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遊頁譚  作者: 劉白雨


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第卅玖話 「社会性を持つ動物」


「月面基地の射撃可能距離は30|アストロノミカルユニット《天文単位》を超えました。これにより、辺境地区に対する遠距離制圧も可能となり、ゲリラ活動をおこなうあらゆる活動家たちを一網打尽にすることも可能となりました。」

「それは、あれかね、長距離から大量破壊兵器を撃ち込むと言うことにならないのか。」

「いいえ、それは解釈の問題です。民間人に対して撃ち込むのであれば、その解釈も成り立つでしょう。しかし、相手は、不法行為をおこなうゲリラであり、武装集団です。兵器を持つからには、こちらからの攻撃を受ける覚悟があると考えて問題ないと思いますし、世論もそのように傾いております。」

「ですが、大量破壊兵器禁止条約に抵触することに変わりはないのではありませんか。」

「それも、問題ありません。なぜなら、この超長距離射撃における破壊可能範囲はピンポイントであり、その範囲は直径1㎞にも至りません。ですから、大量破壊兵器禁止条約には抵触していないと考えます。」

「それは、詭弁ではないのか。破壊範囲があると言うことは、そこが人口密集地であれば大量破壊兵器になりうると言っているようなものだ。」

「それは、あり得ません。人口密集地への攻撃は人道的観点からもおこなうつもりもありませんし、おこなうことは出来ません。むしろ、相手は武装集団に限る訳ですから、攻撃目標に密集している集団は、民間人ではないと言うことが確定している訳です。ですから、範囲攻撃であったとしても、大量破壊兵器には当たらないと考えます。」


 その後も議論は白熱した。

 その議論にはそれぞれの思惑と、主張と、思想と、そして利権が絡んでいた。

 共通の敵。そんなものは、この議論において、何の意味もなしていなかった。

 ただ、武装集団をネタに、自分たちのために何かをしようと躍起だったのだ。

 人類はかつて動物から進化した高等動物のはずだった。文明を持ち、社会を持ち、倫理を持ったはずだった。しかし、今ここで繰り広げられているのは、ただの餌争いである。


 現在太陽系の各地に散らばった人類は1000億を超える人口を有し、繁栄を極めていた。各惑星の地表や衛星軌道にコロニーを築き上げ、コミュニティを構築し、国家を建設し、そして連合していったのだ。

 そうした中で、反体制を掲げる人々が台頭し、武力蜂起を繰り返していた。

 それに対し国際連合は各国の思惑が衝突し、纏まるものも纏まらず、議論にすらなっていなかった。超長距離射撃兵器を開発した国は、これを以て自国の力を誇示しようとしていた。


 これが高度文明のなれの果てだというのなら、我々は本当に進化したのだろうか。

 私は溜息を吐くしかなかった。所詮AIの議論などこんなものなのかと。



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