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第27話 予想外

 村を出て、畑地帯を通り過ぎようという所でシュルーケルさんと会った。


「どっか行くのか?」

「ええ。ちょっと確認にね」


 シュルーケルさんが俺達三人を見回す。


「無理はすんなよ」


 一呼吸置いて、シュルーケルさんはそう言い残し作業へと戻って行った。



 セレイナを先頭に、いつしか通った道をなぞるように歩き、森の入り口へと到着した。


「あの草原に行くのか?」

「途中で脇道に入るわ。むやみに木を傷つける訳にもいかないから、どうなっても良い所へ向かってるの」


 草原へ続く獣道から途中で逸れ、森の奥へと向かう。

 所々に切り株が存在している。


「この辺でいいかしら」


 目的地に着いた俺たちは切り株に腰を掛け、確認事項の整理をする。


「ここに来た理由は木を貫通するかの確認って事でいいんだよな?」

「そうね。考えたくはないけれど、もしも木も貫通するようなら次は岩か鉄にになるわね」

「岩とか鉄はさすがに無理じゃないかなー?」


 元々休憩が必要なほど疲れていなかった俺たちは、検証を開始する。


「あの木とあの木を狙う感じでやってみるわ」


 セレイナが二本の木を指差す。


「オッケー。それじゃ、いくよ! 【イッセキニチョウ】!」


 ミリーリアが【コトワザ】を唱え、セレイナが矢を放つ。


 

 誰も言葉を発しない。


 美しいセレイナの残身。

 どこか遠くを見つめているミリーリア。 

 その光景をただ眺めている俺。


 矢は見事に木の幹を貫通し、予告通り隣の木に刺さっていた。


「スゴイナー」


 俺の口から洩れた感嘆の言葉は、自分でも驚くくらい棒読みだった。



 正気に戻った俺たちは二本の木の状態を確認する。

 最初に狙った木の幹はシュルーケルさんの胴回りよりも一回り以上太い。そんな木の幹から狭い範囲ではあるが、後ろの景色が望める状態だった。

 見事に貫通している。


 隣の木には、Uターンして戻って来た矢が深々と刺さっている。


「本当に貫通してるわね……」


 正気に戻ったはずのセレイナが再び遠い目をしている。


「アラタ……やり過ぎじゃないかな?」


 おいミリーリア、ちょっと待て。俺が悪いのか!

 俺が悪いのか……?

 悪くないと思うんだけどなあ。


 【一石二鳥】は確かに俺が教えたけど、こんなはずじゃなかったんだ!

 

「ほら、火力が上がるのは前衛を引き受ける俺としても大歓迎だし、やり過ぎって事はないんじゃないか? 戦闘時間が短くなれば、俺の生存率も上がるし」

「上がり過ぎなのよねえ。誤射したらと考えると、慣れるまでは使えないわね」


 誤射……。

 俺、前衛。

 俺、目の前の敵を抑える。

 俺、後ろ見えない。 

 矢、後ろから飛んでくる。

 矢、色々貫通する。


 気づいたけど、前衛って怖すぎない?

 え? 俺どう動けばいいんだ?

 セレイナと動きを合わせる練習もしないと使い物にならない前衛になってしまう。


 シュルーケルさんの“無理はすんなよ”ってそういう事だったのか!


「腕には自信があるから安心していいわよ」


 ずっと見つめていたからか、俺の視線に気づいたセレイナはそう俺に告げてきた。


「それなら誤射とか言わないでくれませんかね……」

「大丈夫よ。何とかなるわ!」

「いやいや! 全く安心できないから!」

「ごめんなさい、少しからかい過ぎたわ。誤射はあり得ないの。この矢には──」


 黒い物体が俺を目掛けて物凄い勢いで迫ってきている。

 とっさに側にいるセレイナを抱き、地面に転がる。


 何だ! 何が来た!?


 グオォォォン!


 俺たちの上を通過した黒い物体を見ると、全長ニメートルはあるであろう狼だった。


「ミリー、離れて!」


 俺と共に体を地面に預けているセレイナが指示を出す。


 俺は立ち上がり、狼と対峙する。視線は外さない。


 セレイナも俺から離れ、ミリーリアの下へと向かったと音で判断した俺は、少し狼と距離を取る。


 逃げる?

 無理だろう。

 ならば迎撃?

 どうやって?

 

「アラタ伏せて!!」


 ミリーリアの声に、俺は反射的にしゃがみ込む。


 風圧で何かが頭上を通過したと理解する。


 何かが着地したような音の方へ視線を向けると、狼がいた。


 増えてない?


 好機と見たのか、最初に襲い掛かってきた狼が飛び掛かってくる。

 真横に転がり回避し、勢いを利用してそのまま立ち上がる。


 一息つく暇もなく、二匹目の狼が突っ込んでくる。


 そのまま体当たりされるが、何とかその場に踏みとどまる。


 バックステップで俺から距離を取る狼。


 もう一匹の位置を確認しようと視線を向けると、鋭い牙をむき出しにしてこちらに飛び掛かってきている。


 どう回避するか決めるため、先程バックステップで俺から距離を取った狼の位置を確認しようと視線を動かすと、こちらも俺目掛けて飛び掛かってきている。


 ──あ、これ無理かも。


「伏せて!!!」


 声に体が反応し、地面に伏せる。


「うっ」


 衝撃を背中に受け、呻き声が漏れた。


 背中に乗っている重いものが邪魔で、身動きが取れない。

 

 動かせる首だけを動かし、狼を探すと頭から血を流して倒れている狼が目に入る。


 そして、非常に強く漂う獣臭に気付く。

 背中に乗っているものに触れると、ゴワゴワとした感触がした。


「アラタ!」

「大丈夫!?」


 二人が近づいてくる。

 そして、俺の背中に乗っている狼をズラしてくれた。


「二人とも怪我はないか?」

「【イタイノイタイノトンデイケ】!【イタイノイタイノトオイオヤマヘトンデイケ】!【イタイノイタイノトオイオヤマヘトンデイケ】!!」

「こっちは無傷よ。アタシ達の事よりもまずは自分の方を気にしなさいよ」


 俺の無事を確認できた二人の表情は、柔らかいものへと変わっていった。


「急いで村に戻りましょう。今ならロイさん達もいるし、何とかなるかもしれないわ」


 この状況を急いで村に戻り伝える必要がある。

 俺たちの意見は一致した。


「急ぐ必要はねーぞ」


 聞き覚えのある声がした。

 二人も気付いたのか、声が聞こえてきた方を見上げている。


 二人の視線の先を確認すると、やはりシュルーケルさんだった。


 ところで、何で木に登ってるんですかね?

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