第054話 蛇が悲しんでるよ
そのまま歩いていると、昨日も来たというか、あっちの世界から帰ってきた場所である教会に着いた。
教会に入ると、宿舎の方に向かう。
そして、宿舎の入口の前で立ち止まった。
「なあ、勝手に入っていいのかな?」
「あんたは怪しいからやめた方がいいと思う。下手すると、騎士団にグサッ」
「お前も悪い魔女だから騎士団に捕まって拷問ののちに火あぶり」
魔女狩りですわ。
「貴様らの騎士団のイメージはひどいな」
突然、後ろから声がしたため、俺もヘイゼルもビクッとなった。
すぐに振り向くと、教会の神父服を着たじじいが立っていた。
「なんだ……フィリアのじいちゃんか……」
しかし、気配がまるでなかった。
忍者か?
「え? フィリアの? あ、あの、えーっと、私はフィリアさんの……あれ?」
……可哀想な奴。
「友人でいいだろ」
「――友人のヘイゼルと言います」
ヘイゼルは何とか説明し、頭を下げる。
「そうでしたか……これはこれは、よくぞおいでくださった」
じいさんはニコッと笑い、人の良さそうな顔をする。
「神父様、フィリアはいますかね?」
じいさんに聞く。
「部屋にいるぞ。貴様らは2人共、フィリアに用事か?」
「このヘイゼルは私とパーティーを組む仲間なんですよ。まあ、用事は違うんですけどね。私は商売の話で、ヘイゼルは家を借りようと思っていて、フィリアに相談をしているんですよ」
「なるほど……まあ、勝手に入ってよいぞ。フィリアの部屋は入ってすぐだし、他の者の迷惑にもならんだろ。フィリアの部屋はわかるな?」
そりゃね。
一昨日から昨日まで24時間も2人きりでこもりきりでしたんで、へっへっへ。
って答えたら死ぬんだろうな……
「わかります。では、失礼して……ほら、ヘイゼル、行くぞ」
がちがちに固まっているヘイゼルに声をかけた。
「う、うん。神父様、失礼します」
「うむ。孫と仲良くしてくれ」
じいさんはそう言って、教会に戻っていった。
「あー、怖かった」
じいさんが見えなくなると、ヘイゼルはでかい胸を撫でおろす。
「あいつ、いつの間に俺達の背後に来たんだろ?」
「わかんない。あれは絶対に元騎士団よ」
「隊長だったらしいぜ。わかるん?」
「雰囲気が軍人のそれだった。私の父も軍人だからわかるわ」
こいつの親父も強そうだなー。
この世界の男はなんで皆、強そうなのかね?
俺がめっちゃ弱く感じる。
いや、実際、弱いんだけども……
「まあ、いいや。フィリアの部屋に行こう」
「そうしよ。あーあ、これだから教会は嫌なのよね。心臓が止まるかと思った」
俺も止まるかと思った。
俺達は気持ちを切り替え、宿舎の扉を開けた。
そして、中に入ると、すぐそばの部屋をノックする。
『はーい?』
部屋の中からフィリアの声がした。
フィリアの声を聞くと癒されるわー。
「フィリアー、俺だよー。リヒトだー。偉大なる魔法使いと一緒に来たー」
「ふふっ」
ヘイゼルが上機嫌に胸を張る。
ノリの良い子だね。
『開いてるからどうぞー』
部屋主の許可を得たので、扉を開ける。
部屋の中ではフィリアがベッドに座っていた。
「急に悪いな」
「……こんにちはー」
中に入り、フィリアに声をかけると、ヘイゼルは俺の背中に隠れながら小声で挨拶をする。
「さっきまでの威勢はどうした?」
「いや、どうも教会はねー……」
ホント、苦手なんだな。
「どうかしたの?」
フィリアは俺達のやり取りが疑問のようで聞いてくる。
「いや、さっきおまえのじいちゃんに驚かされたんだよ。気付いたら後ろにいてマジでビビった」
「あー、なるほどね。まあ、座ってよ」
フィリアはそう言って、自分が座っているベッドの隣をポンポンと叩くが、ベッドには3人も座れそうにない。
「ヘイゼル、お前はそこに座れ」
フィリアの横はヘイゼルに譲り、机のところにある椅子を引いた。
「あ、じゃあ」
ヘイゼルは大人しくフィリアの隣に座ったので、俺も椅子に座った。
「2人で来たんだね?」
全員が座ると、フィリアが聞いてきた。
「用事があってなー。まずなんだけど、今日、ヘイゼルと仕事してきたんだわ」
「大森林?」
「そうそう。採取だな。まあ、儲けも良かったし、これでやっていこうと思う」
「良いと思う。人のことを言えないけど、2人はモンスターを討伐するって感じじゃないもんね」
まったくもってその通り。
「それで今日、ヘイゼルに初級魔法を教えてもらったんだわ」
「おー! どうだった?」
「無事に覚えた」
「おー! すごいじゃん!」
まあな。
「師匠が優秀だったわ」
そう言うと、ヘイゼルがまたもや上機嫌に胸を張る。
しかし、よー、胸を張る子だ。
アピールかね? それとも自慢?
眼福で結構だ。
「良かったねー」
「だな。それで悪いんだけど、明日から数日、仕事を慣れるのと同時に魔法の練習をしようかと思ってんだわ」
ごめんね。
「あー……なるほどね。確かに、覚えたての時こそ頑張らないと身につかないし」
「それそれ。だからちょっと数日は帰れそうにない」
帰れそうにないって言って、ヘイゼルはイミフだろうが、まあ、いいや。
近いうちにこいつも連れていこうかと思っているし。
「うん、わかった。まあ、今回はたくさん持って帰ってるし、大丈夫だよ。こればっかりは仕方がないしね」
フィリアは今回、保存が利くお菓子を大量に持ち帰っていた。
それで凌ぐのだろう。
でも、お酒が飲めなくて、ごめんね。
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