第031話 マジか
「そうだよ。来たばっか」
「その占いは異世界人のギフトってわけね! なるほど!」
「これは元々あった力だよ」
「元から詐欺師だったのね……」
本当にどいつもこいつも詐欺師って言うな……
「まだギフトがわかんないんだよな。だから教会の神父様に聞いてみるつもり」
「ギフトがわかんない? え? ギフトはこっちの世界に来る時にわかるもんって聞いたけど?」
「は? マジ?」
「うん。そう聞いたし、同じ学校にいた異世界人の子もそう言ってた」
……俺、何もわかんないんだけど。
もしかして、俺はスマホのアプリで来たから正規のルートじゃありません、てことか?
……ありえる。
だって、俺、帰れるもん。
「神父様に確かめてもらうわ」
「大丈夫! あんたはさぎ……じゃない、素晴らしい力があるから!」
慰めてくれる気はありがたいが、詐欺師って言おうとしたな……
俺達はそのまま会話をしながらアルトの町に帰ってくると、門番の兵士に挨拶をし、ギルドに戻った。
今回採取した黄金草は全部ヘイゼルの物だし、ゴブリンは魔石すら残さずに消し炭になったのでギルドに用はないが、ヘイゼルがぜひ、おごらせてくれと言うので、酒を飲みに来たのだ。
俺達はガラ悪マッチョに酒を頼むと、『お前ら、昼間からいいご身分だな』という小言と共にこれは昨日の礼だと言って、つまみをもらった。
どうやら昨日、奥さん達と上手くいったようだ。
酒が届くと、ヘイゼルは何も言っていないのに俺の分も魔法で冷やしてくれた。
そして、乾杯をし、ジャーキーみたいなつまみを食べながら酒を飲む。
「そういえば、お前、何歳?」
ヘイゼルの胸部を見ながら聞く。
「どこ見て聞いてんのよ。私は19」
思ったより若いな。
フィリアが18歳って聞いた時も思ったが、こいつらは俺よりも年下らしい。
「若いなー」
「そう? あんたは?」
「25」
「は? 年上? てっきり下かと……」
そんなに若く見えるのかね?
あっちにいた時は童顔と言われたことはないんだが。
「敬語を使ってもいいぞー」
「嫌よ。あんたは私の弟子なんだからあんたが使いなさいよ。私のことは師匠って呼ぶのよ?」
「お前は尊敬できないから無理だなー」
「なんでぇ!?」
てめーのそのでっかい胸に聞いてみろ!
「お前、結婚が嫌だって言ってたよな? そんなに一人が良いん?」
「いや、結婚が嫌なわけじゃないわよ。私が嫁ぐ予定だった男は40オーバーだったの」
うげっ!
ちょーおっさんじゃん。
「そりゃ逃げるわー」
「でしょ? いくらお金持ちで家柄が良くても絶対に嫌よ」
俺もどんな金を持っていようと、40オーバーのおばさんとは結婚できない。
だって、ほぼ母親じゃん。
母親は40ちょいだけどね。
「あんたは? 結婚してる?」
「してるように見えるか?」
「見えないわ」
「詐欺師は詐欺師でも結婚詐欺師じゃねーしな」
俺は悪徳商法の方だし。
「やっぱ詐欺師なんじゃん……ってか、結婚詐欺師って何?」
こっちの世界にはその言葉はないのか。
「結婚するって相手を口説いて、金を借りて、ドロン」
「最悪じゃん! 女の敵じゃん!」
「いや、女の結婚詐欺師の方が多いと思うけどな……」
女が男を騙す方が楽だし。
「どっちみち、最低ね。信じらんない」
「いや、俺はそれじゃねーから。俺は幸福になれるツボを売る方だから」
「何それ!? そんなんがあるの!?」
食いついたし……
こいつ、マジでカモだな……
「いや、そう言って高額で売りつけるインチキだよ。まあ、俺のツボは本物だけど、金に見合ってはない」
1万円の宝くじが当たる程度の幸福を10万円で売りつけるのだ。
「な、なるほどね。さ、最低ね。騙される奴の気が知れないわ」
ヘイゼルは目を泳がせ、誤魔化すように酒を飲んだ。
「お前、マジで今までどうやって生きてきたんだよ……」
「い、言っておくけど、詐欺師なんて初めて見たわよ! そんな奴らは王都とかの都会にいるもんでしょ!」
まあ、騙す人が多い所の方が商売にはなるな。
「安心したまえ。お前に何かを売りつけることはない。むしろ、助けてやる」
「あ、ありがと……」
ヘイゼルはもじもじと感謝の言葉を口に出した。
いや、この言葉を素直に信じるのがすげーわ。
最初と比べて、かなり好感度と共に信用を得たなー。
まあ、実際、騙す気はない。
俺達がこんな感じで酒を飲みながら交流を深めていると、ふいにギルドの扉が開き、知り合いが入ってきた。
ヘイゼルはそいつを視認して嫌そうな顔をする。
「……守銭奴が来たし」
「聞こえてるよー。ポンコツ魔法使い」
ギルドに入ってきたフィリアが笑顔でヘイゼルを見た。
「ぽ、ポンコツ!? 誰が!?」
「お前しかいねーだろ」
あ、口に出ちゃった。
「ちょっと! あんたも師匠である私をポンコツって思ってんの!?」
フィリアを見ていたヘイゼルはものすごい勢いで俺の方を向き、怒鳴ってくる。
「腰が痛いわー」
「あ、ごめんなさい……」
うるさいのはすぐに静かになり、ちびちびと酒を飲みだした。
「よう、フィリア」
「リヒトさん、こんにちは」
フィリアはさっきのヘイゼルに見せていた黒い笑みを消し、普通のかわいい笑顔で挨拶をしてくる。
なお、ポンコツはチラチラと俺達を見ながら酒を飲んでいる。
「仕事?」
「いえ……あのー、ちょっといい?」
フィリアが耳打ちをしてくる。
「何?」
「多分、24時間経ったけど、帰らないの?」
あー、もう2時を過ぎてるあたりか。
充電期間は終えているだろう。
「フィリア、悪い。実は明日もこっちで仕事があるんだよ。結構ヤバめな仕事だから片付けたい」
耳打ちをせずに普通に答える。
「ヤバめ? 大丈夫なの?」
「ヤバいのはこのポンコツ。仕事を手伝う代わりに魔法を教えてもらうんだよ」
「ポンコツ……ドジのヘイゼル……成績は優秀だけど、バカなヘイゼル……」
ヘイゼルが涙目でトラウマを掘り起こしているし……
もうポンコツって言うのはやめておこう。
「そ、そうなんだ。ヘイゼルさんはこのギルドでも有望株だから手伝ってあげるべきだよ!」
ポンコツと言い出したフィリアもさすがに空気を読んだ。
「そうする。また、声をかけるから」
「わかった。あ、それと、最初の500グラムの砂糖なんだけど、商人ギルドもオリバーさんに話を通したよ」
「お! マジ?」
「うん。明日には一括で売却額を受け取れるから渡すよ」
おー!
いくらになるかな?
少なくとも、金貨30枚は超えるだろうし、これで神父様のところに行けるな。
「ちなみに、残りは?」
フィリアには残り10袋の砂糖も渡してある。
「そこは時間がかかる。今は先に渡した500グラムの良さを宣伝しながらオリバーさんと駆け引きをしている。勝負はこれからだよ!」
知ってる?
この子、教会の修道女なんだよ?
絶対に守銭奴って言っちゃダメだよ?
「頼むわ」
気のせいか、フィリアに巻き付いている蛇もご機嫌な気がするわ……
ご機嫌っぽい蛇を良かったねーと思いながら撫でる。
「まーた、肩を撫でるし……まあ、任せといて。じゃあ、明日ね! あ、ヘイゼルさんもお酒の飲みすぎには注意してね」
お前が言うな。
「あんたにだけは言われたくない……」
おっ!
意見が揃った!
というか、フィリアがうわばみなことをヘイゼルも知ってるんだな。
フィリアは俺達に手を振り、そのままギルドを出ていった。
「お前、フィリアと仲が悪いん?」
「別に普通よ。ただ、あの子はお金至上主義だから魔法使いの私とは考え方が合わない」
こいつはフィリアなら絶対にしそうにないミスをするしなー。
「そんなもんかねー? まあ、仲良くやりなー」
「うーん……私って、友達ができにくいんだよねー」
まあ、わからないでもない。
「お前は契約とか金のトラブルに見舞われやすそうだし、そういうのに強いフィリアとは仲良くしとけ」
「なるほどー……ってかさ、あんた、フィリアの蛇が見えるんだね?」
……お前も見えるんかい。
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