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省エネ聖女と覚醒勇者は平穏の地をつかむ  作者: ろみ
クノーテ共和国お助け編

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130/135

それぞれのスタンピード防衛戦 1

 白竜とノアが偵察から帰ってきた。

 エスティナの防護柵の内側に白竜がドシーンと降り立ち、白竜の上からノアが身軽に飛び降りた。

 私は今、冒険者の皆さんと防護柵の内側、スタンピード防衛ライン少し後方にて、救護テントに陣取っている。

 私と一緒にルティーナさんとテリーさんも待機してくれている。ルティーナさんは勇ましく短槍を常に放さず持っているけど、テリーさんは簡易竈に大きな寸胴を置いて、良い匂いのするシチューをかき混ぜている。

 私が聖女の力を使ったらすぐに私に食事を出してくれる手はずになっていて、隣近所の宿の料理人さんやおかみさん達も救護テントの傍に集まってくれている。心強い。

 そんな後方陣地にやって来たノアは、上空から見たゴルド大森林の様子をケネスさんに報告する。

「獣の群れはどんどんこちらに向かってきています。あと30分もすれば防護柵に到達するでしょう。私はこちらに到達する前に大型個体を間引いてきます。皆さんは落とし穴の向こうから予定通りに弓矢で応戦してください。落とし穴が埋まればスタンピードの波は防護柵へと到達するでしょう。落とし穴が獣の身体で埋まり切る前に、弓部隊の皆さんは防護柵の内側に避難をしてください。打ち合わせ通りに」

「よし、わかった。第一部隊配置に付け!」

「「「おう!」」」

 ケネスさんの指示に従い、大きな弓を持った冒険者達、十数名ほどが防護柵の出入り口へと向かった。その第一部隊の中にはラッシュも入っている。

「弓の攻撃が終われば次は俺達の出番だ」

 防護柵の出入り口の付近には更に数十名の冒険者達が待機しているのだけど、その全員が縦にも横にも体の幅があり、大きい。そしてそれぞれに大剣、戦斧、鎖鎌など、殺傷能力が高そうな得物をそれぞれ手にしている。体自慢の白兵戦部隊だ。

 その中にはグイードと、いつも宿でお世話になっているスレンダー美女のレジーさんとグラマラス美女のマチルダさんもいて、愛用の得物を手に好戦的な笑みを浮かべている。ちなみにスレンダーなレジーさんは超長い大剣をまるで体の一部のように操る凄腕の冒険者で、マチルダさんは恵まれたフィジカルで男性でも扱いに困るバトルアックスを軽々と振り回す凄腕の冒険者なのである。皆さんめちゃくちゃカッコいい。

 そんなカッコいい第二部隊には、出撃間際に私が支援魔法を行使する事になっている。

 そしてスタンピードを迎え討つ準備が進む中、私はノアに向かって突進した。

「ノア!」

 再び白竜に登ろうとしているノアの腰に私は後ろからタックルした。

「ノア、気を付けてね。ノアが怪我をせずに無事に帰ってきますように」

「カノン」

 ノアがクルリと向きを変えて、正面からギュウと私を抱きしめる。

「もちろんです。あなたが私の帰る場所です」

 ノアが怪我をしないように。ノアがいつもの数倍の力を出せますように。ノアがいつもの数倍速く走れますように。ノアの体力がいつまでも持ちますように。

「おい、カノン。ノアがどんどん人間離れしていくぞ。その辺でやめておけ」

 グイードから止められて私はハッと我に返った。

 ノアには支援魔法を使う予定は無かったんだけど、ついうっかり少しだけ聖女の力を行使してしまった。ノアの全身がほんのりと淡く発光し始めて、私のお腹がギュルルと鳴く。

 ノアは少し抱擁を緩めて、ポーチからギデオンさんから頂いたクッキーの袋を取り出して一枚を私の口元に差し出した。それに私はパクンと齧りつく。見つめ合いながら私一人がクッキーをもしゃもしゃ食べるのは、ほんとにカッコ付かないけどね。ノアはそんな私を見下ろして目を細めてくれるんだから、まあいいかと思う。

 ノアは私にクッキーの大袋を預けてから、再びキュッと緩く抱きしめ直した。

「ではカノン、行ってきます」

「行ってらっしゃい、ノア」

 ノアは私のおでこにキス一つ落とすと、スルスルと白竜の背中に昇って行った。

 そして白竜はノアを乗せて垂直に上昇していく。

 白竜の浮上はとても滑らか。着地はほぼ尻もちでドシーンと落ちるけど、離陸するときはほぼ魔法を使っているっぽい。

 そして白竜は私達の真上でしばらくホバリングをしてから、ギュンとゴルド大森林の奥地に向かって飛んで行ってしまった。

 白竜とノアは、まずは突出して大きい個体を出来る限り間引いて来てくれる。白竜が予告してくれているジガ山脈に巣くうという飛竜たちが襲来したら、その時は白竜とノアは二手に分かれて戦う手筈となっている。

 スタンピードの先頭の勢いを削ぐことは白竜とノアに任せて、第一部隊は防護柵の外へと次々出ていく。第一部隊のリーダーは弓も操るラッシュが務めているんだけど、弓での対応が難しくなればすぐさま後方に下がる予定。

 そして10年前と同じく今回も強力な援軍がエスティナを守りに来てくれている。

「10年前の私とは比べ物にならんぞ。獣どもめ、悉く薙ぎ払ってくれるわ!」

 ビアンカ様を指揮官に戴くグリーンバレー騎士団もエスティナ防衛に参戦してくれているのだ。その数100名。エスティナの冒険、住民を合わせて総勢300名以上が今回の防衛戦に参加する事になった。

 ビアンカ様は穢れを負っていた10年前とは比べ物にならないほどに気力体力が充実していて、10歳どころかまるで20歳も若返ってしまったかのように万全のコンディションなのだそう。始まる前から気合十分に高笑いしているビアンカ様、頼もしい事この上ないなー。

「カノン様、今回の防衛戦にご一緒する事ができて光栄です。我がグリーンバレー騎士団はノア様とカノン様の元、全力を尽くします」

「こちらこそ!よろしくお願いします!」

 わざわざ後方陣地まで挨拶にやって来てくれたのはステファンさんだ。

 獣の姿が見える前から気炎を噴き上げているビアンカ様と一緒に、グリーンバレー騎士団副団長、ステファンさんとその他、見知った騎士さん達も沢山応援に来てくれている。

 そしてグリーンバレー騎士団は血の気が多い方が沢山居るので、エスティナの冒険者達と負けず劣らず不敵な笑みを浮かべて、皆さん今か今かと出撃の合図を待っている。

 支援魔法は装備に差があるのでエスティナの冒険者達に優先して行使するんだけど、救護基地での治癒魔法はもう出し惜しみせずにバンバン使っていくつもりだ。

 本日のビアンカ様は意外にもトレードマークの黒のドレス姿で雄々しく仁王立ちしている。騎士団服で来るのかと思ったんだけど、話を聞くとビアンカ様の黒いドレスは色々と魔法の行使にブーストが掛かる魔術士の能力底上げ機能がついているのだそう。なるほどー。

「魔力が尽きれば今度は騎士達と剣を手に戦うさ。さて、私も行って来るぞ」

「ビアンカ様、行ってらっしゃい!」

 ビアンカ様は私の頭を一揉みすると、悠々と防護柵の外へと歩いていった。

 ビアンカ様はまずエスティナの第一弓部隊と一緒に、エスティナに迫るスタンピードの先頭部分を可能な限り削ぐ役目を負っている。

 そして更に、スタンピード防衛線を有利にするために白竜にお願いして罠も森の中に設置しているのだ。

 それは白竜が掘ってくれた、防護柵に沿って横たわる巨大な落とし穴だ。防護柵は1キロメートル位にも及ぶ長大な物なんだけど、それに沿うように横幅300メートル、深さ30メートル、防護柵の手前から向こう岸までは15メートルもある超巨大落とし穴、もう崖というか谷底と言えるような物を白竜が作ってくれたのだった。

 しかもその落とし穴の底には更に白竜が土魔法で鋭い円錐状に土を隆起させている。最初に落ちた獣達はその円錐状の隆起に体を串刺しにされてしまう事だろう。

 そして落とし穴から大森林に向けて、落とし穴の幅に合わせて100メートル位の範囲の木々を白竜は尻尾でバッサバッサとなぎ倒して脇に避けておいてくれた。

 これはビアンカ様が白竜に直接お願いしていた事で、ビアンカ様が業火炎魔法を連発するので森林火災を防ぐために地ならししておいてくれというお願いに白竜が応えた形なのだった。

 もうノアとビアンカ様は私抜きに白竜とコミュニケーション取っているからね。この2人はもうなんでもありだよ。

 防護柵の手前、落とし穴の前にはビアンカ様専用の櫓が組まれていて、エスティナ冒険者とグリーンバレー騎士団の弓兵部隊を率いるビアンカ様が司令官となって戦場をコントロールしていく事になっている。

 その上指揮官であるビアンカ様はプレイヤーでもあるからね。もうね、全力で好きなように暴れて頂けたらよろしいかと。

「10年前とは全く違うな。士気の高さは変わらないが、今あの時の悲壮感は欠片も無い。本当に、ありがたい事だ・・・」

「湿気っぽいな!ケネス!これからスタンピードを凌ぐんだぜ!終わった気でいるんじゃねえ!」

 私の後方救護基地には、一応私の護衛でケネスさんも下がってくれている。

 10年前を思い返して少ししんみりしていたケネスさんのすぐ横を、可動式のバリスタを元気一杯に押しながらジーンさん達冒険者が通り過ぎて行った。

 ジーンさんは足の怪我の後遺症がすっかり治り、今回も最前線でバリスタを打ちまくる主力になっているのだ。血気盛んに防護柵の向こうに移動していったジーンさん達を見て、ケネスさんは滲んだ涙を拭いながら笑った。

「はは!お前ら!今度のスタンピードも誰一人欠ける事無く防ぎきるぞ!」

「「おう!!!」」

 冒険者も騎士も無く、その場にいた全員がケネスさんの檄に応えた時、防護柵の向こうの空がオレンジ色に輝いた。一瞬遅れでゴウという轟音とともに暖かい風が勢いよく防護柵の内側を走り回った。

 それはビアンカ様のスタンピード戦開戦の合図だった。



しれっとタイトルを変えております。

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