二十二
そして僕は全てを話した。
K岡にゲームのチャットで告白されて付き合ったこと、絶対にそのことを口外しないという約束をしたこと、それを彼女が破ったこと、親にまで広まってしまったこと、案の定いじられたこと、修学旅行で彼女に「嫌いだ」と言ったこと、そしてその後の事も。
どんな反応をされるのか、僕は涙を袖で擦りながら待っていた。
「……そうだね。難しいよね。」
S野先生は静かに呟いた。その言葉に僕は、食って掛かるように言う。
「難しいって……難しいって何です?この年頃だから?テキトーな言葉でごまかさないで下さいよ!」
「二宮君、君は分かってますよ。何が難しいのか。」
優しい声でそう言われ、僕は一旦冷静になる。そして考える。
「難しい……恋愛が?」
「いやいや、もっとその前の段階の話だよ。」
前の段階、それを聞いて、僕とK岡の付き合う前の段階を思い出した。
「友人関係……?」
「つまり?」
そこまで言われて、僕はやっと答えを出すことが出来た。
「………人間関係。」
「そうだね。」
S野先生は満足したようにうなずく。僕はまた頭を働かせながら、心をゆっくりと溶かすように独白を始めた。
「……人間関係は……本当に難しいです。Y下に女心が分かってないって言われて…そもそも誰も他人の心なんて分かんないだろ……って。でも、それは恋愛に限らずに、友人関係でもありました…」
僕は言葉を止めない。
「N村が付き合った時、あいつ、幸せだって言ってました。でも、僕にはその気持ちが理解できなくて。S木とかT村とか、そういう人たちの言う意見に形だけは同調できても、心では受け入れられなかったんです。」
「そうだね。それが人間関係だよ。嫌だ好きだがあって当然。自分が気が合うなんて思っていても、相手は合わないと思っているかもしれない。そこに良い悪いなんて無いんだよ。」
S野先生の言葉に、僕は吹き出そうになる涙をこらえながら言う。
「でも……僕からしたらK岡は悪者なんです……合う合わないとかじゃなくて、相手の事を考えずに自分勝手に行動するあいつの事が、どこまでも嫌いなんですよ。」
「それでいいじゃないか。世界は自分が見て受け取るものでしかない。自分から見て悪者なら、K岡さんが悪者でいいじゃない。皆さん、自分の中で勝手にバイアスをかけて周囲を見ているものだから。」
Sの先生はそこまで言うと立ち上がった。
「世界を複雑に捉える必要は無いんだよ。皆案外単純で、こうして悩んだりはしない。でもまたこうして悩むことがあれば、気軽に私に相談してね。」
そう言って、彼は生徒指導室から出て行った。
一人になって、考える時間が出来た。
でももう僕は、無駄に考えることをやめた。




