第087話 誰だって嫌
ちょっとすると、フィリアが風呂から上がったのでヘイゼルが風呂に向かった。
もちろん、ヘイゼルが風呂に入っている最中、フィリアに愛を囁き、イチャイチャしてた。
なお、当然、罪悪感はやばかった。
しばらくすると、ヘイゼルも風呂か上がってきたので最後に俺が入ったのだが、あまり待たせてはいけないと思い、早めに風呂から上がった。
風呂から上がると、2人が待っているソファーに座る。
左にヘイゼル、右にフィリアというお決まりの配置だ。
2人はこっちの服に着替えており、ちょっと新鮮で嬉しい。
だって、こいつら、あっちでは黒ローブと修道服しか見たことがないんだもん。
もちろん、首にはそれぞれ、俺が贈った金と銀のネックレスを着けている。
俺達は酎ハイが入ったコップを持ち、乾杯した。
すごいのは2人共、距離が近いことだ。
マジでこの店は優良店だわー。
「それで? 私に話って?」
ヘイゼルがここに転移する前の話を聞いてくる。
「それな。ヘイゼルちゃん、泣くんじゃないぞ?」
「いや、泣かないわよ」
「お前、アルトの町にいることが実家にバレてたぞ」
「へ!? あはは、そんなバカなー」
棒読みだし……
可哀想な子……
「フィリアのじいちゃんに言われた。バーナードの当主に気にかけてほしいって頼まれたんだとよ」
「そそ、そんななな、ばば、ばかなな……」
ヘイゼルちゃん……
「あのな、貴族はそういう情報をちゃんと把握してるんだってさ。だからお前の親はお前がこの町にいることも知っている。というか、町の人間の大半はお前が貴族なことを知っている」
そう言うと、ヘイゼルはフィリアを見る。
「知ってるよ。だって、ヘイゼルさんって、言動が貴族のそれだもん……」
「ガーン!」
ガーンだね……
「そういうわけで、皆、知ってる。親もお前の居場所を知ってる」
「でも、誰も言ってこなかった……言ってきたのはリヒトだけ……あ、詐欺師だ」
コラ!
俺が悪いみたいに言うなや!
「だって、言えないよ……貴族なら貴族って名乗るし、名乗らないなら事情があるからだもん。冒険者は人の事情に首を突っ込まない。突っ込んでくるのは騙して、利用しようとする人だけ」
ねえねえ、どっちでもいいんだけど、場所を交代しない?
2人で話してよ。
挟んで交互に責めてこないで。
あ、ガラ悪マッチョが言ってた意味がわかった!
「そっかー……知ってたのかー。フィリア、私は実はロストの貴族なの」
「いや、私は知ってるから。リヒトさんに聞いたし、ソフィア様の件でこの前、そこで跪いてたじゃん」
フィリアがこの前、ヘイゼルがカエルになっていたフローリングを指差す。
「そういえば、そうね。しかし、お父様もお母様も知ってたのか……これは早めに手紙を送ろうかな……」
「フィリアのじいさんが事情説明も兼ねて手紙を送っておくってさ」
「あら、あの怖い人も中々、良い人ね」
ホント、ホント。
「ねえねえ、おじいちゃんって、ヘイゼルさんのバーナード家と繋がりがあるの?」
俺とヘイゼルがうんうんと頷いていると、フィリアが聞いてくる。
「あ、それそれ……身内の恥をさらすんだけどさ…………」
今度はフィリアのじいさんの過去も説明した。
「そうだったんだ……おじいちゃんって、元はロストの人間だったのか」
フィリアはちょっと驚いている様子だ。
「どこの家かしら? 王女である巫女様の護衛に選ばれるって相当な家柄よ?」
「そこまでは聞いてないな。あんま、母親のことを聞きたくないんだ」
「そうなの?」
「まだ名誉なら良かったんだがなー……」
3日で逃げたクズだもん。
「あー……」
「私はノーコメント」
フィリアとヘイゼルはそっぽを向いた。
「まあ、俺の母親のことは置いておいて、フィリアのじいちゃんと話したのはそんなところかな」
「とりあえず、わかった」
「私はちょっとショックだけどね……」
ちょっとだけらしい。
ヘイゼルちゃんの傷は思ったより浅いようだ。
「それとさー、今後のことなんだけど……」
「いつ結婚する?」
「いつでもいいわよ」
多分、早くしたいんだろうなー……
こいつら、適齢期っぽいし。
こっちではJDのくせに……
「それね。まずは俺の親に報告する。まあ、これは俺の役目だな」
「お願いね」
「挨拶とかは? ソフィア様はもちろんだけど、お義父様にも挨拶するべきだと思うんだけど……」
まあ、そうだろうね。
「その辺も含めて聞いてみる。前にも言ったが、ウチの国というか、この世界の大半は重婚がダメなんだよね……」
「反対される可能性があるってこと?」
「へ? 今さら? 私、かなり引き下がれないとこまで来てんだけど?」
フィリアもヘイゼルもどっちもそこまで来てるよ……
「多分、反対はしないと思うし、反対されても無視するけど、まあ、話してみる。というか、母親は知ってそう……」
あの人も未来視を持ってるし……
「あー……ソフィア様だもんねー」
「巫女様の中でも特に優秀な方だったらしいしね」
3日で逃げたけどね。
「まあ、そこは俺がやる。あとさ、住む場所ってどうする?」
「……え?」
「……ここ?」
「いや、ここ俺の家だけど、実家だぜ? 今はいないけど、普通に親が住んでる。お前ら、ソフィア様とかと一緒に住みたいか?」
というか、部屋が足りねーわ。
「あー……まあ、嫁ぎ先がそういうケースもあるけどねー。できたら避けたい」
「そうそう。貴族は100パーセントそうなるけど、私も避けたい」
誰だって嫌だわ。
俺だって嫌だもん。
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