第082話 依頼完了
ギルドに着くと、受付にいるガラ悪マッチョのところに行く。
「よう! もう疲れは取れたか?」
ガラ悪マッチョがいつもの感じで軽く声をかけてきた。
「まあなー」
「私は筋肉痛よ」
実は俺もだったりする。
見栄ですわ。
「……まあいいや。ちょっといいか。奥で話がある」
ガラ悪マッチョは俺の足をじーっと見たあと、奥の部屋に誘ってくる。
もちろん、お尻狙いではなく、昨日の話だろう。
俺とヘイゼルはガラ悪マッチョのあとに続き、奥の部屋に入る。
奥の部屋は応接室かなんかだと思っていたが、書庫だった。
「こんなところで話すのか?」
さすがに座らせろよと思った。
足が痛いんだぞ。
「あんま人に話せる内容じゃないんだ。悪いが、足は我慢してくれ」
バレとるし……
お前、ヘイゼルの前で言うなよ。
かっこつけてたのに……
「依頼の件よね?」
ヘイゼルが用件を確認する。
「そうだ。詳しく聞かせてくれ」
「わかった。まずは俺の占いで馬車を捜索し始めたんだが……」
俺とヘイゼルは依頼を受けた日から昨日までのことを説明し始める。
もちろん、家に帰ってましたは言えないので森の中に潜伏してたことにする。
それで夜が明ける前に逃げようとし、ああなったことにした。
「うーむ……なるほどなー」
俺達から話を聞いたガラ悪マッチョが悩み始める。
「そっちは? 聞かない方がいいなら聞かないけど……」
極秘事項かもしれないし、冒険者には話さないだろうなー。
「いや、ちょっとお前らの見解を聞きたい。わかってると思うけど、誰にも言うなよ」
誰にも言うなよだって。
意味のない言葉だ。
「うん、フィリアにしか言わない」
「そうね」
ヘイゼルもうんうんと頷く。
「……めんどくせーなー。言うなっての」
「お前のところで当てはめてみろ。俺がお前でヘイゼルが嫁さんAな、
フィリア枠の嫁さんBがどう思う?」
「……こっちは悪くないのにすごい罪悪感があるな」
「だろー?」
「まあ、フィリアは修道女だし、大丈夫じゃない? 少なくとも、私達よりは信用があるでしょ」
「まあなー……というか、お前らって、マジでそうなのか」
何がそうなのかな?
言わなくてもわかるから聞かないけど。
「で? 依頼主が商人の部下っていうのは聞いたけど」
「私の予想では密輸ね。きっと非合法なものを売ってたのよ!」
おー!
ウチのヘイゼルちゃんが賢い!
「いや、行方不明の商人が他国のスパイだったわ」
ヘイゼルちゃん、落ち込まないで!
笑いそうになるから。
「スパイ? それで兵士か?」
「そうそう。商人はこの町を中心にこの辺一帯を調べてた。奴の商会を調査したら証拠がびっしりだ」
「行方をくらました原因は? 逃げた?」
「っぽいな。どうも、奥さんにバレそうになったらしい」
それで仲もあまり良くない奥さんを捨てて逃げたのか……
「奥さんは?」
「奥さんはシロだ。というか、奥さんはこの町の出身でな……なーんも知らなかったっぽい」
それは……なんか悲しいな。
「何と言ったらいいか……」
「ちょっと気の毒ね……」
奥さん、騙されたのかな……
「まあ、その辺はしゃーない。男女のことだし、なんで結婚したかもわからん」
あまり深くは聞かないでおこう。
「調査の依頼を出した部下は?」
「それは調査中だが、多分、そいつはクロだ。しかし、もうわからん。実は川で死体で見つかった。争った形跡もないし、自殺かな」
商人が逃げることで仲違いしたっぽいな……
それで調査依頼を出したか……
こうなってしまっては真実はもう闇の中かな。
あとは領主様の調査次第だろう。
「他国のスパイってどこよ? この辺ってことは北のエスタか西のロスト?」
「その辺は調査中だ。見つかるかな……」
スパイもそういう証拠は残さんだろうな。
まあ、別の証拠は残してたみたいだけど。
「この町、危ない?」
ヘイゼルが心配そうにガラ悪マッチョに聞く。
「わからん。すぐに戦争ってことはないだろうが……」
このガラ悪、人の話を聞いてた?
「前にこの町では当分、戦争は起きないって言っただろうが」
もう忘れたか、俺の言うことを信じてないかだな。
「え? そうなの?」
「そういえば……」
「戦争や災害みたいな人が多く死ぬ前っていうのは暗雲が立ち込めるんだ。それがないから大丈夫だって」
そもそも、そんなのが見えたら逃げるわ。
「なるほど……お前、あの兵士がどこの所属かわかるか?」
わかるよー。
「わからん。そこまでは見えん」
政治に巻き込まれてはいけない。
所詮、俺は占い師なのだから。
「そうか……まあ、仕方がない。とりあえずの情報と説明に感謝する。俺はこれから領主様に報告するが、なるべく褒賞を上げてもらえるように言ってやる」
「さすがはギルマス!」
「頼りになるわ!」
俺とヘイゼルは素直にギルマスのルーク様を称賛する。
「もしかしたら領主様に説明を求められるかもしれんからそのつもりでな」
「領主様ねー……ヘイゼルは会ったことあるんだったよな?」
前にそう聞いた気がする。
「そうね。女性の貴族だと女性の魔法使いを頼ることが多いから依頼で何回かあるわ」
ならば、ヘイゼルを前面に出せばいいな。
「領主様の件は了承した。久しぶりにあの美人を見るかねー」
「やっぱり気付いてたか……」
そりゃそうだろ。
あんな美人が庶民にいるかっての……
あ、ちょー可愛いウチのフィリアさんがいましたね。
「まあなー。じゃあ、俺らは帰るわ。また仕事はするけど、ちょっと考える」
「あんなことがあったしな。休むのも重要だ。今日は感謝する」
「いえいえ」
「これも依頼のうちよ」
俺とヘイゼルはガラ悪マッチョに挨拶をし、ギルドを出た。
「思ったより、すんなり終わったわね。今日はどうする?」
ギルドを出ると、ヘイゼルが聞いてくる。
「俺は教会に行くけど、お前はどうする?」
「フィリア?」
「そのじいさん」
「行かない」
でしょうね。
「話が終わったらフィリアを誘って帰るか……」
ギルマスへの説明も思ったよりすんなり終わったし、帰ってもいいだろ。
「いいわね。ちょっとゆっくりしましょうよ」
それもいいな……
また、両手に華状態でゆっくり飲みたいわ。
「じゃあ、家で待ってろ。話が終わったらフィリアを連れていくわ」
「了解! じゃあ、頑張ってね!」
ヘイゼルはそう言って、北区にある自宅に帰っていったので重い足取りで教会に向かう。
さて、あのじいさんにどこまで説明するかねー?
お読み頂き、ありがとうございます。
この作品を『おもしろかった!』、『続きが気になる!』と思ってくださった方はブックマーク登録や↓の『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』に評価して下さると執筆の励みになります。
よろしくお願いします!




