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遊頁譚  作者: 劉白雨


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第漆拾話 「進んで求めた孤独」


 私は孤独を求めてここに来た。山奥の一軒家だ。

 誰にも邪魔されず独り静かに暮らす、自給自足の生活は私の憧れであった。

 別に都会の喧噪に疲れたとか、人間関係に傷ついたからとか、借金の取り立てから逃げてきたとか、そんなことはなく。あくまでも私自身が望んでこの場所に来たのだ。

 格安で買ったこの場所には、小さな平屋の小屋が建っていた。電気、ガス、水道も完備で、生活には支障がない。その上、裏には川が流れ、鮎や鱒が獲れるし、周囲の森林には山の恵みが採り放題である。小屋の前には、小さな畑あって、必要な野菜は自給自足出来る。今は、田んぼを作り、稲作に挑戦しているところだ。

 こんな山奥に訪問してくるものは、月一度の企業局と電力会社の検針だけである。時折郵便物が届くが、殆どがダイレクトメールで、そのままゴミ箱行きである。郵便配達の人件費とガソリン代を考えたら、もったいない話ではあるが、まあ、彼らの仕事を増やしているのは紛れもなく私である。感謝しこそすれ、文句を言う筋合いのものではない。

 そして、良く訪れるのは野生動物である。目当ては私の畑に成る野菜である。私は敷地に電気柵を設け、野菜泥棒対策にも余念はない。

 招かざる訪問者がいるが、それでも、この山奥での生活は私にとって最高の贅沢であった。不便なことはあっても、必要な物は通販も出来るし、1時間も車を運転すれば、街に降りることは出来る。月に一度ぐらいはこうして街に降りて、必要な物を買い出しする。日曜大工の道具や、野菜の種、米や味噌などの食料品、洋服なども必要があればこの時に購入する。


 そんな山奥で、現金収入はどうしているのかと良く聞かれる。都会に住む人間には想像も付かない生活なのだろう。

 ハッキリ言って、殆ど現金を使う必要はないので、最悪現金収入がなくても、蓄えだけでなんとかなる。だが、そうも言っていられないので、最低限の収入のために、コンピュータグラフィックやプログラミングの仕事を請け負い、細々とした収入を得ている。

 こんな山奥にいても、世界中から仕事が舞い込んでくるので、何も困ることはない。


 今、私は狩猟免許の取得に向けて勉強を続けている。家の周囲に現れる招かざる訪問者を撃退するためである。罠設置の免許はこの地に越してきてすぐに取得した。最近では鹿を捕獲出来るまでに腕が上達した。捕まえた鹿は、お世話になっている村の猟師さんに頼んで解体して貰い、鹿鍋や、鹿ステーキなど、鹿のフルコースを堪能した。


 だが、招かざる訪問者は野生動物の他にもいた。

 山奥で暮らしている人を取材して廻っているテレビクルーだった。

 クルーの一人が私に言った。

「私たちは、本物の孤独を探していたんですよ。」



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