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申し訳ございません。

お待たせいたしました。

「この山を越えたらもうすぐ王都よ」


 石畳が敷かれ、整備された緩やかな山道を登っている最中、セレイナがそう伝えてくれた。


 王都とはどんなところか二人に聞いたのだが、見てからのお楽しみという事で、何一つ教えてくれなかった。

 相当自信があるのだろう。二人は口を揃えて期待しててとしか言わなかった。



「おぉ……。これが王都か……」

「正確には、あっちの奥に見える壁の内側が王都スルタンハイムね」

「ふっふっふー。どう? すごいでしょ?」


 山頂から望む光景に、俺は圧倒されていた。


 手前には広大な農地。

 この農地だけでもマノト村何個分か見当もつかない。


 そして、農地の奥には川が流れている。

 対岸には住宅街なのだろう。

 数多くの建物が密集しているように見える。


 住宅街の奥には壁がそびえ立ち、壁の内部には白亜の城のようなものが確認できた。

 俺が今眺めている山頂から城までどれくらい離れているのか見当もつかないが、肉眼で確認できるという事はかなりの大きさであるのは間違いないだろう。


「これは何というか、凄いとしか言えないな……」


 生まれて初めて徒歩の旅を経験した影響なのだろうか。

 山頂から眺める光景に胸が熱くなる。

 何かしらの交通機関や自動車での移動では味わう事ができない、達成感のようなものが体の内側からあふれ出してくる。


「ずっと眺めていたいって気持ちもわかるけど、早く行かないとサーナさんが待ちくたびれちゃうよ?」


「……だな」


 ミリーリアの声が聞こえ、ボーっとしていた意識が現実に引き戻される。


「いやー、見てからのお楽しみって言いたくなるのもわかるな。そして想像以上だった。これは口で説明されるより見た方がわかりやすいな。“百聞は一見にしかず”とはよく言ったもんだ」

「ん? “百聞は一見にしかず”ってのは【コトワザ】なのかな?」

「そうだな。意味は──」

「ほら、いいから行くわよ。説明は移動しながらでもできるでしょ? ……できるわよね? 変な【コトワザ】じゃない……わよね?」


 セレイナは【諺】に敏感になり過ぎなのではないだろうか。


 セレイナに促された俺たちは、緩やかな山道を下り、サーナさんとの待ち合わせ場所へ向かって歩き出した。

 旅の終点が見えている影響からか、あるいは視界に収めた王都周辺の街並みに興味が湧いた影響からか、俺の足取りは非常に軽いものだった。



 畑地帯を抜けようかという所で、徐々に大きな橋が見えてきた。

 川には堤防が設けられており、その堤防に沿うように露店が立ち並んでいた。ちょっとした縁日のように見える。


 この川を渡ると、南区と呼ばれる町なのだとか。


 壁の内側を王都スルタンハイムと呼び、その周りの町は東西南北で区分けされていて、それぞれ(方角)区という風に呼ぶそうだ。

 つまり、俺たちはマノト村から北上してきたという事になる。


 橋では検問が行われていて、対岸の城下町に行くのにも通行料がかかると教えられた。



 橋を越え、南区と呼ばれる城下町に足を踏み入れる。

 行き交う人の喧騒が俺の耳に届く。

 視界の先には王都を囲う高い壁が見える。


「サーナさんと合流したらアタシ達はお母さんの所へ顔を出すわ。そのまま一泊して、明日の午前中には教会に行くつもりなのだけれど……」

「どうなるんだろうね? 何時になるかはわからないかな」


 セレイナとミリーリアの母親であるディーファさんは南区に住んでいるので、二人はディーファさんが住んでいる家で一泊するそうだ。


 学園と教会があるのは王都らしいので、二人とは門の前で一度別れる事になる。

 

 王都の門の前にはシスター服を身に纏ったサーナさんがすでに俺たちの到着を待っていた。


「皆様お疲れさまでした。無事到着されたようでなによりです」


 再会の挨拶を済ませ、どれくらい待ったのか聞いたところ「今着いたばかりです」との答えが返ってきた。

 

 門の前で明日の予定のすり合わせを行い、また明日ねーと言い残し、ミリーリアとセレイナの二人はあっさりと街の方へと向かって行った。


 もっとなごり惜しみつつ別れるみたいなのを想像していたが、別に今生の別れでもないのでこんなものだと思う事にした。

 むしろ、長旅の思い出と初めて王都周辺を見た感動の影響で、俺が色々考えていただけだという事に気付いた。

 

「それでは行きましょうか。アラタ様手紙を」


 サーナさんから預かっていた手紙を手渡し、俺は王都の門を潜った。

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