第035話 すやすや
黄金草の採取を始めた俺達は昨日の方向とは逆の方向に行き、採取を開始した。
昨日は運良く群生地を見つけることができたため、一気に採取ができたが、今日は群生地を見つけることができずに転々と生えている黄金草を採取していった。
ヘイゼルの魔法でゴブリンを倒したり、休憩しながら採取していったので30株の黄金草を採取し終えた時は昼過ぎだった。
とはいえ、これでノルマである88株の黄金草を採取し終えたのである。
「ありがとう! ありがとう!」
採取を終え、大森林を出ると、嬉しそうに黄金草を抱えたヘイゼルが涙を浮かべ、感謝してくる。
「良かったなー」
「この恩は絶対に返すからね!」
うんうん。
魔法を教えてもらうのとちょっとお仕事を手伝ってね。
「帰ろうぜ。お前も早くポーションを作った方がいいだろ」
「そうする!」
ヘイゼルはテンションがマックスのようで抱えていた黄金草を一瞬にして消し、杖を持ち換え、歩いていったのでその後ろ姿を見て、呆れた。
……最後まで隠せよ。
収納魔法を使っている現場を見なかったことにしてやり、ヘイゼルのあとを追う。
そのまま、ご機嫌なヘイゼルの話を聞きながら歩いて、町を目指すと、西の門に到着した。
「本当はまたギルドで奢りたいんだけど、さっさとポーションを作って納品してくるわ。お礼は後日、ちゃんとさせて」
西の門から町に入ると、ヘイゼルはすぐに足を止め、俺に頭を下げてきた。
「だなー。お礼というか、お祝いかな。お前が変態に買われなくて良かったパーティー」
「いや、実家を頼るってば」
ヘイゼルは半笑いでツッコんでくる。
「……お前が逃げなければなー」
「……え?」
「お前は本来、二通りの道があった。実家を頼るパターンとそれすら嫌がり、何もかもを捨てて逃げるパターンだ」
どっちに転ぶかは俺もわからない。
それはその時のこいつ次第。
「マジ……? 特に何も考えてなかったけど」
「だからその時の感情で行動に走る予定だったんだろうな。お前が逃げた場合はすぐに捕まって奴隷落ちだ。その後は知らんが、まあ、想像はつくだろ」
「じ、実家を頼った場合は?」
「実家を頼った場合は両親がお金を立て替えてくれる。その後はわからんが、まあ、例の奴と結婚かね?」
もしかしたら婚姻がすでに破綻しており、別の奴かもしれんが、親の考えは結婚だと思う。
こんなドジを外に放り出すより、良いところの家庭に入れたほうが良いと思うだろうし。
「最初に言ってよ!」
ヘイゼルは顔を青くしながら文句を言ってくる。
「詐欺師の言うことを信じたか?」
「……信じない」
「だろー? 自分で言うのもあれだが、俺も信じねーもん」
初対面で胡散臭い占い師の言うことを信じる奴はいない。
それが不幸な話だったらなおさらだ。
だが、仲間の忠告なら信じるだろう。
「お前、今度から契約内容をちゃんと確認しろ。俺が見てもいいし、フィリアを頼ってもいい。間違っても酒を飲んでいる状態で契約すんな」
そう忠告すると、ヘイゼルは首を上下に激しく振る。
「そ、そうする!」
よしよし。
「じゃあ、さっさと作ってこい。俺はフィリアを探すわ」
「わかった! またね! 本当にありがとう!!」
ヘイゼルは再び、頭を下げると、宿屋の方に走っていった。
それを見送ると、フィリアを探しに歩き始める。
フィリアはどこかな?
教会か、市場か、冒険者ギルドか……
腰から剣を鞘ごと抜き、地面に立てた。
そして、手を離すと、剣が倒れる。
「あっちか……」
剣を拾い、腰に差すと、剣が倒れた方向に歩き出した。
というか、この方向の先にあるのは俺が泊まっている宿屋だ。
歩いて、宿屋に戻り、中に入ると、受付にはサラでなく、母親の方のリリーが座っていた。
「ただいま」
「おかえりー。早かったね」
受付まで行き、挨拶をすると、リリーも返してくれた。
「今日は飲んでないからな」
「冒険者はいいねー。昼間から楽しそうだ」
「リリーも飲めば? 誰も文句を言わないでしょ?」
昼間に客は少ないだろうし、別にいいと思う。
少なくとも、俺は気にしない。
「夜がメインなんだよ。今から飲んだら仕事になんないの」
「なるほどね。フィリアは?」
ポケットから飴を2つ取り出し、受付に置きながら聞く。
「上だよ。人の宿を密会の現場みたいに使うんじゃないよ……あんたらは健全な未婚者なんだから外で堂々と会え」
確かに浮気現場みたいだなー……
「別にコソコソしているわけじゃないけどね。たまたまだよ」
「ふーん。今日も一日中、こもりっきりかい?」
やっぱ前回は何かやってるって思われてそうだ。
「いや、商売の話かな。すぐに終わるし、その後、教会の神父様に会いに行くと思う」
「たとえ反対されてもくじけるんじゃないよ!」
「フィリアをもらいにいくんじゃないよ。相談があるんだ」
「なーんだ。つまんない」
女は色恋が好きだな。
「今からリリーにサラをくださいって言おうかな」
「旦那を呼ぼうか?」
「いや、フィリアと密会してくる」
怖いでーす。
「そうしなー」
フィリアが待つ自室に行くため、隣にある階段を上る。
そして、部屋をノックし、中に入った。
フィリアはこの前と同じ体勢で寝ており、その枕元にはちゃんと蛇もいた。
「精霊さん、お前はフィリアをどうしたいんだ?」
フィリアの傍まで行くと、蛇を触る。
蛇は何も答えず、そのまま寝てしまった。
「蛇には言葉が通じないわなー」
だって、爬虫類だもん。
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