表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
遊頁譚  作者: 劉白雨


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

56/58

第伍拾肆話 「洗いざらい告白すると」


 私は呼び出しを受けた。

 その理由は分かっている。私が長年隠していたあの件について、何かを掴んだから、その真相を問い質そうというのだろう。

 だが、そんなこと簡単に言える訳がない。

 当然である。だからこそ、これまで何年にも亘って隠し通してきたのだから。

 そんな、教えろと言われて、ハイそうですかと教える訳がない。

 たとえば重大な犯罪を犯した犯人が、お前がやっただろと当てずっぽうに刑事が問い質してきたとして、すぐにやりましたなんて白状する訳がない。証拠を詰めに詰められて、逃げられない、言い逃れが出来ない状況になって始めて、自白するものである。

 犯罪者じゃなくても良い。たとえば重大な企業秘密を知っている人物が、他社の人間にお前の所の新技術について教えろよといわれて、ホイホイ教えるようなヤツがいるか?いる訳がないだろう。

 それと同じことだ。


 ここは、ホテルのラウンジにある個室である。

 目の前には、私を呼び出した男と、その秘書とおぼしき女性が座っており、入り口の扉の向こうには屈強な体格をしたボディガードが二人立っているようだった。

 この情況で、私が何も言わずにこの場から逃げ出すことも、はぐらかすことも出来そうにはないが、それでも、私は頑なに答えなかった。

 この男と睨めっこを始めて、既に三時間が経とうしているのだ。部屋には空調の唸る音だけが時折響き渡るだけである。この物音一つない静かな空間で、男と睨めっこを続けるのは、苦痛以外の何ものでもなかった。


「お願いします。あなたにとっても悪い話ではないと思いますよ。洗いざらい話していただければ、私たちはあなたをすぐに解放いたしますし、身の安全は私どもが責任を持ってお守りします。」

 痺れを切らしたように、女性秘書が答えを促す。

「先程から何度も申し上げているように、私は何も知りません。知らないことを話せと言われても、知らないとしか言いようがないのですよ。では、逆に伺います。私は今朝、何を食べたか教えてください。あなたなら答えられるでしょ。知らないことを答えろというあなたなら。」

 私は詭弁を弄して女性秘書を黙らせ、頑なに黙秘を続けた。もしここで暴露してしまったら、おそらく世界が終わるからだ。下手をすると世界中で暴動が起きる可能性もあることを、迂闊に話すなんてことは絶対に出来ないのだ。


 それが、単に人気商品の発売延期が中止となった情報であったとしてもだ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ