第081話 鉄アレイでも買おうかな?
大変だった依頼を終え、夜にヘイゼルの家で飲んでいたのだが、フィリアは日をまたぐ前に寝てしまった。
フィリアは元々、ヘイゼルの家に泊まる予定だったらしく、ヘイゼルのベッドですやすやと寝ている。
「お前はどこで寝るん?」
ヘイゼルの寝室でフィリアの寝顔を見ながらヘイゼルに聞く。
「フィリアと同じベッド。狭いけど仕方がないわ。まあ、寝るかはわかんないけどね。全然、眠くないし」
フィリアが寝ているベッドはシングルタイプだろう。
いくら女2人とはいえ、狭い。
「ベッドをあっちで買えば?」
「検討中。持ち込むにしてもサイズがねー。マットレスだけ買おうかなって思ってる」
それはいい考えだ。
土台をこっちのベッドにし、マットレスを向こうの世界のものにすれば、もうほとんど向こうのベッドと変わらない。
「なるほどね。しかし、このベッドでは俺は寝られんな」
「あんたは帰りなさい。絶対に3人じゃ無理よ。両端の私とフィリアが落ちる」
だよねー。
「まあ、どうせ寝られんし、朝まで飲むかな……」
「そうしましょう」
俺とヘイゼルは寝室を出ると、リビングに戻り、再び、酒を飲み始めた。
「明日、帰る?」
ヘイゼルが日本に帰るか聞いてくる。
明日というか、4時間後には24時間の充電期間を終えるため、日本に戻ることができるのだ。
「やめといた方が良いな。少なくとも、ギルマスに今回の報告をしてからが良い。今、姿をくらますとマズいだろ」
どっかの兵士を巻き込んだ事件があった次の日にそれを発見した冒険者がいなくなる。
消されたと思われるのはまだいいが、最悪は関係者と思われることだ。
「それもそうねー。ギルマスは信じてくれるでしょうけど、不要な疑いは避けた方が良いわ」
「まあ、明日、説明に行けばいいだろ。それが終わって帰れそうなら帰ろう」
「そうしましょうか……あんたは神父様に会わないといけないし」
多分、祝福してくれるだろ。
多分ね……
「ヘイゼル、こっちに来なさい」
さっきまでフィリアが座っていた隣の椅子を引き、対面に座っているヘイゼルに横に座るように促す。
「だめー。あんたの考えが透けて見えるわ」
ダメらしい……
まあ、隣でフィリアが寝てるしなー。
「隣に座ると良いことがあるって出たんだがなー」
「良いことが起きるのは私じゃなくて、あんたでしょ。主語を言わない辺りでわかるわ」
そろそろ、俺の騙しへの耐性がついてきてやがる……
もう純粋だったヘイゼルちゃんはいなくなったのかなー?
今後は手口を変える必要があるな。
「しかし、マジでやることねーな。ゲームでも持ってくりゃ良かったかね?」
と言っても、こいつらは言葉がわからんからなー。
「あ、私、トランプを持ってる。買ったもん」
こいつ、めっちゃ色んなもんを買ってるな……
しかし、これはナイスだ。
まーた、カモがネギと出汁と卵と白飯を持って、ノコノコやってきたぞ。
「しめしめ……じゃない、よしよし! じゃあ、それで遊ぼうか」
「占うのは禁止ね。あと賭けもしない」
ヘイゼルちゃんは特にツッコミもなく、真顔で箱からトランプを出す。
「占わないから賭けようよー。1時間でお前の全財産を巻き上げてやるからさー」
「絶対にしない。ってか、めっちゃ舐められてるし……あんた、絶対に私をバカにしてるでしょ」
バカとは思ってない。
純粋とは思ってる。
実際、頭は良い子だしね。
「詐欺らないからさー。イカサマもしないし、真面目にやるから」
「えっちなのが禁止ならいいわ」
「じゃあ、いいや」
「こいつは……隣の部屋にフィリアがいるから行ってきなさい」
先に神父様に話を通さないとマズいんだよ……
その後、俺達は普通にトランプを楽しんだ。
なお、ヘイゼルはやっぱり弱かった。
顔に出すぎだね。
夜遅くになるまでトランプで遊んでいた俺とヘイゼルはさすがに4時くらいになると、寝ることにした。
俺は寝る場所がないので、ヘイゼルの家に泊まるのはやめ、宿屋に帰る。
宿屋に戻る途中でこの時間に開いてるのかなと不安になったが、宿屋はちゃんと開いており、受付にはリリーの旦那のマッチョが座っていたので挨拶をし、そのまま部屋で休んだ。
翌朝、目が覚めると、朝食を食べる。
そして、準備をし、1階の受付でリリーと世間話しながら時間を潰しているとヘイゼルがやってきた。
今日、ガラ悪マッチョに事件の詳細を伝えるためにヘイゼルとここで待ち合わせをしていたのだ。
「よう、ヘイゼル」
「おはよー」
笑顔で挨拶をし合う。
なお、時刻は12時前だ。
「女と待ち合わせとか言ってたからフィリアちゃんかと思ってたけど、違う女だし」
ヘイゼルを見たリリーが呆れたように俺を見た。
「3人なら幸せも3倍だよ」
「マジでなのか……」
こりゃ噂が流れてるな……
「マジ、マジ。ホントはリリーももらおうかと思ってたけど、フィリアに2人までって言われちゃったわー。残念」
「金貨1万枚もらってもお断りだよ。私には旦那がいる」
1億円でも無理らしい。
「ひゅー! リリー、かっこいい!」
「あと、あんたは好みじゃない」
ひっで。
「どんなんが良いん?」
「旦那を見ればわかるだろ」
マッチョか……
「この世界の男はマッチョばっかりだよ……」
そりゃ俺が貧弱って言われるわ……
「鍛えな」
同じことを猫ちゃんにも言われたなー。
「鍛えようかな……」
俺もマッチョを目指すべきかもしれん。
「やめなって。あんたが他の冒険者みたいにでかくなったら嫌よ」
ヘイゼルが止めてきた。
やはり時代は細マッチョのようだ。
「リリー、俺は鍛えない」
「惚気も冗談もいいから早く仕事に行きな。掃除の邪魔だよ」
俺とヘイゼルは宿屋を追い出されたため、ギルドに向かった。
お読み頂き、ありがとうございます。
この作品を『おもしろかった!』、『続きが気になる!』と思ってくださった方はブックマーク登録や↓の『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』に評価して下さると執筆の励みになります。
よろしくお願いします!




