第053話 食いついてよ
俺とヘイゼルはその後もゲドゲド草を始めとした毒草や薬草を採取し続けた。
先ほど、ゴブリンと遭遇した際には初級魔法を使って倒そうと思ったが、1発では倒すことができず、ヘイゼルが処理した。
そして、昼をまたぐ前に大森林から出ると、そのまま帰ることにした。
「うーん、ゴブリンが倒せん」
まさか魔法ですら倒せんとは……
「あんたはまだ覚えたばっかりでしょ。少しずつ、練習していきなさいよ。あと、ゴブリンって弱いんだけど、意外と生命力があるの」
ゴキブリみてーだな。
なお、我が家にゴキブリはいない。
ゴキブリ嫌いな母が謎の結界を張っている。
「まあ、銃よりかはマシか……」
ハンドガンでは怯まなかったゴブリンも俺の火魔法の前には足が止まった。
「そのうち倒せるって」
「お前、ウルフはどうしてんだ? たまにだが、出るんだろ?」
前に門番の兵士から大森林の浅い所ではゴブリンとウルフが出ると聞いている。
「ウルフは魔よけの石があれば出てこないわ。ちゃんと持ってきてる」
魔よけの石……
「そんなのがあるのか」
「え? 持ってないの? 危ないわねー。買ったら?」
「お前が持っているなら大丈夫。一人で森に行かないし。行くならお前と行く」
「そ、そう? そっかー……」
俺とヘイゼルは今日も友好を深めながら歩いて帰り、冒険者ギルドに直行した。
そして、受付にいるガラ悪マッチョの所に行き、精算をしてもらう。
「今日は黄金草じゃないのか。しかし、お前らって、いつも昼に帰ってくるのな。午後からも働けよ」
ガラ悪マッチョが手袋をし、慎重に採取してきた毒草を確認しながら苦言を呈してくる。
「疲れた」
「私にそんな体力があると思ってんの?」
俺とヘイゼルはすぐに反論した。
「まあ、好きにすればいいんだがな。しかし、冒険っていうのはもっとこう心躍るもんだぞ。最近の若いのにはわからんかねー」
わからんでもないけど、キツいのは嫌だ。
「わかんないわよ」
まあ、ヘイゼルはわからんだろ。
貴族の女魔法使いだもん。
「んー、金貨7枚と銀貨8枚かな。めんどくせーから金貨8枚だな」
適当だな、おい!
「おー! すごい! いつもの倍以上だ!」
ヘイゼルが喜んでいる。
「じゃあ、金貨8枚なー。あ、あと、リヒトには昨日の分の金貨1枚も渡しておくわ」
性病をもらった冒険者のやつね。
俺とヘイゼルは金貨8枚をもらい、等分で分けた。
そして、昨日のケインとかいう冒険者を占った分の金貨1枚も受け取った。
これで今回の儲けは金貨5枚となった。
「よーし、今日は終わり。ガラ悪ー、酒くれ」
「ガラわ……ギルマス、私も」
「あいよー」
ガラ悪マッチョは『俺って、ガラ悪いかな?』とつぶやきながら奥で酒を用意する。
そして、奥から酒を2つ持ってくると、受付に置く。
「ケインのおごりだ。めっちゃ感謝してたぞ」
早期発見で良かったな。
「私の分も?」
「お前には昨日、絡んで悪かった、だって。まあ、あいつは普段はまともなくせに酒に弱くて酒癖も悪いからな」
「いつものことね。有難くいただくわ」
やっぱり酒に弱かったか。
フラフラしてたもんなー。
俺達は酒を受け取り、テーブルに着くと、ヘイゼルに酒を冷やしてもらい、乾杯した。
「黄金草ほどじゃないけど、結構、儲かったなー」
「半日で金貨4枚なら十分過ぎよ。これで3日は研究に専念できるわ」
魔法の研究かな?
「明日は休むか?」
「あ、いや、待って。ちょっと数日は続けてもいいかしら? お金というより、あんたの魔法と2人での仕事を慣れたほうが良いと思うの」
まあ、そうかも。
初級魔法を覚えたばっかりだし、もうちょっと見てもらった方がいい。
そうなると、あっちの世界には帰れないな。
あとでフィリアのところに行って、謝ってくるか……
「じゃあ、そうしよう。午後からにするか?」
「午前中でいいわ。明日はちゃんと起きるし」
「寝坊してくれてもいいぞ。ちゃんと起こしにいくから」
眼福、眼福。
「絶対に起きるわよ!」
ヘイゼルは俺の言いたいことがわかったらしい。
「お前は今日、この後、どうするんだ?」
「あー、そうね……実は親愛なる我が弟子にお願いがあります」
「なーに?」
「ちょっと賃貸の部屋がどうだったかフィリアに聞きに行きたいのよ」
ん?
行けよ。
「良いと思う」
「うん。ついてきてくれない?」
「いや、俺もフィリアに用があるからいいけど……なんでついてきてほしいの?」
一人でトイレに行けない女子か?
それともフィリアが嫌いか?
「私、教会が苦手なんだよね」
あー……っぽいわ。
こいつ、魔女だし、教会が似合わなさすぎる。
「なんとなくわかるわ。じゃあ、飲んだら行くか」
「お願い。さすがは我が弟子」
情けない師匠だなー。
仕事終わりの一杯を飲み終えた俺とヘイゼルはギルドを出て、教会へと向かう。
「ところで、フィリアは教会にいるの?」
教会まで歩いて向かっていると、ヘイゼルが聞いてきた。
「多分な。一応、占いというか、ダウジングに近いこともしたし」
「さっき剣を倒してたけど、あれ?」
ギルドを出てすぐに剣を使って、フィリアの居場所を探ったのだ。
倒れた方向が教会方向だったので、多分、教会にいると思う。
しかし、俺の剣って、敵を倒すことよりこっち方面で使うことの方が圧倒的に多いな。
ただまあ、ヘイゼルからもらった杖はちょっとそういうことに使うのは悪いと思うし、他にいい感じの棒がないからしゃーない。
「そうそう。尋ね人がいたら探してやるぞ」
「お金を取るんでしょ?」
「お前からは取らねーよ」
こいつは絶対に覚えてないだろうけど、最初に魔法の師事をお願いした時にヘイゼルの占い料はタダにするって言ったのだ。
「……取らないの?」
「占ってほしければ言えよー。ちなみに、今日の晩御飯は肉だぞー」
「いや、私の宿の晩御飯は毎日、肉が出るし……」
「お前のところもなのか……ウチもだよ」
美味しいんだけど、魚を食べたい今日この頃。
家に帰っても魚は調理がめんどくさいのだ。
「この辺はどうしてもメインが肉になっちゃうからねー。まあ、屈強な冒険者とかには好評なんだろうけど、私は2日に1回でいいわ」
俺もそのくらいでいい。
今度、ポン酢を持ってきて味変しようかな?
「実際、占ってほしいことはないん?」
「ないわね。ピンチになりそうだったら教えて」
まあ、それは教えるし、回避するのも手伝うが、やっぱり魔法使いは占いに興味がないのかねー?
ちょっと寂しい俺であった。
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