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省エネ聖女と覚醒勇者は平穏の地をつかむ  作者: ろみ
クノーテ共和国お助け編

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【閑話】なんて素敵なジャガイモ料理~異世界聖女風、雪だるまを添えて~ 後編

 マルコ様の質問への返答に窮する私。

 無言になる私の前で、怪訝そうにこちらを見ている雪だるま製作チーム。

「我がアストン王国にはこのような2頭身の化け物は居ない。カノンの世界にはこのような物が居たのか?」

 私が1人パニクっている中、サージェ先生がズバッと化け物って言っちゃった。その発言を受けて、ギデオンさんが不安そうに私の反応を待っている。この状況でこんな化け物は私も知らないなんて口が裂けても言えないぞ。そうなったら、思い詰めがちのギデオンさんは責任をもって退役しますとか言いかねない。

「・・・そうです!」

 ここはもう、ギデオンさんの造作で正解にしとこう。

 そうです!これが雪だるまです!

「ふむ。聖女カノンの世界では、このような恐ろし気な物を作ってどのように楽しむのかな?」

 うぐう。この勢いで乗り切ろうと思ったら、クノーディア都長から更に嫌な質問をされる。

 そうだよね、楽しいことは無いのかと言われて、私は自信満々でこの雪だるま作りを始めたのだから。

「・・・こ、これだけじゃありません!」

 く、苦しい。でも、何か、何か無いか。

 頑張れ、捻り出せ!

「私の元居た世界では、雪国でこのような雪だるまを沢山作ります。そして、えーと、ギデオンさんのように造形が得意な人も沢山居て、その雪だるまを一冬眺めて楽しむんです。雪だるまは家の敷地内に作る事が多いです」

「・・・・魔除けのようなものだろうか」

「そんな感じでもあります!」

 もうここに居る人達は何が正解かなんてわからないんだから、勝手に良い様に解釈してもらおう。

「カノン見てごらん。可愛くできたよ」

「わ、凄い。上手ですね」

 私が苦しい立場に立たされ続けている中、マルコ様はマイペースにその辺の雪を手に取り手乗りサイズの小鳥を作っていた。ティースプーンで器用に彫刻されていて、温室にいた小鳥にとても良く似ていて可愛らしかった。

 そして私はその雪の小鳥を見てあるイベントを思い出した。

「この雪だるまは各家庭で作られるものですが、冬の大きな催しとしては色んなチーム対抗で雪像を作って会場に展示して、その会場への来場者の投票により優秀作品を決める雪祭りが開かれます。この雪祭りはとっても人気があって、外国からお客さんも観光旅行にたくさん来るんです」

「ほう」

 私の説明にクノーディア都長が興味を示した。

 私が言っているのは、某でっかい道の雪祭りの事だ。苦し紛れの発言だったけど、口に出してみたら案外悪くないんじゃない?と思えてきた。よし、そう思い込んで突き進め、自分。

「雪像制作チームは行政だったり、大きな会社だったり、個人参加だったり自由なんです。ですが、鑑賞に堪えうる一定レベル以上の作品がお祭りの参加条件になります。マルコ様位上手に作れるんなら、軍からも雪像制作チームを出せるかもしれないですね。もしクノーディアで雪祭りをやるんなら、アストン王国の貴族の人達が珍しがって観光にやって来るかもしれません。アストン王国には雪が降りませんから、雪景色だけでも楽しんで観光が出来そうですが、雪像祭りがあるならその時期を目指して観光客がやってくるかもしれないですね」

 ほーんとでっかい道のお祭り丸パクリだけどね。でも悪くないよね。

 クノーディアとしては有り余る雪を使って作る雪像を設置する会場を作れば、それを見物に観光客が首都に集まってきて、お金をたくさん落としてくれるかもしれない。あとクノーディアの魚介と乳製品を使った料理も凄く美味しいし、食べ物も観光客に喜ばれるだろう。

「チーム対抗戦には各五大都市からも代表チームを出してもらったらいいですよ。そしたら会場には簡易のテナントを作って、各市の名物品の物産館を特設して、各市の宣伝をしたらどうでしょう。真冬の旅は首都止まりになるかもしれないですけど、真夏ならゼノーやルクシルまで目当ての特産品を求めて旅をするのも楽しそうですね。アストン王国は海に面した領地が少なくて内地では新鮮な魚介類は食べられないから、ダンティシジアへ海鮮食い倒れツアーをしに行くのも楽しそう。オルランドが将来的に陶器や陶磁器の名産地になったら、一年中アストン王国から貴族や商会が買い付けに来るでしょうね。定期的に陶器や陶磁器の掘り出し物市とか開催したらどうでしょう。共和国は五大都市にそれぞれ特徴を持たせられたら、とっても魅力的な観光大国になると思います」

「なんと、なんという素晴らしい発想だ!聖女カノンは経済学にも精通しているのかな?是非高等学院で一度講演をしていただきたいが」

「いやいやいや、私の発想と知識は元の世界では当たり前の一般知識です。実現可能かどうかも考えずに思い付きで話しているだけですから、参考程度でお願いします」

 私が見たかったり参加したい催し物を妄想のままに語りまくってしまったな。素人の意見でしかないので、クノーディア都長からの要請は丁重にお断りさせて頂く。そんな、私の数倍頭がいい教師や生徒たちの前でなんて、緊張して何にも喋れないに決まっとる。

 でもいつか落ち着いたら、クノーテ共和国を旅してまわってみたいなあ。それ以前に、アストン王国内だってエスティナの外はグリーンバレーと王都しか知らないからね。アストン王国の移動はこれまで馬か馬車だったから、馬車で一週間とか言われるとおいそれと遠出出来ないと言う事情もあった。

 でも今は白竜便があるからね。

 もしお願いして白竜がOKしてくれたら、この大陸を旅してまわるのも良いかもねえ。あ、でもあくまでも私の帰る場所はエスティナだ。帰る場所があるからこそ、旅は楽しい物なんだよね。

「皆さん、いつかアストン王国にも是非お越しください。アストン王国は温暖で冬でも雪が降らないんですよ。果物が民家の庭先に勝手に実るような豊かな南国なので、風景が共和国とは全く違って楽しいと思います。春か秋が気候的には暑すぎなくて良いかもしれません」

「勝手に果物が実るなど、まるで聖伝に謳われる神の庭のようではないか」

「是非死ぬ前に一度、アストン王国を訪ねてみたいものだ」

「それこそ今度は共和国からアストン王国へ使節団を派遣してくれたら良い。我が国はいつでも歓迎するぞ」

 市長さん達とサージェ先生が今後の交流についての話を具体的にし始めた。

 私の妄想爆発の思い付きから、何となく良い感じにWinWinで経済回してこーぜ!的な話に着地できたのではなかろうか。

 やれやれ、ギデオンさんの思いがけない芸術的センスに一時はどうなる事かと思ったー。



 みんなお腹も一杯になり、様々な意見交換がされ、文化交流の予定も立てられた。

 両国にとって非常に有意義な集まりとなったと思う。

 最後に皆さんへのお土産に、アストン王国から大量に持ち込んだフレッシュパルンカを好きなだけお持ち帰り頂いた。

 ちなみに砦の皆さんへのお土産はヴィゴ閣下が一足先に持っていってくれている。迎賓館で回復した軍人さん達と蒸気機関車に乗って、辺境の砦にヴィゴ閣下は既に移動してしまった。前回の少量のフレッシュパルンカを砦の軍人さん達はとても喜んでくれたけど、今度は大量のフレッシュパルンカに加えて戦線を離脱していた仲間達がヴィゴ閣下と一緒に砦に戻るのだ。砦の軍人さん達にとっては同志達の戦線復帰が何よりのお土産だろうなあ。

 一抹の寂しさと共にヴィゴ閣下のお見送りをしたのだけど、各市長さんとも今日でしばらくのお別れだ。

 それぞれの市長さんと、いつか各都市を訪ねると約束をしてその日はお開きとなった。

 そしてマルコ様もギデオンさん達親衛隊の方々と大量のパルンカを持ち、お隣の軍本部へと引き上げていった。

 昼過ぎからの雪だるま作りで、長時間外ではしゃいでしまったので、私達アストン王国チームはサロンにいったん戻り暖かいお茶を頂く事にした。

「カノン。お前、ギデオンに気を使って嘘を付いただろう。本当の雪だるまとはどのような物だったのだ」

 お茶を飲みながらの雑談をしていたんだけど、ビアンカ様の発言にサージェ先生が笑い、ノアは目を細めて優しい顔でこちらを見る。

 あんなに挙動不審だったんだもん。そりゃあ、私が嘘をついてジタバタしていた事はバレるわな。

「えーと、ですね。ほんとは可愛いんです。こんな感じで」

 私はお給仕で傍に控えてくれていた従業員さんに紙とペンを持ってきてもらい、さらさらとTHE雪だるま的なイラストを描いた。

 そしてサロンは爆笑の渦に包まれた。神とペンを持ってきてくれた従業員さんまで笑いをこらえている。あ、この方、私が寒くないように着替えを手伝ってくれて、中庭のテーブルの傍にずっと控えててくれた方だ。寒い中長時間、お世話になりました。

 サージェ先生とビアンカ様はお腹を抱えて笑っているし、ノアも俯いて小刻みに震えている。

「あーはっはっは!全然似ても似つかねえじゃねーか!」

「サージェ先生、仕方が無いんですよ。私がきちんとギデオンさんに雪だるまの顔を伝えなかったんですもん」

 そうなんだよ。雪だるまがどんな顔をしているのかを全くギデオンさんに伝えてなかった事を、私は今更ながらに思い出した。雪だるまなんて日本人には共通概念過ぎて、どんな顔なのかなんて伝える発想が私に無かったよね。

 そしてノーヒントで雪だるまの顔作りを言い渡されたギデオンさんにとっては良い無茶ぶりだっただろう。ギデオンさん、私にどんな顔か聞いてくれても良かったのにな。でも当の私が、雪だるまの顔なんてわかっていて当然ですよね、って態度だったかもしれない。うーん、聖女ハラスメントをまたもカマしてしまったのだろうか。

 逆にギデオンさん、全く情報が無いのに顔を書けという指示だけでよくあそこまで頑張ったよ。でもまさか2頭身のデフォルメ体型にあんなにリアルな魔獣のような顔を持って来るとは、ギデオンさんのセンスは独特なんじゃ。私もめっちゃビックリした。

 私、ノアとは雪だるまを可愛くするぞ!ってな話をしていて、その会話はギデオンさんの隣でしてたんだけどな。ギデオンさんの可愛いの概念・・・。

 それかこの世界にはイラスト的なデフォルメ絵という物がないのかなー。そうなると、逆に将来開催されるかもしれないクノーディア雪祭りが俄然楽しみになって来た。

 でっかい道の雪祭りは、最近はマンガやアニメ、ゆるキャラ的な物を扱った可愛い系の作品が多いけど、このクノーディアでは写実的な見応えのある雪像が沢山みられるのかもしれない。

 いつか本当に実現したらいいな、クノーディア雪祭り。

「この事はギデオンさんには内緒ですからね!一生懸命雪だるまの顔を作ってくれたんですから!皆さんも!内緒ですからね!」

 サロンではアストン王国チームはもちろん、従業員の皆さんも堪え切れずに笑い始めてしまった。もー、ほんとに内緒だからね!

 しかし、ジャガイモの試食会の後に雪だるま作りをする流れになるなんて最高だった。

 まあ自分で言い出したんだけどさ。皆さんが私の思い付きを凄い凄いと褒めてくれるので、今ならヤレルか?!と思い切って言い出したらヤレた。

 けれど、あの時は私の言う事を何でも聞いてくれそうな雰囲気だったから、聖女としての立場と権力を使ってしまったかもしれない。聖女の権力を使って雪だるまを作る・・・。いや、私一人でも全然作れるんだけどさー。

 まあともかく、ちょっと自分の欲望を押さえきれなかったよねー。そして今後は聖女ハラスメントを発動しないように気を付けていこう。聖女のお願いだと周囲が何でも聞いてくれるという怖さも今回分かったからなー。

 だって、自分より二回りも年上のオジ様方に雪だるまを作らせるって、普通あり得る?自分、正気の沙汰じゃなかったな。テンション上がりすぎちゃった。

 後でギデオンさん達には謝っておこう。この点だけは反省します。

 でもお陰様で私がクノーテ共和国でやりたい事を全て出来た。色々途中経過はどうかと思う所もあったけど、概ね私は満足した。

「カノン、楽しかったですか?」

「うん!すっごく楽しかったー!」

 ノアもビアンカ様もサージェ先生もみんな笑顔。部屋の中で控えてくれている従業員さん達もみんなニッコリしている。かくいう私も、鏡を見なくても自分が笑っていると分かる。

 そんな楽しい冬の1日だった。


次回から本編に戻ります(^-^)

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