第070話 今、聞きたくない話
ヘイゼルの家に戻ってきた俺はフィリアと別れ、ヘイゼルと共に冒険者ギルドに向かった。
もちろん、ヘイゼルもフィリアもこっちの世界の服に着替えたため、それぞれいつもの黒ローブと修道服だった。
だが、フィリアの首には銀のネックレスがかけられていた。
そして、隣にいるヘイゼルの首にも金のネックレスがかけられているのが見える。
白い修道服のフィリアはまだしもヘイゼルは黒い服の上からだと非常に目立つ。
「お前、そのネックレスをしまったら? 目立つぞ」
こっちの世界だって金は貴重だろうし、よく見りゃ精巧な技術で作られていることがわかるだろう。
冒険者の連中は気付かないと思うけど。
「これはそういうもんなの。人に見せびらかさないでどうすんのよ」
あ、そういうやつなのね。
昨日、フィリアがマーキングとかなんとか言ってたけど、俺らの世界でいう左手か右手の薬指につけるやつなのね。
「よくわかんないんだけどさ、自分で買ったアクセサリーの場合はないの?」
アクセサリーを身につけるって広くない?
日本でも右手の薬指の場合は恋人と決まったわけでないが、左手の薬指というわかりやすいものがある。
「アクセサリーは夜会や公の場でもない限りはつけないわよ。まあ、私の場合は男避けか魔道具と思われるかもだけど」
魔道具なんてあるのか。
MPが増える的なやつかな?
「そんなもんなのか…………」
「まあ、冒険者の男共がどれだけそれを知っているかは微妙だけどね」
あいつら、野蛮だもんなー。
「ちなみに、フィリアも着けて帰ったけど?」
「あんた、フィリアに何か言った?」
お前を絶対に娶るって言いました!
「言ったね……」
「じゃあ、それよ。修道女仲間なら皆、察するしね。あと、まあ、男のあんたに言うべきじゃないかもだけど、自慢になるから。意中の相手から贈り物をもらったら大抵の女性は見せびらかすわよ」
その辺はこっちもあっちも変わらんか。
男だって、女から何かをもらったら自慢するし。
「俺、あのじじいに呼び出されるんかね?」
「ああ……あの人……ご愁傷様」
殴られることはないと思うけどなー。
「ちなみに聞くけど、お前のとこはどうなん?」
「私の親のこと? 私は絶縁状を送ってるから特に何も……手紙くらいは送るだろうけど」
「送るんだ? 絶縁したんじゃないの?」
「絶縁状っていうのは、私はもう貴族でもバーナード家の人間でもありませんって宣言ね。でも、親子であることは変わりないから報告くらいはする。結婚したらさすがに親も諦めるし、祝福くらいはするわ。絶縁状を送って、他所の人と結婚した娘に干渉すると、他の貴族に狭量って思われるからね」
そんなもんなのかねー。
よくある物語だと、無理やり連れ帰る的な展開が起きる気がするけど。
ロストはそういう国なのかね?
「結構、自由なわけ? 他の人と結婚したくて家を出る人も多そう」
「そうでもない。貴族の地位を捨てるって厳しいからね。単純にお金がないし、生活水準を落とせる貴族の女性はいないわ。私みたいに身を立てるすべがあれば別だけど、大抵の女性は無理よ」
ヘイゼルは魔法学校に通っていた優秀な魔法使いだからな。
お金はどうとでもなるのか……
お金じゃないところが非常に不安だけど。
「しかし、絶縁ねー……ウチの母親も絶縁状を送ればいいのに」
「王族はさすがに無理よ。ましてや、巫女様だもん」
無理なのね。
やはりロストには近づかないのが吉だな。
ロストの王族、巫女関係には絶対に近づかないぞ、と改めて心に決め、ギルドを目指した。
ギルドに到着した俺達はガラ悪マッチョのところに行き、依頼の話を聞くことにする。
「よう。たまには朝にお前らの顔を見たいわ」
ガラ悪マッチョが軽口を叩きながら挨拶をしてくる。
「朝からお前の顔を?」
「野蛮人共の顔を朝から見たくないわよ」
俺とヘイゼルも軽口で返した。
「お前らって、すぐ言い返すよな……まあいいや。まずはこの前の依頼の報酬を払う」
ガラ悪マッチョがそう言って、受付に袋を置く。
「いくらになったん?」
「金貨21枚。内1枚はお前の占い代だな」
金貨15枚が金貨20枚になったのか……
思ったより、上がってるな。
「巻き上げたなー」
「ペナルティーは重くしねーとな。次もやられたらたまらん」
「まあな」
俺とヘイゼルは金貨を受け取り、俺が金貨11枚、ヘイゼルが金貨10枚に分け、それぞれの財布に入れた。
「それで次の依頼をしたいんだけど、何かある?」
金貨を財布に入れたヘイゼルがガラ悪マッチョに聞く。
「あー、それな。実はこの前のもう一つあった依頼があったろ? あれが残っている」
街道の調査か……
街道で行方不明になった商人と馬車の捜索というか、調査。
「あれねー……」
「うーん……」
俺とヘイゼルが難色を示す。
「やんないか? 他の冒険者もやってくんなくて、報酬が金貨10枚から15枚に上がったぞ」
それでも誰も受けないのね。
「ヘイゼル、どう思う?」
冒険者の先輩であるヘイゼルに意見を聞く。
「街道のみの調査ってのがね……そんなもんは兵士がやってるし、冒険者に何を期待してるのかわかんない。っていうか、逃げたんじゃないの?」
「実際、皆、そう思ってるな。南に行ってないなら西のロストか北のエスタか……」
やっぱ蒸発か……
「借金でもあったのか?」
ガラ悪マッチョに聞く。
「ないが、嫁さんとは上手くいってないことで有名」
それじゃね?
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