第052話 そっかー
「それでさ、何を採取すんの?」
「そうねえ……まずは黄金草があるかどうかかな? ありそう?」
ヘイゼルに言われて、ちょっと頑張って探してみようと思い、カバンの中から持ってきていた20000円もする水晶玉を取りだした。
「ちょっと見てみる」
「いやいや! 何それ!? ガラスの玉!? ちょー欲しい!!」
魔法使いが食いついてきた。
そういえば、この世界はガラスが珍しかったな。
正確に言うと、ガラスじゃないけど、このようなきれいな玉のガラスは珍しかろう。
というか、これ、いくらで売れんだろ?
今度、フィリアに聞いてみようかな……
「これは占いで使う道具だぞ」
「ちょっと貸して」
「落とすなよ」
仕方がないので水晶玉をヘイゼルに手渡した。
ヘイゼルは水晶玉を覗いたりし、興味津々のようだ。
「お前が持ってるとマジで似合うな」
魔法使いっぽさが上がってる。
「そ、そうかな? いいなー。これ、どこで買ったの? いくらだった? めっちゃ欲しい!」
正直、そんなに欲しいならあげてもいい。
多分というか、絶対にさっきもらった杖は金貨2枚以上するだろうからだ。
だが、この水晶玉をこいつが持っていることが怖い。
落としそうだし、人に自慢……いや、こいつ、ぼっちか。
「絶対に人に見せないならやるぞ」
「え? マジ? いや、お金は払うよ」
「さっき、杖をもらったからいい」
「さっきの杖、金貨30枚程度だよ? これ、比にならないような気がするんだけど」
こいつ、金貨30枚もする杖を俺に寄こしやがった!
ヘイゼルって、男に貢ぐタイプだよな。
ホストで狂いそうだわ。
「差額は俺の気持ちだよ。親愛なる我が仲間への贈り物。でも、絶対に人に見せるな」
「う、うん……一生大事にするね!」
ヘイゼルは顔を赤くし、チラチラと俺を見上げながら大事そうに収納魔法で収納した。
「いや、収納すんな」
あげたけど、これからそれで黄金草を探すって言ってんだろ。
「あ、そっか」
再度、ヘイゼルに水晶玉を出してもらったので水晶玉を持たせたまま、覗き込み、詳細に黄金草を探してみる。
「うーん、あると言えばあるが、数も少ないし、まだ成長しきってないな」
「ならやっぱりやめましょう。時間を置いて、成長したら採取すればいいわ。毒草はある? できたらゲドゲド草がいいんだけど?」
ゲドゲド草ねー。
確か、トゲがあり、そのトゲに毒がある草だ。
名前がひどいと思ったから覚えている。
「エロイムエッサイム~」
「呪文?」
「適当」
「あっそ」
切り替えて、ヘイゼルが持っている水晶玉を覗く。
……さっきも思ったが、大きいな。
ヘイゼルは腹部の前で水晶玉を持っているため、どうしても大きなふくらみが視界に入るのだ。
また自分用のやつを買おうかと思ったが、それはやめて、今度からもこのスタンスでいこうと思う。
「あるなー。ただ数は少ないな……」
「元々、数が少ないやつなのよ。でも、トゲと根と葉がそれぞれ別に売れるから高額になる」
「いくらだったっけ?」
「1株で金貨2枚」
黄金草の倍か……
これだな。
「よし、探そう」
おっぱ……水晶玉を見るのをやめ、カバンからダウジング棒を取り出した。
そして、両手に持ち、探し始める。
「モンスターが出そうなら言って。あと、ゲドゲド草の採取は私がやるわ。あれは触ると危ないの」
お前が採取すんの?
大丈夫か?
この前のお前の黄金草採取はヤバかったぞ?
「わかった」
専門家で経験がありそうなヘイゼルを信じることにし、ダウジング棒が指している方向へ歩いていく。
そのまましばらく歩いていくと、両手に持っている棒が左右に大きく開いたので下を見ると、トゲのついた草が生えている。
ゲドゲド草だろう。
「ヘイゼル、あったぞ」
「うん。じゃあ、採取するね」
ヘイゼルはそう言うと、しゃがみこみ、ゲドゲド草に手を伸ばす。
「大丈夫か? お前、採取が苦手……」
ヘイゼルを心配しながら覗き込み、声をかけたのたが、途中で声が止まった。
何故ならヘイゼルがゲドゲド草に手を近づけると、一瞬にして消えたのだ。
「毒があるから普通に採取するのは危ないの。だからこれが一番安全!」
ヘイゼルは誇らしげに立ち上がった。
「収納魔法か?」
「うん! こういう時に便利!」
ふーん……
収納魔法で採取できるんだねー。
ヘイゼルちゃんってすごいんだねー。
「お前、俺に言うことない?」
「え? あ、見つけてくれてありがとう! ちゃーんと分け前は等分だから!」
違う。
そうじゃない。
「そうか。まあいいや」
「え? 違うの? 何?」
「いや、いいよ。次を探そう」
「ねえ、何? 言ってよー」
ヘイゼルはすごく気になるらしい。
「お前、そんな便利なことができるのに、俺に黄金草を88株も手作業で採取させたんだな。汗を流し、腰を始めとする全身を痛めた俺は何だったんだろうな?」
「………………」
腕を掴んで揺らしていたヘイゼルの動きが止まった。
「いや、いいんだよ。気にするな、我が親愛なる師よ」
「いやね、だって、ほら、そのー……ね?」
ヘイゼルが媚びへつらうような目で見てくる。
「わかってるよ。お前は収納魔法を知られたくなかったんだよな?」
どうりで採取で生計を立てているはずなのにド下手だったわけだよ。
不器用以前にそもそもやったことがなかったのだろう。
「ご、ごめんね? や、やっぱり金貨100枚をあげるよ……」
あと、こいつって、金で解決しようとするところがある。
貴族らしいと言えば、貴族らしい。
「いいんだよ。貸しにしとくから」
「あのー、すでに返せないくらいの借りがある気が……」
知ってる。
だから一生、俺の仕事を手伝わせるって言ったの。
魔法を教え終わった後に捨てない契約なんかマジでどうでもいい。
「大丈夫、大丈夫。気付いたら違う意味の借金地獄になってるってことはないから」
というか、すでに遅いね。
「あ、あの、水晶玉を返すよ……」
「お前、男が女に渡した贈り物を返却するのか?」
たった2万円だけどね。
「え!? これ、やっぱりそういう意味? そうか……うん、そうか……だから助けてくれたのか……そっかー……じゃあ、返さない!」
ヘイゼルはぶつぶつと何かをつぶやいた後、返却を拒否してきた。
「返せなんて言ってねーよ。後生大事に持ってろ」
今度からはお前がそれを持った状態で占うんだから。
「わかった!」
「じゃあ、次に行こう」
「よーし! ねえねえ、あんた、長男?」
「ウチは一人っ子だよ」
急にどうした?
「そっかー。私は次女!」
お前、姉がいるのか……
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