第陸拾伍話 「あなたの童心」
「これが、我々の探し求めていたものなのか。」
俺は目の前にある、5㎝四方の金属で出来た箱を見つめ、溜息を漏らした。
「そうだ、これがそのブツだ。」
男は応え、周囲を警戒するように見渡した。
この小さな部品が重要部品たというのである。
「これを手に入れるのに、どんだけ苦労したか。きっちり払うもんは払って貰うからな。」
男はこれ見よがしにカネを表すジェスチャーをする。
「分かっているさ。これが本物であるなら、カネはもちろん惜しまない。」
俺は声を低く、男に対して頷いた。
「大丈夫だ。出所は間違いない。正真正銘、例の男が作ったものだ。」
男も声を低くした。
「本当か。もし違ったら、お前の命はないと思えよ。」
「分かっているさ。そんなヘマはやらない。絶対にだ。なにせ、俺が直接買い付けてきたんだからな。」
「そうか。そこまで言うなら、お前を信用するが、分かっているよな。」
「ああ、分かっている。この場で確認して貰って構わない。」
俺は、パートナーを呼び寄せた。
「お呼びですか。」
「ああ、このブツを診断してくれ。」
「畏まりました。……、……。これは、ユニットナンバーSP-3987645-Dを模した部品です。内部プログラムにバグやウイルスの類いは見つかりません。正常に動作すると思われます。」
「お前はこれを使いこなせるか。」
「私がですか。私は互換性がありませんので、使用することは出来ません。しかし、あの方なら問題なく使用出来ると考えます。」
「なるほど、あいつか。分かった、それなら、すぐに呼び出してくれないか。」
「畏まりました。少々お待ちください。……、……。今呼び出しを致しました。5分ほどで到着予定とのことです。」
「分かった。ご苦労。下がって良いぞ。」
「畏まりました。またご用があれば、いつでもご用命ください。失礼致します。」
「お待たせしました。ご主人様、何かご用でしょうか。」
最近購入したばかりの最新アンドロイドが、扉を開けて現れた。
「ああ、この童心ユニットを取り付けてみてくれ。」
俺は、そうオーダーした。




