得した」
「そうなのか?」
俺自身、別に方向音痴と言う程では無くても、方向感覚が良いとは思ったことが無いのだが。
「だってあんた、どうせ道に迷った事とか無いでしょ?」
「……そうだな。確かに言われてみれば」
「まったく、才能までストーカー気質な方向へ偏ってるのね」
「うっせ」
俺がそう言うと、駒井は珍しく、俺の前で少しだけ笑った。
「ごめんゴメン。実際に、私はアンタの方向感覚が良かったおかげで助けられたこともある訳だし、少し酷い言い方だったかも」
「助けられた? そんなことあったっけか?」
「覚えてないの? 小学校の修学旅行の時の事」
「…………ああ、そんなこともあったな」
俺達が小学校の修学旅行で鎌倉に行った際、駒井は路地裏に入り迷い込んでしまった。
そんな駒井を、同じ班だったという事もあって俺が捜索し、無事皆の下へ連れ戻したのだった。
「まあ、アンタに見つけられて路地裏で二人っきりになった時は、私の純潔もここまでかと覚悟したけど」
「お前、謝ってんのか貶してんのかどっちなんだよ……」
「さあ」
俺は駒井の面倒くさい問いを無視しつつ、本題へ移るよう一度咳を挟んだ。
もしかしたらこいつは、俺の面倒くさい命令を回避するために、どうにか抗っているのかもしれない。
「俺の目標は蝶野さんと清原の関係を引き裂く事だ。そのために、今日も協力しろ」
ただ、駒井がどれだけ面倒くさがろうと、俺の知った事ではない。
俺は容赦なく、そう命令をした。
「一応言っとく、イヤ」
「お前な……」
分かり切っていることだろと呆れつつ、俺はいつも通り、制服をめくって傷跡を見せようとする。
しかし今日は、それより先に駒井が言葉を発した。
「私だって、色々と忙しんだよ」
「部活も入ってない、たいして勉強もしない、そんなお前が、どうして忙しいんだよ」
「本を読んだりがあるの」
「漫画を読むのは、俺の命令を終えた後にしろ。じゃないと、分かってるだろ――?」
「はいハイ。分かってるよ」
口を尖らせながらも、ようやく駒井は抵抗をやめる気になったようだ。
その後、俺達は屋上で二人きり、綿密に計画を話し合いながら、一日を終えて行った。
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