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スマホ転移で始める異世界ゆるゆる生活 ~日本の商品が高値で売れたのでスローライフを目指すことにしました~  作者: 出雲大吉
第2章

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第078話 逃走と死闘


 くそっ!

 あの炎を食らって即死しなかったことも驚いたが、それ以上にあの状況で笛を吹けるのは相当の練度だ。

 絶対に盗賊ではない。


 たまに木の枝に引っかかり、服が破れたり、腕や足に傷が付くことがあったが、痛がってもいられない。

 ヘイゼルも同じだろうが、まったく気にせずに走っている。

 いや、あいつの服は特別製だったか……


 時折り、後ろを確認するが、人が来ている様子はない。


 気付かなかったか?

 いや、それはない。

 おそらく、馬車があったところまで来るのに時間がかかるのと、暗闇で追うのかを悩んでいるのだろう。


「ヘイゼル、全力で走るな! 少しペースを落とせ!」

「なんで!?」

「まだ敵は俺らを追えていない。短距離より長距離を走るつもりで行け!」


 足の速さは向こうが上の可能性が高いし、街道、そして、町までは距離がある。

 疲れて、潰れてしまえば、それで終わる。


 ヘイゼルは俺の言うことを理解したのか、スピードを少し緩めた。

 そのまま走っていくが、次第に日が昇っていくのがわかる。

 まだ森の中は十分に暗いが、上を見ると、薄暗い空が見え始めているのだ。


 マズいな……

 これは平原か街道で追いつかれて戦闘になるかもしれん。

 数は減らしたし、森の中よりはマシだろうが、相手は正規兵だ。

 きついかも……


 さっき小屋で見た男の数は5人。

 いや、最低でも5人と考えるべきだ。

 ヘイゼルの魔法と俺の銃で勝負するしかない。


 俺達はその後も走り続けると、先に薄い光が見えてくる。

 そして、出口も近づき、あと少しで森を出れるというところまで来た。

 

「出口よ!」


 ヘイゼルがそう言った瞬間、脳裏に危険信号が走った。


「ヘイゼル、止まれ!!」


 止まるように指示したが、走っているヘイゼルは止まることができずに森を出た。


「――キャッ!!」


 ヘイゼルがこちらを振り向いた瞬間、道の横から影が出てきて、ヘイゼルを襲う。


 チッ! ここにも見張りを立ててやがった!


 すぐに銃を取り出し、ヘイゼルに覆いかぶさる男に銃を向けるが、男はピクリともしなかった。


「ん?」


 男の下からヘイゼルがごそごそしながら出てきた。


「ハァハァ……痛ったー……肩を打った」


 ヘイゼルの手にはスタンガンが握られており、どうやら男はスタンガンを食らって気絶しているようだ。


「ケガは!? 走れるか!?」

「大丈夫よ。行きましょう!」


 ヘイゼルはすぐ立ち上がると、そのまま走っていく。

 俺もその後ろを走るが、まだ、追っ手はいなかった。


 このまま逃げ切れるかなーっと思って、後ろをチラッと見ると、街道まであと半分くらいの距離で後方の森から5人の男が出てきた。


「チッ! ヘイゼル、街道まで走れ! そこでやる!」

「クッ! わかったわ!」


 こうなったら仕方がない。

 町までは逃げ切れないだろう。

 街道で戦闘するしかない。


 一応、戦いが起きた場合のシミュレーションもしてある。

 あとはそれが上手くいくかだ。


 俺達は体力的にかなり厳しかったが、なんとか街道まで着くと、振り向いた。

 そして、敵が到着するまでに息を整える。

 すでに朝日は上がっており、まだちょっと暗いものの、十分に明るかった。


 俺とヘイゼルは暗視ゴーグルを取り、それそれの武器を構える。

 俺が銃でヘイゼルは杖だ。


 男達は追うために走っていたが、俺達と男達との距離が50メートル程度になった時に立ち止まった。


「何かしら?」

「魔法の警戒と息を整えている。あいつらは全身鎧だから疲労もあるんだろう」


 男達は5人共、お揃いの鉄っぽい全身鎧を着ている。

 だが、兜はしておらず、狙い目はそこだろう。


「ヘイゼル、あいつらはお前の魔法を警戒して、散開してくるだろう。囲まれたら終わるからサイドの敵を叩く」

「中央は?」

「無視しろ。もし来たら俺の言霊で止める」

「わかった」


 言霊の弱点はヘイゼルの動きまで止まることだ。

 だが、ヘイゼルは言霊を知っている。

 数秒後、言霊が切れた時に真っ先に動けるのは敵ではなく、ヘイゼルだ。


 俺達が作戦を決めると、止まっていた5人の真ん中にいる男が手を挙げた。


 あいつがリーダーだな……


 俺が確実に殺すべき相手を決めると、そのリーダーらしき男が手を下ろした。

 すると、他の4人がサイドに散らばって、距離を詰めてくる。


「いけ」


 指示を出すと、ヘイゼルが右の男に魔法を放つ。

 それを見て、俺も杖を出すと、左の方に魔法を放った。


 ヘイゼルが放った火魔法はあっという間に一番右にいた男を焼き尽くす。

 だが、俺が放った火魔法は外れてしまった。


 右にいるもう一人の男はヘイゼルの魔法を見て、尻込んだが、俺の方の2人は俺の魔法の威力と練度を見て、嬉しそうに走ってくる。


 そんな男2人のうち、先に俺に到達しそうな男に向けて、銃を構える。

 そして、俺と男の距離が5メートル程度になったところで男の顔に向けて引き金を引いた。


 放った弾丸は男の顔面に直撃すると、男は後ろに倒れ、動かなくなる。

 それを見たもう一人の男の動きが止まった。

 これで奥にいるリーダー、ヘイゼルと俺から15メートル程度離れている男2人はその場で足を止めたことになる。


「まだやるか!?」


 奥にいるリーダーらしき男に銃を構え、叫ぶ。

 リーダーらしき男はその場から動いていないため、50メートルは離れており、絶対に銃が当たらない距離ではあるが、ハッタリだ。


 サイドにいる男2人は1、2歩後ろに下がったが、奥にいるリーダーはむしろ前に進んできた。


「やる気かしら?」

「交渉する雰囲気には見えんな」


 たとえ、そうだとしても信用なんかしない。

 もはや話し合いをする段階ではないのだ。


 男はそのまま近づいてくると、20メートル程度の距離で両サイドにいた男2人と合流した。

 そして、その場に立ち止まると、背中から小さな杖を取り出す。


「魔法使いか!?」

「いや……あれは!? そんな……」


 ヘイゼルが青ざめて絶句する。


 男が杖を掲げると、杖の先が光りだし、何かよくわからないものが俺達を含んだ周囲を包み込んだ気がした。


「何だ?」

「あ……あれは魔法を封じる杖……なんでそんなものを持ってるのよ……」


 魔法を封じる……

 そんなのがあるのかよ!


「ヘイゼル、下がれ!」


 完全に無力となったヘイゼルの前に立ち、銃を構えた。


 リーダーらしき男はその場に残ったままだが、男2人がゆっくりと俺達に近づいてくる。


 チッ!

 魔法を封じて、余裕が出てきたか。

 だが、こいつは魔法でも魔道具でもない。

 確実に仕留める!


 銃を構え続けていたが、男2人は両サイドに広がっていく。


 クソッ! 広がんなや!


 これでやれるのは1人。

 俺がどっちかを殺しても、どっちかが俺を殺す。

 そうなったら残っているのは男2人と無力になっているヘイゼルだけだ。


「ヘイゼル、逃げな」

「やだ。あんたが死ぬなら自害する……」


 ヘイゼルはそう言って、俺の服を掴んでくる。


「魔法を使えんだろ」

「あ……」


 こんな時にまでドジをかますなよな……


 少し笑い、腰の剣を抜いた。


「2人は確実に殺す。多分、言霊も封じられたっぽいけど、相打ちになっても殺す。そうなったらお前は奥にいる男に色目を使ってでも命乞いをしろ。そして、近づいてきたらスタンガンでやれ」


 そう言い残し、前に出た。

 左手に持つ銃を左の男に構え、右手に持つ剣で右にいる男をけん制する。

 両手でもロクに使えない銃と剣を片手で使えるとは思えないが、仕方がない。


 覚悟を決め、男2人を殺すために、足を踏ん張った。

 男2人はそんな俺をあざけ笑うように襲いかかってくる。

 命を捨てる覚悟で飛び出そうとした瞬間、右の男が急に倒れた。


「「は?」」


 俺と左の男が声を揃える。

 そして、事態が飲み込めず、完全にフリーズした。

 しかし、倒れた男をよーく見ると、頭に矢が刺さっていた。


「がはは! 見たか、ケイン!! 俺の腕も落ちてないだろ!!」


 山賊っぽい声が辺りに響いた。

 声がする方向を見ると、馬に乗ったガラ悪マッチョが弓を構えていた。

 その隣には同じく馬に乗った性病のケインもいる。


「いや、なんで引退したんだよ……おーい! 詐欺師とポンコツー! 生きてるかー!?」


 性病野郎が俺とヘイゼルに声をかけてきた。


「誰が詐欺師だ! てめーの性病をいち早く教えてやったんだぞ!」

「誰がポンコツよ! 移るからあんたは帰りなさい!」


 俺とヘイゼルはホッとしながらも言い返す。


「ほら見ろ。あいつら、絶対に言い返してくる」

「助けがいのない奴らだなー」

「いいから早く残ってる敵をどうにかしろ!」


 怒鳴ると、ケインが馬を動かし、剣を振り上げながら手前にいる男に向かって走っていく。

 残っている男は一瞬、逃げようと後ずさったが、馬相手には逃げられないと思ったのか、剣を構えて、迎撃態勢を取った。

 だが、ケインはそんな男に剣を投げる。


 男はその剣を躱すために地面に転がったのだが、ケインは馬を操り、転がっている男を踏みつぶした。

 そして、馬を方向転換させ、最後のリーダーらしき男に襲いかかる。


 リーダーらしき男も剣を抜き、構えるが、直後、首に矢が刺さった。

 リーダーらしき男はそのまま、倒れ、動かなくなる。


「すげー! マジでこの距離で当たったぞ!!」


 弓を持ったガラ悪マッチョが叫びながら喜んでいる。

 それもそのはず、リーダーらしき男とガラ悪マッチョの距離はかなりのものだ。

 この距離で当てられるのはヤバい。

 俺なんか5メートルでも微妙なのに……


「自害せずに済んだわ……」


 ヘイゼルが横に来て、つぶやく。


「俺も生き残れたわー……ってか、あいつら、すげーな」

「まあ、ケインは実力者だし、ギルマスも元冒険者だしねー」


 うーん、やっぱり、俺はあれらになれる気がせんわ……

 性病にはなりたくもねーけど……


お読み頂き、ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
スタンガンは自分用にももう一つあるといい気がする テーザーガンでもいいかな アメリカのやつなら射程10mだから剣相手にもいけるからヤの人から手に入れればw 金属鎧ならむしろチャンス 後は単純に熊用ス…
勝つると思っていても、やはりドキドキ これほどの差なら情報源としてひとり確保せんで良かったのかなとかも思ったり
おー強い! 情報伝達されてたのかしら?
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