表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
遊頁譚  作者: 劉白雨


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

54/55

第伍拾弐話 「知らない恋人たち」


 予定の時間よりも早く着いた。今日は久々のデート。

 ここのところ仕事が忙しくて、デートなんてする時間がなかったから、遠足前の子供のように昨日からワクワクが止まらなかった。美容室に行って髪を整えて、ネイルサロンにも行った。流石にエステに行く時間はなかったけど、今朝は早く起きて、念入りに化粧を施した。気に入ってくれると良いんだけど。


 待ち合わせの場所に彼が現れた。

 駅のホームから降りてくるのがここからでも見えた。彼は私にまだ気付いていない。階段を降りてくる様子、ICカードを翳す仕草、そして私に気付いて駆け寄ってくるその息遣い、もう、私の心臓は飛び出しそうな程にドキドキしていた。

「待たせたかな。」

「うんうん、今来たばかりだから。大丈夫。」

 1時間も前に来たことは内緒で、ちょっとした嘘をつく。

「そう、それなら良かった。じゃ、行こうか。」

 彼のエスコートで、私たちは歩き出す。最初の目的地は水族館。水槽を自由自在に泳ぎ回る魚たちを見て廻り、イルカショーを楽しんだ。イルカが上げる水飛沫から、彼は身体を張って守ってくれた。そんなところもポイントが高い。私にはもったいない男性である。

 水族館を楽しんだ私たちが、次に向かったのは地上200mにある展望フロアーである。ビルの上から眺める摩天楼は、とても美しかった。いつも見慣れたコンクリートのビル群が、まるで私たちのためだけにそこにあるような、世界は私たちのためだけに存在しているような、そんな気持ちにすらなってしまった。


 陽も落ちかけた頃、私たちは彼が予約してくれた高級レストランでディナーと洒落込んだ。私一人では絶対に来られないような、夜景の見える展望レストランだ。

 緊張で料理の味も、彼の顔も、景色もろくに楽しめなかったけど、それでも、私にとっては夢見心地のような時間で、幸福を心の底から噛み締めることが出来た。


 その後は、いよいよホテルへと向かう。

 私も初めてではないし、ここで拒絶するようなことはしたくない。良い女として認められるために用意された、最高の場である。勝負所と言っても良い。

 私にとっては天国にいるような一夜だった。

 彼は私のすべてを受け入れてくれて、私も彼のすべてを受け入れた。

 しかし、彼との素敵な時間はあっという間に終わってしまった。


 帰り道、彼からメールが来た。

 そこには請求書と共に、「デートパックご利用ありがとうございます」とあった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ