表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

57/87

18

5月12日23時本文微修正しました。

「それ──今日────」


 門を潜ると、その存在をこれでもかと主張する、西洋風な造りの白亜の城が目に飛び込んで来た。

 他の建物が邪魔で、ここからは全容は見えないが、見えている部分だけでも俺の目を釘付けにするには十分だった。


 元の世界にいた時、歴史の授業で城の名前と写真を覚えた事はあるが、全く興味がなかったので知識として記憶しただけだった。

 この城を目にした時、元の世界の城についてほとんど知識がないという事を少し後悔した。


 王都の中心部にそびえ立つ城には、国の中心機能としての役割があるのだろう。

 だがそれ以上に、目にした者は尊敬と畏怖の念を抱かずにはいられないような、そんな雰囲気があった。


 元の世界の城について、もう少し知識があれば違いを比べたり、もっと違う感じ方ができたのではないか。そう考えてしまった。


 ふと隣に立つサーナさんを見ると、俺と同じように城を見上げていた。

 

 俺の視線に気付いたのか、サーナさんは城を見上げたまま口を開く。


「美しいですよね、スルタンハイム城。アラタ様のお気持ちはわかります。私も初めて目にした時は感動のあまり立ち尽くしましたから」


 そういって、俺に微笑みかけてくれた。


「そうですよね? そうなりますよね? いやー、本当に凄い。いいものを見る事ができました」


 もう少しお城談議に花を咲かせたかったが、乗合馬車の時間が迫っているとの事だったので、移動する事にした。

 馬車は、スルタンハイム城付近を通過するらしいので、もっと近くで見る事ができるそうだ。


 

 乗合馬車内での俺は、お上りさん(・・・・・)と言われても否定が出来ない程、ずっと王都の街並みを眺めていた。

 他の乗客からは微笑ましいものを見るような視線を感じる。

 漆黒のマントを身に纏っている俺の服装が浮いているからではないと思いたい。


 生まれて初めての馬車による移動は、俺にのんびりとした時間の流れを感じさせてくれた。


 荷台を牽く馬の足音。


 時折俺の頬を優しく撫でる風。


 碁盤の目状に規則正しく整備された石畳の道路。

 すれ違う馬車。


 行列が出来ている店。

 風が焼きたてのパンの匂いを運んでくれる。

 夕飯時に合わせて焼き上げたのだろうか。


 そして、どんどん近くなるスルタンハイム城。


 城壁に囲まれているので庭などが見えないのが残念だ。

 

 結局、正面を通るルートではないのか、城への入り口は見当たらなかった。

 

 

 最寄りの停留所に着いたのか、俺とサーナさんはここで馬車から降りるようだ。

 サーナさんは御者に運賃を払い、俺に降りるように促してくる。


 下車した後、立て替えてくれた運賃がいくらだったか聞いたのだが、答えてくれなかった。

 サーナさん案内の下、俺は教会に向かって歩く。

 しかし、教会の本部のような建物は見えてこない。


 大聖堂のような建造物が本部になっていると思っていたのだが……。


 そんな事を考えていると、サーナさんの足は一軒の宿の前で止まった。

 

「今日からこちらの宿がアラタ様の宿泊先となります。教会へは、明日の朝向かいます」

「わかりました。俺一人で、でしょうか?」

「ご安心ください。私も今日はこの宿に泊まりますので」


 そういえば、王都に着いてからは城の事しか考えていなかった気がする。

 最優先事項は自分の今後の予定だというのにだ。浮かれていたとしか言えない。

 

 

 従業員に案内された部屋は、これまでの旅で泊まった宿にはないバスルームが設けられていた。

 湯舟は足を伸ばせるほどの大きさはないが、シャワー付きで、完璧と言っても過言ではない設備だった。

 

 今すぐお湯を張って、旅の疲れを癒したいところだが、サーナさんと別れる前に夕飯を一緒にとる約束をしている。

 あまり遅くなるわけにはいかない。


 湯舟に浸かるのは寝る前にして、今はシャワーで汗を流すだけにした。


 

 サーナさんと一緒に食堂で夕飯を済ませた俺は、明日の打ち合わせをするために彼女の部屋にいる。


「いかがですか? この宿は。何か感想があればお聞かせください」


 何一つ不満がない事を伝え、何故そんな質問を俺にしたのか聞いてみた。

 

 サーナさんの話によると、この宿は教会が運営しているそうだ。

 王都の外の各町にも教会が運営している宿が複数あり、従業員は、教会の関係者で構成されているらしい。

 関係者とは言っても、教会に所属している人というわけではなく、かつて教会のお世話になった引退した冒険者や、町で暮らしている一般の人達だそうだ。

 そして、その中から優秀な者たちが王都の宿の担当になるとの事だった。


「異世界から召喚されたアラタ様が、どう感じたかが気になりまして」


 そう言って、サーナさんは笑顔を俺に見せてくれた。


「さて、私事でお時間を取らせるのは申し訳ないですね。そろそろ本題に入りましょうか」


 サーナさんの表情が真面目なものに変わる。

 それでも、彼女の人柄なのか、どこか柔らかさを感じる。


「まず、アラタ様が王都で住む場所は学園の寮になります。手続きの関係でしばらくはこの宿になりますが、準備が整い次第入寮となります」

「学生として過ごす、という事ですかね? 可能なのでしょうか?」

「手続き上の問題はなかったと聞いています」

「もしかして、かなり無理をして通してもらったとか?」

「いえ、そういった事もなく、正規の手順での入学となります。いえ、違いますね。正しくは留学という形ですので、留学生となります」


 どういう事だ?

微修正に伴い、次話以降の見直しを行っております。


次話の投稿は少しお時間を頂き、5月17(月)を予定しております。

今しばらくお待ちいただけますと幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ