第072話 どうする?
ヘイゼルの家がある北の商業区とは逆の南の門を目指し、歩いていく。
しばらく歩き、南の門を出ると、剣を鞘ごと抜き、不思議パワーを込めて剣を倒した。
剣は南西の方向を指している。
「南西……あっちは何があるんだ?」
俺の行動を見ていたヘイゼルに聞く。
「そりゃ大森林でしょ。ずーっと続いているわよ」
「西の大森林って、そんなにでかいのか……」
文字通り、大森林なんだなー。
「まあね。とりあえず、南の街道を進みましょう。綺麗だし」
確かに綺麗な街道の方が歩きやすいし、楽だ。
「じゃあ、行こうか」
ヘイゼルと共に歩き始める。
「あんたの世界にあった乗り物に乗りたいわー」
昨日、ヘイゼルは電車や車にすごい興味を持ち、うるさかった。
フィリアも言っていたが、研究職の魔法使いは知的好奇心が旺盛なんだろう。
「この世界では無理かな」
「まあ、そうよねー。歩くのは疲れるけど、仕方がないわ。この仕事が終わったらフィリアを呼んで飲みましょう。あんたの家に帰ってもいいし、私の家で飲んでもいい。フィリアにこれを持って帰ってって、大量のお酒を持たされたしね」
もしかして、氷とクーラーボックスを持って帰れなかったのはそれのせい?
まあ、あいつ、昨日、箱買いしてたもんなー……
ヘイゼルの家に行けば、ヘイゼルに冷やしてもらえるし、とりあえずのストックを確保したのか。
「そうしようか。じゃあ、さっさと終わらせるかね」
「そうね」
俺達はそのまま歩き続け、たまに剣を抜いて馬車の位置を確認しながら街道を進んでいく。
そして、何回か剣を倒していくと、剣がまっすぐ西を指す地点を発見した。
「あっちか……」
倒れた剣を見て、剣が指す方向を見る。
そこには平原が広がっていたが、その先には森が見えていた。
「大森林の中っぽいわね」
「まあ、何となく、そうじゃないかとは思ってた」
見えるところは兵士が調査しているだろうし、あるとしたら見えない森の中だろう。
「兵士も暇じゃないからね。一人の商人のために大森林を捜索することはないわ」
広いから人手もいるだろうしな。
「何のために大森林に行ったのか……まあ、行ってみるか」
「そうね。もし、大森林の奥なら帰りましょう。さすがに危険だし、失敗してもペナルティーがあるわけでもないわ。ギルマスに報告すればいいでしょ」
こういう依頼はペナルティーが基本的にないらしい。
護衛の仕事みたいなのはあるみたいだけど。
「そうするか……」
俺とヘイゼルは街道を外れ、大森林を目指して歩いていく。
しばらく歩くと、大森林に到着したので、枝や草をかき分けながら進んでいった。
「お風呂に入りたくなってきたわ」
一応、剣を持っている俺がメインで枝を切って進んでいるのだが、後ろでヘイゼルがぼやく。
「言うなよ……俺も思っているんだから」
さすがに疲れてきた。
汗もやばい。
「この辺は町から遠いから人の手が入っていないのよねー」
俺達がよく採取する大森林は町に近く、他の冒険者も通るため、枝や草が切られており、結構、歩けるのだ。
だが、ここはそんなことなく、本当に緑ばっかだ。
「お前の火で燃やせない?」
「死罪で済むかしら?」
だよねー。
森を燃やしたら絶対にヤバいもん。
貧弱コンビである俺とヘイゼルはぶつぶつと文句を垂れながら進んでいく。
すると、ちょっと開けたところに出た。
「あー、疲れた」
休憩しようと思い、ちょうどいい倒木に腰かける。
時刻はすでに昼を回っているだろう。
結構な時間を歩いたし、かなりの重労働をした。
「フィリアがいれば、回復魔法で疲労も取れるんだけどね」
回復魔法って疲労も回復できるのか……
傷とかだけだと思ってた。
「ポーションは?」
「疲労回復ポーションっていうのがあるけど、持ってない。材料がこの辺じゃ採れないのよ」
上手いこといかないもんだな。
「俺の占いの不幸ってこれか?」
「まあ、あんたはそうかもね。私はあんたの後ろにいたからそうでもない」
まあ、ヘイゼルを前に置くわけにもいかない。
こいつが剣で枝や草を切れるとは思えないし。
どうせ指を切って、泣く。
「ちょっと休憩させて。お前も座れよ……って、どうした?」
ヘイゼルにも休むように言ったのだが、急にしゃがみ込み、地面を見始めた。
「ねえ? これは何?」
ヘイゼルにそう言われたので倒木から立ち上がり、ヘイゼルが見ている地面を見る。
そこには数センチ程度の幅の跡があった。
それが続いている方向を見ていくと、奥に道らしきものが見えた。
「ちょっと待て」
立ち上がり、剣を抜くと、不思議パワーを込めて倒す。
すると、剣はその跡が続く道を指した。
「馬車の跡?」
跡と俺が倒した剣を見ていたヘイゼルも立ち上がり、聞いてくる。
「だろうな。そして、街道で剣が示していた方向とは違う。動いてるな」
道は俺達が進んできた方向ではない。
南に向かっている。
俺達は南へ行く街道を進み、途中で西に曲がったのだから馬車の位置は西にあるはずだ。
だが、剣が指し示している方向は南。
「馬車が動いている……この跡から見て、そんなに前じゃないわ。さっきまではここにあったと思うのが妥当ね」
占いが外れていなければそうだろう。
「どうする? 商人か別の誰かわからんが、ゴブリンやウルフではないだろう。というか、ほぼ100パーセントで人間だと思う」
「でしょうね……そして、こんなところにいる人間は真っ当ではないでしょう。一応、この前のキノコ目当ての商人みたいに何かを採取しに来たという可能性もあるけど……」
「馬車で森をか?」
「そうね。まずないでしょう」
平原なら馬車でも移動できるが、森の中を馬車は厳しい。
さっきの俺達だって、歩くのすら精一杯だったのだ。
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