表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

73/87

34

 狩りを終えた俺たちは、比較的安全なホーンラビットの生息エリアで野営の準備を行う。

 俺は今回、ミリーリアと共に後半の夜番担当だ。


 今日の反省会と、明日の予定の確認を終えた俺は、一足早くテントで休むことにした。



 目が覚め、時間を確認すると予定より少し早かったが、二度寝をするのはまずいと感覚でわかったのでテントから出る。


「あら、おはよ。早いわね。眠れなかった?」

「おはよ、お疲れさん。しっかり寝たぞ。丁度目が覚めただけだな」

「そ。ならいいわ」


 セレイナと少し話をしていると、ミリーリアもテントから出てきた。


「あら、私の方が遅かったか。二人ともおはよー」


 

 セレイナと夜番を交代し、ミリーリアと二人っきりになった。

 前回の夜番の時も思ったが、このメンバーで誰かと二人っきりになるというのは今までなかった。

 何を話すか悩むのは経験不足だからなのだろうか。


「どう? 夜番には慣れた?」

「慣れたのかな? 体調に問題はないな。前回の二日目の狩りも問題なかったし、大丈夫だとは思うぞ」

「そっか、無理はしないでね」

「今の所無理はしてないな」

「これからもしないでね? 何かあったら言ってよ?」


 無理をするつもりはないが、最善は尽くすつもりだ。

 教会で不穏な事を伝えれらている以上、覚悟は出来ている。


「状況次第だな。ていうか、学園の課題ってそんな難しい事があるのか?」


 少し話題を逸らす事にした。


「んー、学園の課題は選べるから、無理しなければ安全と言えば安全かな」

「パーティーで相談して、どの課題を受けるかって感じか?」

「そうそう、そんな感じ。もうすぐ公開されるはずだから、アラタも一緒に選ぶんだよ」

「目標としては、この前会ったナールルって人のパーティーより上の成績で卒業って話だけど、課題にも難易度があってそれが成績に反映されるのか?」

「そうだよ。あ、言っておくけど、目標の話だからね? 無理するつもりはないからね」

「わかってるって。そもそも何が無理とかは俺にはわからんしな」

「でもさ、アラタがいなかったらウルフに“犬も歩けば棒に当たる”が有効だって気付かなかったじゃん? だからアラタの意見も大事なんだよ」

「そういうもんか。何か気付いたら伝えるよ」

「うんうん。それでこそパーティーってもんだよ」


 その後もセレイナが起きるまで、俺とミリーリアは他愛もない会話を交わし、無事に夜番を終えた。



 ◆



 二日目のトレント狩りも順調に終え、俺たちは渡り鳥の集い亭で報酬の分配などを行う。


「一人当たり七万ヴィルか。移動時間を考えても安定してそうだし、しばらくはトレントで良さそうだな」

「そうね。学園の課題で遠征も考えられるから、稼げるうちに稼いじゃいましょうか」

「じゃあ、次の休みもトレントだね」

「ちなみにトレントエリアの次は何が出てくるんだ?」

「オークっていう魔物よ」


 嫌そうな顔をしたセレイナから説明を受けたが、俺がイメージしているオークとほぼ一致した。

 豚のような顔に、だらしない体だがパワーがあり、悪臭を放っているそうだ。

 もう一つ属性があるような気がするが、確認する気は無い。

 そして、絶対に会いたくない。


「それはまだ無理だろうな。素直にトレント狩りだな」

「何かオークに効きそうな【コトワザ】があったりしないの?」

「“豚に真珠”くらいじゃないか?」


 “豚に真珠”を説明するが、そもそも真珠が存在していなかった。

 ミリーリアもピンときていなかったこともあり、俺も必要以上に説明をしなかった。



 ◆



「じゃ、明日学園で!」

「明日から忙しくなるんだから、今日はゆっくりしなさいよ」

「おう。二人ともまた明日な」


 王都に戻り、俺たちは別れた。

 

 宿に戻り、俺はベッドの上で今後について考えている。

 いよいよ明日から二人と学園生活を送れると思うと、楽しみであると同時に、身が引き締まる。


 元の世界へ戻るための条件である、学園の課題の達成。

 そして、アルさんが言葉を濁したこの世界の危機。


 別件なのか、繋がっているのか。

 考えても仕方がないのはわかってはいるが、考えずにはいられなかった。


 最悪の事態は俺たちがトラブルに巻き込まれる事。

 セレイナは遠征があると言っていた。

 遠征先で、何かに巻き込まれる可能性は当然あるだろう。


 或いは、突然この世界の状況が一変するほどの危機が訪れる。

 学園の課題どころではなくなり、中止、もしくは延期。

 そうなると俺が元の世界に戻るのも難しくなるかもしれない。


 ダメだな。

 考えれば考えるほど良くない事が思い浮かぶ。


 学園の課題というくらいだし、安全面には注意を払っているだろう。

 勇者と呼ばれる存在が召喚されたわけだし、世界の危機っていうのは勇者が何とかしてくれるかもしれない。


 こう楽観的に考える事もできるが、この考えは危険だろう。

 他人任せにしても、咄嗟の事態に対応できなくなる。

 だからと言って俺に何ができるんだろうか。


 思考の渦に飲み込まれていると、部屋をノックする音が聞こえた。


「アラタ様、少々よろしいでしょうか?」

「どうぞ」


 いつも通り、シスター服姿のサーナさんを部屋に招き入れる。


「お疲れの所申し訳ないのですが、明日の予定の確認をしたく──」


 思考をリセットするにはいいタイミングだ。


 まずは明日からの学園生活についてだな。

 


 ◆



 翌日昼過ぎ、教会に寄りマルセト司祭と合流した俺とサーナさんは、学園へと向かう。


 一度学園を見ているが、外には学園生が居たりと、以前とは違った姿を見せている。


 既に話が通っているからか、学園の入り口に立っている職員さんが俺たちを見つけ、軽く会釈をする。


「ようこそお越しくださいました。話は伺っております」


 職員さんに案内され、俺たちは学園長室へ向かった。



 学園長室には、男性が一人と、四十台くらいの眼鏡をかけた女性が一人。


「お待ちしておりました。どうぞお掛けください」


 俺たちが席に着いたのを確認した学園側の二人は、自己紹介を始める。

 眼鏡の女性がこの学園の学園長で、ローズリッテさん。

 男性が俺の担任になるヘッグさん。ミリーリアとセレイナの担任でもある。


「初めまして。コトエダアラタと申します。この度は私の無茶な願いを叶えていただき、誠にありがとうございます」

「いえいえ。学園においても実のある提案ですのでお気になさらずに」

「このコトエダアラタという男は敬虔な信徒であるのは間違いないのですが、何分若さゆえに興味が先行するところがありまして。今回の件でも学園にはお手数をお掛けする事になってしまいました」

「過去にも例がございますし、気に病む必要はございません」


 打ち合わせ通り、後はマルセト司祭に任せる事にする。



「さて、それでは我々はそろそろ失礼させていただきます。サーナ、アラタに何か伝える事はあるかな?」


 サーナさんが俺の目を見る。


「アラタ、皆さんに迷惑を掛けちゃダメですよ。それと、時々でいいから顔は見せなさいよ?」


 打ち合わせ通りとはいえ、サーナさんに呼び捨てにされるのは新鮮だ。


「わかりました。この機会に、己の見識を広げたいと思います」


 ローズリッテ学園長はこのまま残り、俺たちは学園長室を後にした。



 学園の出入り口までサーナさんとマルセト司祭を見送り、担任のヘッグさんに連れられてまずは寮へと向かう。


「あの、アラタさん……?」

「アラタでいいですよ。そもそも私は学園の生徒になるんですし、担任の先生にさん付けされるのはどうも……」

「そうですか……わかりました」


 距離感を測りかねているのがわかる。


「本当にただの一学生と思ってください。私なんてまだまだ修行中の身ですし」

「そうか……どうも冒険者時代のクセが抜けなくてな。教会の関係者ってなると緊張するんだ」


 ヘッグ先生は元冒険者で、教会のお世話になったことが何度かあるそうだ。


「アラタは【コトワザ】の専門家って事でいいのか?」

「そうですね」

「この前テストがあったんだが、ミリーリアの【コトワザ】が俺も見た事がない効果でな。正しい判定を下せたかわからないんだ」


 ミリーリアはテストの結果には満足していたと思う。


「正しい判定というのが何をもってなのか分かりませんが、学園の基準で判定していただいて構いません。【コトワザ】を使える者もほぼいないですし、必要なのは冒険者として彼女が今後もやっていけるかどうかです。少し変わった効果のものもありますが、先生の目で見たままの評価を下してください」


 教会から、古代魔法を伝えるためという名目で俺が派遣された以上、ヘッグ先生にもプレッシャーがかかっているのかもしれない。

 だからと言って、ミリーリアの成績に下駄を履かせてもらうのは違う。

 そんな事は誰も望んではいない。


「私はただ【コトワザ】をミリーリアに伝える事ができればそれで十分なのです。私は学園生活が終了したら教会に戻る身。彼女はこの後冒険者として活動していくのでしょう。その時に自身の実力を正しく知っておかないと彼女のためになりません」

「そうだよな。わかりました。余計な事は考える必要はないか」


 ヘッグ先生も自分の中で考えがまとまったようだ。


 寮の俺の部屋へ案内されたはいいが、荷物も特にないのでそのまま学園の施設の案内をしてもらう。


「今は訓練所で自主練が行われているはずだ」


 ヘッグ先生に案内された訓練所では、学園生たちが各々訓練に励んでいる。

 結構人がいるが、全員がクラスメイトという事はないだろう。

 他のクラスの人ともパーティーを組むという話だったので、クラス合同で訓練を行っているのだろう。


 その中で、ミリーリアとセレイナの二人を発見した。

 向こうはこちらに気付いていない。


「ここが訓練施設だ。魔石を用意したらゴーレムを作り出して実践的な動きを確認出来たりもするぞ」


 そう言ってヘッグ先生が視線を向けた先には、二メートル程の大きさのゴーレムと対峙するパーティーがいた。

 その中の一人に見覚えがあった。


 金髪ドリルお嬢様エルフ(?)のナールルだ。

 彼女たちのパーティーはゴーレムを相手に模擬戦を行うようだ。


 いい機会だし、お手並み拝見といこうか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ