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05

 俺たちが受けたウルフの毛皮の納品を済ませた後も、手頃な依頼を片っ端から受け続けている。

 数日で終わる依頼から、長くて二週間以内までの依頼に絞ってだ。


 報告の為に学園に戻る機会があるのだが、時々会う他のパーティーも明暗が分かれてきている。

 ギスギスしているパーティーや、難易度を上げるか相談しているパーティー、一発逆転を狙うパーティー等、それぞれの思惑が見え隠れする。


 俺たちには必要ないが、一発逆転の依頼として、海龍の鱗の納品というものが追加されていた。


 夏に差し掛かっているという事もあり、涼しそうな海の依頼をと思ってネタで提案してみたら、そももそ海龍という存在は、ここ数百年確認されていないそうだ。


 なぜそんな依頼が張り出されているのかというと、依頼を見極める目を養うためのダミーだろうという事だった。

 さらに、移動に時間が掛るというのもネックなので、海の依頼は完全に受けるつもりはないらしい。


 残念だ。


 海と言ったら……海産物だ。

 そう、海産物。

 非常に残念だ。

 海産物食べたかったなー……。


 クッソ!



 そろそろ前期が終わろうとしている。


 商人ギルドから新規の依頼がこなくなっている。

 次に受ける依頼が最後になりそうだ。


「結局最初のトレントが俺たちに向いてたというか、おいしい依頼だったな」

「そうなるわね。残ってるので比較的マシなのは……」

「最後の追い込みも考えるならコレとか?」


 ミリーリアが指差したのは、初期からある月光草の納品という依頼だ。


 月の光が良く当たる崖に群生しているが、崖というのがネックになる依頼だ。


「長い間放置されたら、依頼主さんも困ると思うんだ」


 なるほど。

 今回は商人ギルドからの依頼なので、緊急性はないだろう。

 だが、卒業後、冒険者として活動していくときに、そういう考えで依頼を受けるというのも大切な事なのかもしれない。


「アラタが良いって言うなら受けてもいいわよ?」

「俺?」

「崖から採取するのはアラタよ?」


 え? 決定事項?


「キーゼの風魔法で、落下しても致命傷にはならないわよね?」


 キーゼが加わってから、いくつか依頼を受けている。

 依頼をこなす度に、俺たちは精霊魔法の理解度が上がっている。


 俺も、キーゼの風の力を借りて、移動速度、金棒による打撃力などが上がっている。


「そりゃ出来るだろうけどさ。落ちたら最悪死──」


 死なないんだった。

 俺が適任か。


「セッちゃん何言ってるの。当然みんなで挑戦するに決まってるじゃん!」

「冗談よ、冗談。アラタ一人に任せるような依頼なんて受ける訳ないじゃない」


 何だ、冗談だったのか。

 別に悪い選択肢ではないと思ったんだけどな。


「現場を見て、危ないようだったら俺が採取担当で、二人は護衛でもいいぞ? 月の光を長時間浴びるような環境って事は、遮蔽物もないだろうし、外敵が怖いのは確かだからな」

「そこはアタシの索敵を信用してもらってもいいのよ?」

「まだ痛いの痛いの飛んでいけは上手く飛ばせないから、私はきっと登る事になると思うんだ」


 そんな話し合いをしながら、ヘッグ先生に月光草の納品の依頼を受ける事を伝えに向かった。



「おう、正直助かる。望むなら土魔法で疑似的な崖は作れるように手配するぞ。有料だけどな」


 俺たちがこの依頼を受ける事を伝えると、訓練所に練習施設を作ってくれるという提案を受けた。

 ぶっつけ本番よりも、遥かにマシなのでお願いする。


「手配とかあるから、明日の昼以降になるぞ」


 そういう事なら、今日は必要になりそうな道具を準備するとしよう。



 俺たちは二日間、疑似的なロッククライミングの練習を行った。

 速度よりも、安全性を確保する練習だ。


 出発を翌日に控え、ベッドに横になっていると、突然天井に火の玉が現れた。


「【お久しぶりです。この子から相談を受けたのでお邪魔しました】」


 カガリビさんだ。

 精霊にプライバシーの概念は無いのだろうか。


「【カガリビさんお久しぶりです。ここに居るって事は、ナールルも学園に?】」

「【はい。今日到着しました。そんな事より──】」


 カガリビさんはキーゼから、俺がよそよそしい、自分は馴染めていないんじゃないかという相談を受けたそうだ。

 どうしてそう思ったのか。


 ミリーリアとセレイナには戦闘中に、例えば『援護くれ!』のように頼んでいるが、キーゼには『やってくれないか?』という形で精霊魔法を使ってもらっている。

 この微妙なミュアンスの違いを、キーゼは気にしているようだ。


「【そうは言いましても、あの話を聞いてますし……】」


 エルフが精霊魔法を使う時の詠唱が、命令に変わっていったという話を聞いている。

 キーゼに対してそうならないように、普段から気を付けているのだが、それが良くなかったようだ。


「【考え過ぎです】」


 バッサリと斬られた。


「【そうでしたか……。すまんかったなキーゼ。別に距離を取ってるとかじゃないんだ。そこはわかってくれ】」


 わかってくれたのか、俺の肩の上で勢いよく跳ねるキーゼ。


「【良い関係のようでなによりです。では私はこれで】」


 カガリビさんの姿が見えなくなった。


 精霊って自由過ぎないか……。

 キーゼは気配りの出来る子に育ってもらいたいものだ。



 月光草が群生しているという崖に到着した。

 

 学園で練習に使った崖なんて可愛いものだ。

 根本的に高さが違う。


「これは想像以上に高いねー」

「ホントね。現場を目にすると少し尻込みするわね」


 これ、落ちたら死ぬ高さだ。


 いくらミリーリアとセレイナの二人にやる気があっても、万が一を考えると俺一人で登るのが正解だろう。


 長い話し合いの末、何とか俺一人で登る許可を得る事が出来た。



 ゆっくりとだが、俺は一人で崖を登った。

 下を見ないようにしているので、ここがどれくらいの高さなのかは不明だ。


 そして、やっと月光草を見つけた。

 崖の亀裂から、力強く生えている。


 確か、葉が三枚のは残して、二枚のを根元から引き抜くんだったよな。


 注意点を思い出しながら、順調に採取していく。


 お、アレは葉のサイズがなかなかだ。


 移動し、慎重に引き抜こうとするが、しっかり根を張っているのかなかなか抜けない。


「アラタ! 動かないで!」


 下の方からセレイナの叫び声が聞こえた。


 同時に、遠くで「ギョエ」という断末魔。


 危惧していた魔物、ロックバードが現れたようだ。


 断末魔が聞こえた方を見ると、かなりの数のロックバードがこちらに向かってやってきている。

 満足に動けない俺は、下にいる二人に対処を任せる事にした。

8月6日23時追記


申し訳ありません。

次話の投稿が一日遅れます。

8月7日(土)の21時過ぎに投稿予定です。

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