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眠れん。
検証を終え、今日は解散というタイミングで、夜番は騎士団で引き受けると言い残してロイさんは去って行った。
ミリーリアとセレイナがお礼を言っていたので、少し遅れて俺も感謝の気持ちを伝えた。
考えてもいなかった。
大所帯とは言え、キャンプとは違う。
無防備になる睡眠時に、警備は必要だろう。
「二人は移動の時、夜番とかどうしてたんだ?」
「三時間交代で交互にって感じね」
大変そうだ。
「それじゃだけじゃなく、一定の範囲内に何かが侵入してきたら反応する魔道具も設置するのだけれど、今回の移動では必要なさそうね」
防犯グッズのようなものもあるらしい。
「へー。野営って初めてだから勉強になるな」
「そっかー。アラタの言ってた事が本当なら野営なんて必要なさそうだもんね」
まだ疑われているらしい。
「そういう事。何か注意する事とかある?」
「あり過ぎるくらいあるわね。どうしようかしら……」
セレイナは少し考え、注意すべき事を教えてくれた。
「まず、他の人のテントにはむやみに近づかない。むしろ、よっぽどの事がない限り近づかないのが無難ね」
なるほど。
「勝手にこっちのテントに近づいてきたらどうなるか保証はできないわよ?」
あれ? そういう意味?
さすがにその辺は弁えている。
「後はテントから離れすぎない。他には──」
セレイナに教えてもらった注意点は、聞けば納得できるものだった。
今後もこういう機会はありそうなので、忘れないようにしよう。
「それじゃ、明日に響いたら困るし今日はもう寝ましょうか」
「色々教えてくれてありがとう。寝ながら復習しておくよ」
「そうしてちょうだい。おやすみなさい」
「それではアラタ様、お休みなさい。明日もよろしくお願いいたします」
「アラタまた明日ね。あ、絶対こっちのテントに来ないでね!」
ミリーリアの発言はフリなのだうか……。
「ミリー! 余計な事は言わないの! わかってるわよね?」
「わかってるわかってる。今日は疲れたし、もう寝るよ。サーナさん改めてありがとうございます。おかげで安心して眠れそうです。では一足お先に」
俺はそう言い残し、テントに入った。
異世界の夜は静かだった。
車のエンジン音や室内空調の音が響くこともない、静寂に包まれたテントの中で俺の意識は心地良い眠気に包まれそうになっていた。
コッポポポッポポッポ
ジャー、ジャー
何かを絞る音が聞こえた。
「んー、冷たいー。やっぱり寒いねー」
「ちょっとミリー、もう少し声落とす」
「わかってるよ」
隣のテントから話し声が聞こえてくる。
そしてファスナーを操作する音。
「やっぱりちょっと狭いね。ぶつかったらごめんね」
「私の事は気にしないでください」
何をしているのだろうか。
「ふぅ、サッパリした。はい、セッちゃん」
また水の音。
「背中手伝おっか?」
「お願いしようかしら」
マジかー。
身だしなみを整えるのは大事だもんな。
「では私も失礼して」
水音。
そしてファスナー音。
「ありがとうございました」
俺は自分のテントの入り口を見る。
テントの入り口はファスナーで開け閉めするタイプではなかった。
隣はどんなタイプだっけ?
隣で繰り広げられている光景を想像してしまう。
【心頭を滅却すれば火もまた涼し】。よし、落ち着いた。
「そろそろいいかな?」
「そうね。時間も大丈夫みたい」
「少しドキドキしますね。それではよろしくお願いいたします」
な、何が始まるんですか?
「【ニトヲオウモノハイットヲモエズ】」
小声でミリーリアが【コトワザ】を唱えたようだ。
「わぁ……、これは何と言いますか……。本当に不思議な感じですね。皆様がおっしゃっていた事が良く分かります」
「サーナさんにもかかったわね。日付変更が基準なのかしらね?」
「そうなんじゃないかな? ひゃっ!」
「あら、申し訳ありません。少し手が冷たくなっていたようですね」
「私の方こそごめんなさい。少し驚いただけだから気にしないで」
日付が変わったのか。
そして、検証してみたと。
「やっぱり一人で寝るより暖かいね」
「そうね。村に戻る時よりは暖かくなったとはいえ、こうしてみんなで寝るとより暖かいわね」
「えぇ。いいですよね」
「ちょっと、ミリー動きすぎ。もう少しおとなしくできないの?」
「んー、なかなか良い位置がないなー。えい!」
「どうしてそうなるのよ」
「ふふふ。お二人は本当に仲がよろしいのですね」
「仲が良いというか何というか。ちょっと、ホントに寝にくいんだけど?」
「私は丁度いいよ?」
これ、聞こえないフリするべきだよな……。
俺は何も聞いていない。テントに戻ってからはすぐに寝た。
「ほら、いい加減邪魔。もう寝るわよ」
「えー、ひどいー」
「サーナさんも眠れないじゃない」
「私の事はお気になさらずに」
「サーナさんごめんね。少しはしゃぎ過ぎちゃった」
「最初からそうしてよ」
「よし、これで良さそう。それじゃ、おやすみー」
声がしなくなった。
やっと俺も眠れそうだ。
次話は4月30日22時に投稿予定です。




