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省エネ聖女と覚醒勇者は平穏の地をつかむ  作者: ろみ
クノーテ共和国お助け編

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【閑話】なんて素敵なジャガイモ料理~異世界聖女風、雪だるまを添えて~ 中編

 そしてお腹も満腹になり、食後のコーヒーが皆さんの前に置かれる。

 はあ、疲れたけど、私もじゃがバター食べられて満足。芋も美味しいけどバターがめちゃくちゃ美味しかったー。満腹過ぎてコーヒーは飲めるけど、スイーツはもう無理。残念だけど今は食べられん。

 ほとんどの方が満腹なお腹をフウフウと擦っている中、スイーツは別腹とばかりに変わらぬスピードで手を動かすビアンカ様とゼノー市長はさすがだった。あー、チョコレートケーキは夜に食べますので取って置いて下さい。

「しかしジャガイモがあれほど多彩な料理に化けるとはね。カノンの元居た世界は美食文化が発展していたんだね。全ての料理の食材が共和国で手に入る物な所がまた素晴らしい。カノン、これなら家庭でも手軽に作れそうだね」

「えへへ、そうなんです。共和国は魚介類も乳製品も国内で手に入るので、国内の食材だけでも美味しい物が沢山作れますよ。皆さん、良かったらレシピを持って帰ってくださいね」

 さすがマルコ様、分かってくれてるうー。

 国内で手に入る物だけで作れる料理を意識して今回は作ったんだよね。ちなみにこのレシピは私が料理法と味付けを何となーく料理長に伝えて、厨房の料理人の皆さんで完成させた迎賓館レシピである。間違っても聖女のレシピではない。私のあやふやな知識と記憶だけでこれだけの料理を完成させるんだから、プロってすごいなー。

「なるほど。このような芋料理であれば、パンが無くとも満足できるな。ゼノーで更に根菜類の栽培に力を入れる事を考えよう」

「ルクシルにも開けた土地があれば良いのだが・・・。我が市は山ばかりで、農作物の栽培地自体が確保できないのだ。地中深くに根を張る針葉樹林帯を開墾するには、数十年の月日を要するだろうからな。だが、このレシピを貰えるだけでありがたい・・・」

 ゼノー市長が根菜類の栽培に意欲を見せている隣で、ルクシル市長がショボンと肩を落としていた。

「ルクシル市長。ルクシルで作っている木のカップ。あれ素敵だと思いますよ。木の食器が他にもあるならお土産に沢山欲しいです」

 ルクシル市長、そんなにしょんぼりしないで欲しい。

 私が幼児退行中に使わせてもらった木の食器の数々。あれ、とっても可愛かった。ちょっと小振りで軽いのがとっても良い。子供にもいいし、握力が弱くなったお年寄りにも良くない?手元が狂って落としてしまっても割れないし、漆で塗装されているから水にも強いし。

 後は、私が暮らすエスティナの食器事情のお話もさせてもらった。エスティナでは木の食器を主に使うんだけど、柔らかい白木の食器だから1、2年で表面が毛羽立ってくるし、衛生面も心配になってくる。温暖湿潤のエスティナでは、夏場の木の食器はかなりやばいんじゃないかと実は思っていた。食中毒的な問題で。実際に食材や料理自体が夏場はあっという間に痛むし、木の食器をしっかり乾燥させる事も夏場は難しい。

 でも漆でコーティングされたルクシルの木の食器なら、この衛生面の問題がかなり改善されるんじゃないかな。あと、高級志向の方々には固い木材で薄手の木の食器とか作ったらどうかな。陶磁器に慣れた方々にはかえってオシャレにみえないかな。木のサラダボールとか、前の世界では陶器のお皿よりもバカ高かったけどな。

 そんな話をさせてもらったら、ルクシル市長が元気を取り戻してくれた。

「ありがとう、聖女カノン。もし、アストン王国への輸出ルートができるのなら、ルクシルとしてはとても助かる。木工工芸品は家具や彫刻品ばかりを作っていたが、木の食器類を今後は充実させてみよう。食器なら家具よりも運搬が楽だしな。取り急ぎ首都で手に入る物になるが、聖女カノンにはルクシルの木のカップを贈らせてもらうよ」

「わあー、こちらこそありがとうございます!エスティナに持って帰りたいと思ってたんです!」

 よーし、欲しかった木のカップゲットだぜー。

 気持ちが上向いたルクシル市長にホッとした所だったんだけど、ルクシル市長の隣のオルランド市長が今度はしょんぼりと肩を落としている。今度はなんだなんだ。

「ゼノーもルクシルも、聖女の知識の恩恵を受けられて何よりだ。我がオルランドは粘土質の平地が広がるだけで、もともと農地には向かず、木工品を作るための木材も無い。さてこれから、どうしたものかな・・・」

 粘土・・・。

「じゃあ、オルランドではアストン王国庶民向けに粘土質の土を使って陶器を作りましょう。陶器は庶民向けの路線で。アストン王国の庶民向けの陶器の市場は絶対に大きいですよ!なんせ王都以外の殆どの国民が素朴な木の器を使っていますから。普段使いの陶器は数年で痛むでしょうから、安定した販路を作れるんじゃないですかね。ルクシルの木の食器とは庶民向けか貴族向けかで住み分けすれば問題無いかと。粘土質がどんな感じか分かりませんが、もし陶磁器が作れるならアストン王国の貴族にも売れるかもしれません。こればっかりはやってみて、市場の反応を見ながらでしょうけど」

「なんと」

 オルランド市長が目を丸くしている。

 実現できるかは分からないけど、たしか陶器や陶磁器って粘土から作る筈。

「配合とか塗り薬とか焼き方はさっぱり分からないので、クノーディア高等学院の学者さんが研究したら良いと思います」

「なんと」

 そして私の思い付きの発言で、クノーディア都長に流れ弾が当たる。

 でもクノーディアとオルランドが共同研究をして、新たな産業を起こす事が出来たらいいよね。新しい事への挑戦って、無条件でワクワクするじゃんねー。

「ははは、これはなんとも。次から次へと思いもよらない発想が溢れてくる。カノンは知識の泉だね。我が共和国の未来がとても明るくなったような気がするよ」

「いえいえ、そんなー」

 マルコ様、褒め過ぎですってー。

 聖女の知識も何も、元の世界ではただの一般知識ですので。私の知識なんて、便利な物の使い方は知っているけど、作り方は知らないと言う程度の役に立たなさなのだよ。現に陶器の件はクノーディア都長に丸投げしたしね。

「聖女カノン。今回はサージェ殿の話を聞くので手一杯だったが、私はあなたの元の世界の話も聞きたかったのだ。他に何か我が国でも出来るような面白い事はないだろうか」

 そして私に面倒事を丸投げされたクノーディア都長は、特に困った様子もなく目をキラキラとさせ、更に私に元の世界の話を求めて来た。知識欲の塊のような方だもんね。

 しかしそうか。そこまで言われては、私もご期待に応えるしかないだろう。

「・・・・面白い事、あります。でも、それをお見せするには皆さんの協力が必要です。手伝っていただけますか?」

 私は気持ちを引き締めて立ち上がる。

 ジャガイモ試食会兼市長さん達お別れ会に御集りの皆さんが、一斉に私に注目した。

「マルコ様、ギデオンさんに手伝ってもらってもいいですか?」

「いいとも」

 マルコ様は軽くOKしてくれたけど、共和国軍中将閣下のギデオンさんの力を借りる話になり、市長さん達は何が始まるのかと瞠目した。

 マルコ様の後ろに控えるギデオンさん達親衛隊の皆さんの表情も、キリリと凛々しいものになる。

 必要なんです、今こそ此処で、ギデオンさん達の力が!



「そうそう、ギデオンさん上手です。そのまま真っ直ぐ。あー、ノア。ちょっと向き変えようか。形が歪になってきちゃった。まん丸になる様にしてね」

「御意に」

「わかりました」

 私達が食事をしていた広めのサロンから眺めることが出来る中庭に、今私とノア、ギデオンさん、あと数人の衛兵さん達が降り立っている。

 今日は冬の晴れ間、太陽が燦燦と降り注ぎ、昨日降った雪に反射して辺り一面が輝く銀世界となっている。昨日の積雪は20センチ程。多過ぎず少な過ぎず、まさに絶好のコンディションだ。

 皆さんの力を借りると言ったけど、ご老体の市長さん達に無茶をさせるつもりは無い。

 マルコさんと市長さん達、そしてサージェ先生とビアンカ様には2階の暖かいサロンから高みの見物をしていただいている。

 雪が降った後のこんないいお天気の日は、雪だるまを作るしかないだろう!

 冬休みにおばあちゃん家に行くと、ほぼ必ず雪だるまを作ってたもんな。

 雪国にやって来て、こんなにたくさんの雪を目にして、私は雪だるまを作らずしてエスティナに帰れないと思っていたのだ!いつか隙を見て作ってやろうと思っていた念願が今日この時叶いました。

 ノアはもちろん、ギデオンさんも親衛隊のお2人も私の指示に従い黙々と雪玉を作ってくれている。成人男性2人掛かりで転がす雪玉は凄い大きさに育ちつつある。私一人で作る雪玉の、3・・・、4倍位はあるんじゃないの?!凄い!

 ちなみに私も腕まくりをする勢いで雪だるま作りに参戦しようとしていたのだけど、過保護なノアにそこは止められた。屋外作業に慣れている軍人ならともかく、体を鍛えていない婦女子の私が氷点下の屋外で雪に触り続ける事は絶対駄目だと言われてしまった。

 えー、辺境の砦辺りより全然暖かいから大丈夫だと思うんだけどな。

 でも私がここで風邪をひいてしまっては周囲に多大な迷惑を掛ける事は想像に難くない。なので、ここはノアの言う事を聞いて大人しくしておく。

 そしてノアの指示の元、私は中庭の一角にテーブルとイスと、温室で使っていた小型のストーブが設置された監督席を用意されてしまった。

 そして私の防寒対策としては、もちろん帽子からブーツまで全てが毛皮の防寒着を着用のうえ、分厚いひざ掛けで下半身もグルグル巻きになって蜂蜜湯のカップを持たされている。こちらはノアの指示ではなく、敏腕な迎賓館の従業員の皆さんの仕業である。従業員さん達の物凄いチームワークであっという間にこのような姿に。

 そうです、私こそが雪だるまです、と言った感じにされてしまったのだけど、私は監督席から偉そうにノア達に指示を飛ばすのだった。

 うーん、ギデオンさんチームの雪玉とノアチームの雪玉、それぞれいい感じに育ってきたかな。直系1.5メートルって感じ。これ以上大きくなったら体の上に頭を乗せられなくなりそう。

「はい、ストップー!んー、ノアの方の雪玉をギデオンさんの方の雪玉にのっけて下さーい」

 私の指示に4人の男性がよいしょと一致団結して雪だるまの頭を体の上に乗せた。

 雪だるまの形が出来た。

「カノン、完成ですか?」

「まだまだ!これから可愛くするんだよ!」

 赤いバケツなんて、無いだろうなー。厨房の鉄盥でいいか。あと炭があれば良いかな。鼻はニンジンで。

 まずは迎賓館の従業員さんに盥と炭を持ってきていただく。そして男性陣4人の中で1番絵心があるというギデオンさんに雪だるまの顔を書いてもらい、ノアには雪だるまの帽子として鉄盥を雪だるまの頭に被せてもらった。

「できっ・・・、た・・・」

「ほう・・・。アストン王国の魔獣かな?」

「・・・・・」

 私はマルコ様の質問に押し黙る。

 完成間近とみてサロンから中庭を見物していた皆さんが、続々と私の周りに集まってきてくれていた。

 ギデオンさん、とっても絵心があると言うか芸術家肌の方だった。

 出来上がった雪だるまは、鉄盥を頭にかぶり、尖ったニンジンの鼻を持ち、立体的に盛り上がった鼻と口、つり上がった目を持っていた。つり上がった三角の目は全て炭で真っ黒に塗り潰されて白目も無い。口だけをみれば笑顔の形に見えなくも無いけど、雪だるまの口の中にはギザギザの歯がびっしりと生えていて、歯は白いけど口の中は目と同様に炭で真っ黒に塗り潰されている。

 胴体はまん丸でシンプルな雪玉なのに、顔の造作が魔獣寄りに妙にリアル。ぶっちゃけ怖い。これでは子供が見たら泣き出すに違いない。

 楽しく作り始めた雪だるまは、私自身も驚きの方向へと仕上がってしまった。


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