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遊頁譚  作者: 劉白雨


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第漆拾壱話 「楽しんで!」


「Have Fun!」

 言葉は巫山戯ていたが、無線の奥から聞こえてくる声は、真剣そのものだった。

「Roger!」

 私は小さな声で応答する。

 まったくなんて巫山戯た符丁だ。いくら作戦行動の符丁とはいえ、巫山戯すぎよ。私はそう思いながらも、着飾ったドレス姿でホテルの入り口の回転扉を押し開ける。

 ロビーを抜け、三階に設けられたパーティ会場の前までエスカレーターで上がってくると、セキュリティーに止められた。あらかじめ用意した偽造IDを提示すると、ボディチェックをされた。金属探知機と同性セキュリティーの二段構えとずいぶん入念である。

 会場はかなり広めで、既に300人程の招待客が思い思いに立食パーティを楽しんでいた。入り口を抜けると、すぐにウェルカムドリンクのシャンパンが渡された。それを笑顔で受け取り礼を言う。

 今回の潜入任務は、大統領暗殺である。この会場に訪れるという大統領は、当然SPも付いて盤石な警備がされるだろうが、私にとっては朝飯前の仕事である。


 パーティにはどこぞの金持ちたちが招待されているのか、メディアやネットで見知った顔もチラホラ見受けられ、其処此処で名刺交換やら、握手大会が繰り広げられていた。

 そんな中で、私は一人浮いていたが、そこへ一人の男が近付いてきた。

「やあ、楽しんでいるかい。」

「ええ、おかげさまで。」

 男を鬱陶しく思いながらも、笑顔で応える。

「そうかい、それは良かった。」

 男は自分が動画配信者の端くれだと名乗り、大統領の宣伝係として招待されたと苦笑していた。私は、自分も似たようなものだと応じて、その場を適当に遣り過ごす。


「皆様お待たせ致しました。本日は我が国の大統領、チェス氏がお見えになっています。チェス大統領どうぞこちらへ。」

 司会者による紹介と共に、チェス大統領と呼ばれた男がスポットライトを浴びながら、会場前方にあるステージに登壇した。

「ただいまご紹介に与りました、チェスです。我が国は今未曾有の危機的状況に置かれ……。」

 チェス大統領の演説が続く中、私は行動に移した。


 だが、その時、先程声を掛けてきた男が、会場を巡回している警備ロボットの一台に声を掛けていた。

 警備ロボットは男の「楽しんで」という声に反応し、体内から銃を取り出したのだった。



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