第033話 変かな?
「俺はあれをどうするか悩んでいる」
「どうするって?」
「あれはフィリアに懐き、フィリアを守っている。でも、締め付けて、フィリアを苦しめている」
「あー……苦しくないのかなとは思ってた」
締め付け方が強い。
あと、エロい。
「祓うべきかな?」
「精霊は祓わない方がいいと思う」
ヘイゼルが断言した。
「なんで?」
「精霊は女神様が作ったこの世界を守るものだもん。それは四大精霊以外も一緒。なんで個人に憑いているかは知らないけど、精霊を祓うのはやめた方がいいと思う。教会を敵に回す行為よ」
思ったより教会の力が大きいし、あの蛇を祓うのは得策ではないようだ。
「うーん、お前、フィリアに精霊魔法とやらを教えられないか?」
「無理。フィリアはあの蛇が見えてないもん。見えないと話にならない」
ダメかー……
「俺があの蛇を説得するかなー……」
「やけにフィリアを気にするね? 別にあのままでも死にはしないでしょ。多少は苦しいだろうけど」
「まあ、フィリアは俺の右腕だからなー」
「さっきも商売の話をしてたし、ビジネスパートナーかな?」
まあ、そんな感じかもな。
「お前は左腕な」
「いつの間に……嫌だ――」
「腰が痛いわー」
「親愛なる我が弟子よ! 任せといて!」
精一杯、俺より上に立とうとする気概は認めよう。
「やっぱりギフトのことを聞く時にそれとなく神父様を探ってみるかなー」
「そういえば、フィリアって、神父様のお孫さんだもんね」
「そうそう。お前って、なんだかんだ詳しいな」
「まあ、1年以上もこの町に住んでるからね」
そういえば、そうだったな。
1年もいれば、町のことも詳しくなるか。
「話は変わるけど、お前って、ずっと宿屋暮らしなん?」
「まあねー」
「1年もか? そんだけいれば、借りた方が安くつかないか?」
この世界の物価とかは知らないけど、日本では、長期の場合、ホテルに泊まるより、賃貸の方が安いだろう。
「え? そうなの?」
「俺に聞くな……ガラ悪ー! ガラ悪マッチョのルークさまー!!」
受付にいるガラ悪マッチョなギルマスを呼ぶ。
「何だよー?」
ガラ悪マッチョは鼻をほじりながら用件を聞いてくる。
「長期にこの町にいる場合って、宿屋暮らしと家を借りるのってどっちがいいんだ?」
「長期って?」
「1年」
「1年もいれば、部屋を借りた方が安いに決まってんだろ。それ以上住むなら申請して定住した方がいいぞ。最終的には安くつく」
それを聞いて、チラッとヘイゼルを見る。
ヘイゼルは口を開けていた。
「だってよ」
「部屋ってどこで借りられるの?」
こいつ、1年もいるのに何も知らねーんだな。
そりゃ、フィリアもポンコツ言うわ。
「フィリアに聞けよ。こういうのは詳しそうだったぞ」
「あの守銭奴に頭を下げるの? そうしたら二度と頭が上がらなくなる気がするんだけど?」
「お前、さっき、俺に言ったじゃん。適材適所。お前にはお前の良いところがあり、フィリアにはフィリアの得意分野がある」
「……親愛なる我が弟子よ。フィリアを紹介して」
お前の方が先に知ってるだろ……
その後もヘイゼルと酒を飲んでいたが、夕方になる前には解散した。
ヘイゼルは宿屋に戻り、ポーションを作るらしい。
「ポーションを作り終えた後に酒を飲むなよ」
ギルドを出て、別れ間際に忠告する。
「わ、わかってるわよ。明日も朝から出るんだし、早めに寝るわ」
「よろしい。じゃあ、明日な」
「うん。よろしく」
ヘイゼルはきちんと頭を下げると、宿屋に帰っていった。
俺は時間が余ったので町を散策し、夕方には宿屋に戻る。
そして、サラに餌付けをし、夕食を食べると、早めに寝ることにした。
翌朝、早めに起きた俺は朝食を食べ、ヘイゼルが泊まっているもくもく亭へと向かう。
もくもく亭の前まで来ると、すでにヘイゼルが宿屋の前で待っているのが見えた。
「お! 早いな」
良いことだ。
「おはよう。まあね。納期はまだ5日あるけど、今日中には終わらして、早く安心したい」
気持ちはわかる。
自分のこれからの人生が決まる大事な仕事だもん。
「わかった。あと30株だし、今日中には終わらせよう」
俺達はちょっと早いが、大森林に向かうために西門を目指し、出発した。
そして、西門の門番に挨拶をし、門を抜けると、ヘイゼルの足が止まる。
「どうした?」
立ち止まり、じーっと見ているヘイゼルに聞く。
「いやさ、ずっと思ってたけど、その変な格好は何?」
動きやすいシャツとズボンを履いている。
その上に占いをする時とかに着ている黒いフード付きの外套を羽織っている。
「変か?」
「怪しすぎ」
自分の格好を改めて見るが、シャツもズボンもほぼ見えないし、そこまで変ではないと思った。
それでも変と言われたら仕方がないので、フードを被ってみる。
「ほら、魔法使いっぽいだろ」
「邪教徒にしか見えない……私、生贄に捧げられそう」
ひっで。
「普通はどんな格好だ?」
二度と被らないと思いつつ、フードをとる。
「冒険者は鎧とかでしょ」
「お前も着てねーじゃん」
ヘイゼルは黒のローブに黒の三角帽子だ。
「いや、私の身体を見なさいよ。鎧を着れると思う?」
そう言われてたのでヘイゼルの胸部を見る。
無理かな……
「いやいや! そこじゃないわよ! 筋肉を見なさいって言ってんの!」
ヘイゼルはそう言って、袖をまくり、細い腕を見せてくる。
「筋肉ねーな……足もか?」
ヘイゼルはローブを少しめくり、膝下まで見せてくれた。
「細いなー。お前、完全にデスクワークの人間だろ」
「でしょー。こんな身体で重い鎧なんて着ても動けないわよ」
こけたら二度と起き上がれなさそうだもんな。
「それは俺も一緒だろ」
「いや、それでもあんたは男なんだから私よりは筋肉あるし、力も強いでしょ。金属鎧は無理でも軽い革鎧とかなら大丈夫そうだし、着たら?」
革ねー。
ないよりはマシだが、大丈夫かな?
うーん、あっちの世界で何かないかな?
防弾チョッキでも買おうか……
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