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遊頁譚  作者: 劉白雨


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第陸拾玖話 「まるで真昼の幽霊」


 幽霊、そんなものはいない。私はそう信じている。

 幽霊とは死者の魂が具現化したものだというが、もし、死んでも残る魂があるなら、身体という物理的な入れ物は必要ないだろう。なぜなら、自然というものは、効率によって淘汰されるものだからである。

 力のあるものはその力で食べ物を得るが、力のないものはおこぼれを貰うか、食生活を変える。また水中よりも陸上が効率的だとすれば、そのように身体を変化させ、陸上で生活出来るようにする。それが自然の進化であり、生物の帰結である。

 そう考えれば、物理的な制約が一切ない魂は、おそらく食事を摂る必要も、睡眠を摂る必要もない、究極の効率を追求した存在である。

 であるならば、物理的な身体というものを捨て、魂だけで存在した方が、進化として当然の成り行きではないだろうか。


 私はそう考えている。だからこそ、幽霊など存在しないのだと。

 だが、一つだけ気になる点はある。

 幽霊は、人間には感知出来ないのだそうだ。見えてしまったり、感じてしまうのは、霊感が強い人間、あるいは幽霊の方が現世に未練が強すぎるからなのだという。

 つまり、私が見たことがないのは、そもそも霊感がなく、思いの強い幽霊が周囲に存在しないからなのだと言うことだ。


「だから、言ったでしょ。私は幽霊なんだって。」

「だから、言っただろ。そんなもんは存在しないんだって。」

「だから、ここにいるって言ってるじゃない。」

「だから、見えてる時点でお前は幽霊じゃないって言ってるだろ。」


 もう、ずいぶん不毛な争いを続けていた。私の目の前にいる、自分が幽霊であると主張する女と言い争っていた。

 確かに、顔色も悪く、どことなく影が薄いような気がするが、それだけだ。別にふわふわと空中を飛び回ったり、胸の前で手をだらんとさせている訳でもない。声もしっかり聞こえるし、私と不毛とはいえ言い争いもしている。幽霊であるはずはないのだ。

 そして、なにより、今は真っ昼間である。幽霊が存在して良い時間帯ではないのだ。


「だから、こんな時間に幽霊が出てくる訳ないだろって言ってるんだよ。」

「だから、幽霊は24時間365日、年中無休で存在してるんだよ。」

「だから、それがおかしいだろって話をしているんだよ。」

「だから、おかしくないでしょ、あなたは夜になると存在が消えたりしないでしょ。」


 私は言い争いに夢中になっていたが、ふと、気になって周囲を見渡した。

 私は、周囲から白い目で見られていた。



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