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第20話 予定が確定

 開始の合図があるわけではない。

 いつくるのかわからないシュルーケルさんの攻撃を見逃さぬよう、ただひたすら凝視し続けた。


 突然俺の腹部を痛みが襲う。

 口から空気が漏れる。

 肺が酸素を求めているが、息を吸う事ができない。

 腰は曲がり、地面しか見えない。


 踏ん張りが利かない足。

 意思とは関係なく視界が揺れる。


 俺はその場に蹲った。


「【イタイノイタイノトンデイケ】! 【イタイノイタイノトンデイケ】!」


 俺を蝕んでいた不快感が消える。


「ちょっとお父さん、やり過ぎよ!」


 何をされたのか全くわからなかった。

 これは精神的にも肉体的にも来るものがある。


「アラタ! もう止めようよ! シュルーケルさんも何するの!」


 シュルーケルさんの表情も、立ち位置も、何一つ対峙した時から変わらない。


 俺はシュルーケルさんを中心に孤を描くように移動する。ミリーリアから離れるために。


 シュルーケルさんはゆっくりと俺を追い詰めるかのようにこちらに向かって歩いてくる。


 そして、先ほどまで追っていたその姿が消えたと思ったら、目の前には地面があった。


 身体の前面が全体的に痛い。

 起き上がろうにも腕にも足にも力が入らない。


「立つか? 止めるか?」


 耳元でシュルーケルさんの声がした。


 立つか(・・・)、ですか。

 立てるか( ・・・・)、じゃなく。


 全ては俺の意志に委ねると。


 ……立ちますよ。立ちますとも。

 ロイさんとの組手で、この世界でも何とかやっていけると勘違いした俺は愚か者だったと実感した。


 悪意ある相手と対峙したらどうなっていたか。

 終わりを迎えるのは俺だけか?

 違うだろう。

 この世界で俺が一人で行動するはずがない。

 

 いくら立ち上がろうとしても、俺の身体は言う事を聞かない。


「立ち……ま、す……」





 最悪の事態を想像してしまったからか。

 自分が無力なのが悔しかったからか。


 声が震えていたのは覚えている。


「【イ──ノ────ト──イケ】」

「──どう──つ──よ」


 何やら騒がしい。


 地面の感触を背中から感じた。

 いつのまにか仰向けになっている。


「おう、起きたか」


 シュルーケルさんの声がハッキリ聞こえた。


 俺は起き上がり、声がした方を向く。


「はい、何とか。ダメダメでしたね」

「悪くはなかったぞ」

「そうですかね……」


 思い出そうにも、何をされたか全く思い出せない。

 そもそも、思い出すほど何が起きたか理解すら出来ていない。


「一発目は吹き飛ばして、背中から落とす予定だったんだけどな。その場で耐えやがって」

「冗談がキツ過ぎますって。そもそも耐えてもいないですし」

「いや? マジだぞ? その辺の賊なら意識を保つことさえ出来ないな」 


 本当に何をされたんですかね!

 そして基準がその辺の賊って……。


「いや……マジですか? ギリギリを見極めたとかではなく?」

「見極めてはいねーな。ただ、問題はないって確信はあった」


 畑仕事で石を移動させていた時、手押し一輪車に積んだ石の量が異常だったらしい。

 普通は動かす事すら出来ない量の石を積んでいたようだ。


 そして、ロイさんとの組手で、いくら投げられてもケロっとしている俺を見て、どの程度の攻撃を加えたら俺の力を測れるか考えていたそうだ。


「休憩が終わったら、ロイに代わってもらおうと思ってたんだがよ、何か違う気がしてな」

「ありがとうございました。おかげで慢心することなく済みました」


「何いい感じに終わらせようとしてるのかしら? もしかしてアンタも戦闘狂なの? 何も聞かされてない方の身にもなりなさいよ」


 セレイナに説教されてしまった。

 ミリーリアの気持ちが少しわかった気がする。

 これは逆らえないし、逆らってはいけない。


「でもさ、これで学園の課題ってやつで、俺が足を引っ張りそうかどうかわかったんじゃない?」

「アンタはね……」

「どうだった?」

「……及第点って所かしらね」

「今後も精進します」

「何をするかは先に教えてよね」


 一応条件は満たせていたようだ。

 

「ミリーもいいわよね?」

「もちろんだよ! よろしくね、アラタ!」

「こちらこそよろしく」


「あん? もう訓練は終わりだと思ってるのか? 出立までに、まだ二回も夜はくるぞ?」

「時間がないですし……」

「今日と同じ時間でいいだろ」

「ミリーに【コトワザ】を教えないといけないですし……」

「ミリーリア、日中は暇か?」

「うん。もうやる事はないかな」

「よし、明日から日中は【コトワザ】を教える。夜は訓練、こうだな」

「畑仕事──」

「いらん」


 ヒドイ。


「隊員さん達がお休みの所にお邪魔するのは悪いですし……」


「アラタ殿、周りを見てください。誰も迷惑とは思っておりません」

 

 ロイさんに言われ、隊員さん達の方を向く。


 何で楽しそうに会話しながら盛り上がってるんですかね?

 そんなに俺が転がるところを見たいのかな?


 ……。

 何かが聞こえてしまった。

 『疾風のシュルーケル』って誰ですか?

 パワーのシュルーケルさんなら思い当た節があるのですが……。


 つまり、シュルーケルさんの戦闘を見る事が出来るのならば気にしないと。


 俺の退路は塞がれた。

 覚悟を決めよう。


「残り二日間、よろしく願いします!」

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