第091話 良いなー
休憩を終え、夕方になったので、俺とヘイゼルはフィリアに言われた卵を買って帰った。
フィリアに卵を渡すと、フィリアが晩御飯の準備を始める。
そして、俺が料理本の通訳をしながらフィリアがオムライスを手際よく作っていく。
ヘイゼルちゃんはそれを見ていた。
「お前、上手だなー」
「ホント、ホント」
俺とヘイゼルはフィリアを称賛する。
「まあ、道具は違うけど、家でも作るからねー」
「美味しそうだなー」
「ホントよねー」
「もうできるから座って待っててよー」
見てると邪魔かもしれん。
もう料理本はいらないだろうし、座るか。
俺とヘイゼルはせめて、スプーンやコップぐらいは用意しようと思い、テーブルに並べていく。
そして、ちょっとすると、フィリアが3人分のオムライスを作って持ってきたので食べ始める。
「うん、美味いなー」
「ねー。フィリアは上手だわ」
「ありがとー」
俺達はもぐもぐと食べ続ける。
「ねえ、明日はどうするの?」
オムライスを食べながらフィリアが聞いてくる。
「明日もこっちにいようかなーと思ってる。2、3日休んでから向こうに帰ろうかなーと」
「私もそれでいいわ。でも、あんたのご両親はどうすんの? 帰ってくるのを待たないの?」
ヘイゼルが口元にケチャップを付けながら聞いてきた。
「いつ帰ってくるかわかんないからな。どんなに早くても1週間はかかるだろうし、待つよりかは普通に過ごしてる方がいいかな。そのうち会えるだろ」
3日後に大当たりって言ってたけど、その日で終わるとは思えない。
どうせ、遊ぶのだろう。
「帰ったら冒険者の仕事?」
「だな。氷を持って帰って肉屋に売るのはすぐだし、それが終わったら冒険者の仕事かな?」
「私もついていっていい?」
「いいよ。前に言ってたもんな」
フィリアは砂糖を売るのに集中してもらっていたから冒険者の仕事を最近していないし、勘が鈍るのが嫌だって話をしていた。
「フィリアも来るの? やった! 疲労とはおさらば」
俺もヘイゼルも体力ないもんなー。
「よろしくねー。でも、何の仕事をするの? 採取? 調査?」
「あー……どうしよ? 師匠、どう思う?」
魔法の師匠であり、先輩冒険者であるヘイゼルに聞く。
「そうねー。まあ、がらわ……ギルマスに仕事を聞いて、いいのがなかったら採取でいいんじゃない?」
「そんなもんかねー」
「フィリアが入ってくれるのは嬉しいけど、貧弱2人パーティーが貧弱3人パーティーになっただけだし、討伐は無理よ」
まあ、そうだな。
フィリアは俺よりも弱いって言ってたし。
「バランス悪いな」
「そういうパーティーもいるよ」
「そうね。どんな仕事をするかだもん。斥候しかいないパーティーとかもあるわよ」
「そうなん?」
大丈夫か、それ?
「そういうパーティーは調査しかしない。専門職ってやつよ。冒険者って要は何でも屋だからね。ケイン達みたいなモンスターや野盗狩りをメインにするパーティーもいるし、私達は採取やこの前の調査みたいなのを中心にすればいいじゃん」
冒険者っていうから剣を持って戦うイメージが強かったが、別にいいのか。
「じゃあ、そうするか。明日、明後日はこっちでゆっくりして、明々後日の朝に向こうに転移して、ガラ悪マッチョに仕事を聞きにいこう」
「そうしましょう」
「さんせー」
俺達は今後の予定を決めると、ゆっくりと過ごした。
何気に俺が向こうの世界に転移をし始めて、初めて1日以上、こっちにいることになる。
心と体を休めよう。
しかし、寝る場所をどうするかね?
あいつら、絶対に両親の寝室には来ないだろうなー……
俺も嫌だけど。
日本の我が家に帰って2日目は3人で買い物に行った。
食料品やヘイゼルの家に持ち込めそうなそうなものを探したり、今後、こっちの家で3人一緒に住む時を考え、家具や家電なんかを見ていった。
今後の生活を考え、品物を見るのはめっちゃ楽しかったが、散財のヘイゼルと守銭奴のフィリアがたまーにぶつかりそうになるのを阻止するのが大変だった。
「どっちがいいかなー?」
「迷ったら高い方でしょ」
「は?」
「こ、こっちの方が性能的に良いんじゃないかなー? 3人だし!」
どれが誰のセリフかは一目瞭然だ。
もうね……
大変。
3日目は家でゆっくりした。
フィリアのために料理本を翻訳したり、弱いくせにやたらトランプをしたがるヘイゼルを相手にしたりして、まったりと過ごした。
なお、この3日間、俺は一人で寝た。
まあ、しゃーない。
俺のベッドは3人で寝られるほど大きくはないし、両親のベッドは俺も同意見だが、2人が拒否したのだ。
俺達は休息し、心と体を休め、4日目の朝となった。
「しかし、私らがあっちに行っている時にお義父さまやお義母さまが帰ってきたらどうするの?」
フィリアがバナナが1本入ったケーキを食べながら聞いてくる。
「書き置きを残しておくわ。さすがにそれを見て、海外に遊びには行かんだろ」
「そういえばさ、そのスマホって、向こうでは使えないの? 電話できるんでしょ?」
「圏外だから無理だな。詳しくは聞くな。俺も知らん。実を言うと、俺はかなり常識がない」
機械は苦手だし、怪しい商売ばっかしてたもん。
税金?
何それ?
「まあ、異世界だし、無理なんじゃない? 水見式って通信魔法があるけど、あれも距離が遠くなると精度が落ちるし」
さすがはヘイゼル師匠。
魔法は詳しい。
「そんなんあるん?」
「難しいけどね。私は無理」
「じゃあ、俺も無理だわ」
「いや、あんたはできると思う。ソフィア様は水の巫女だし」
そうなんかな?
関係あるか?
「どっちみち、お前が教えられないんじゃ無理だ」
というか、そんなに必要とは思えん能力だ。
「魔法ってすごいねー」
フィリアが感心したように言うが、回復魔法も大概ヤバいよ。
「フィリアって、回復魔法しか使えないの? 攻撃魔法は?」
「攻撃魔法はないね。覚えても仕方がないし」
「いや、護身用としているだろ」
魔法使いは杖と口を塞がれたら終わりらしいけど、ヒーラーなんか最初から終わりじゃん。
「基本的に一人で外に出ないからね。町の中では修道女は滅多に襲われないし」
「そうなの?」
「騎士団が怖いからねー」
あ、報復か。
あのじいさんの若いバージョンがぞろぞろとやってくるんだ。
「なるほどねー」
「まあ、リヒトさんにスタンガンをもらったから大丈夫だよ」
2つあったスタンガンのうち、1つはヘイゼルにあげたが、もう1つはフィリアにあげた。
まあ、護身用だ。
俺が持っててもあんま意味ないしね。
だって、フィリアやヘイゼルは拘束される可能性が高いけど、俺は多分、剣でグサーだもん。
「使い方は大丈夫か?」
「大丈夫。そんな難しいもんじゃないしね。試すわけにはいかないから使ってはないけど」
試す場合の相手は俺か?
嫌だわ。
色んな意味でショックだわ。
「じゃあ、そろそろ帰るか」
やきそばパンを食べ終えたので立ち上がる。
「そうね」
バナナケーキを食べ終えたフィリアも立ち上がり、俺の横にやって来た。
「そうしましょう……よいしょっと」
カレーパンを食べ終えたヘイゼルが横に置いてあったマットレスを引きずって、こっちに来る。
「お前、一人だけ、それを持っていくんだな」
「ずるい……」
俺は宿だし、フィリアは教会の宿舎だからまだ、マットレスを持ち込むことはできない。
だが、ヘイゼルは普通に家だから持ち込むつもりなのだ。
「さっさとウチに越してくればいいじゃない」
「まだお前の家の整理も終えてないだろ」
「まあ、床に敷くって方法もあるけど……さすがに」
何か嫌だわ。
あっちの世界の家って土足なんだもん。
よーし! 今日の夜はヘイゼルの家に行って、泊ーまろっと。
「なるべく早く片付けるわよ。さあ、行きましょう。このマットレス、重いのよ」
「はいはい」
「氷も売らないとだしねー」
ヘイゼルが持つマットレスを半分持ってやりながらアプリを起動した。
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