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第14話 召喚魔法

 再び村に戻り、先ほど会議が行われた建物に到着した。

 

 この建物は、会議に使われるだけではなく、客人の宿泊施設も兼ねているらしい。

 元々は、村でイベントを行う際に集まる場所として建てられたが、シュルーケルさんが村長になってから、望むのなら冒険者や商人にも開放し、宿泊できるようにと改装したとの事だ。

 大抵の冒険者は村の外での野営を選ぶが、季節や天候によってはこの建物内の宿泊施設を利用するのだとか。

 貸し出す場合は、シュルーケルさんか、自警団の人がそれとなく見張りにつくらしい。

 いい小遣い稼ぎになるとはシュルーケルさんの言だ。


 サーナさんもここの宿泊施設を利用している。

 身分がはっきりしているので見張りはいないが、必要なら村の女性が手伝いにきてくれるので、それ程不便だとは思わないとの事。


 「じゃ、俺は外に戻るけどよ……。アラタ、変な気起こすなよ」


 失礼な。

 変な気を起こすって、いったい俺が何をするっていうんだろう。

 思い当たる節なんて……、初日か。そういえば思い当たる節があった。

 ま、まぁ、そんな未遂事件もありましたね。いい思い出です。


「そんな人聞きの悪い事言わないでくださいよ。サーナさんに警戒されたらどうするんですか」

「それもそうだな。悪かった。ちょっとした茶目っ気のつもりだったんだ」


 ジェスチャーで「悪い悪い」と表現しながらシュルーケルさんは畑へ戻っていった。


「村長様はお優しい方なのですね」


 どこにそんな要素があったのだろうか?

 そりゃシュルーケルさんにはお世話になりっぱなしだけど、サーナさんがそう思う要素なんてあっただろうか?


「会議の際の私たちのやりとりから、気まずくならないように配慮してくださったのだと思います」


 あー、なるほど。

 言われてみたら、会議での俺とサーナさんのやり取りはお世辞にも穏便とは言えなかったかもしれない。


「アラタ様をお招きしておいて申し訳ないのですが、少々お待ちください」


 サーナさんがそういうと、俺を送還した時と同じ体勢になる。

 そして、魔法陣が出現し、中央から一匹の九官鳥のような鳥が現れる。


「これが私の使い魔のピーちゃんです。教会に戻る日が変更になりましたので、私も連絡をしようと思いまして」

「ピー!」


 ピーちゃんが魔法陣の上からトントンと跳ねたと思ったら、サーナさんの肩の上に飛び移る。


「ちょっとまっててね。今お手紙書くから。そのお手紙を司祭様に届けてほしいの。お願いね」


 サーナさんが手紙を書き始めると、ピーちゃんが俺の方にやってくる。


「ピッピー」


 そして羽を広げたり縮めたりしている。

 威嚇されてる?


 そして、俺の肩の上に乗り、髪を咥え始めた。


「アラタ様は随分気に入られたようですね」


 気に入られたのだろうか?


「ピーちゃんは興味がない人には近づきもしませんから」


 そういうものなのだろうか?

 鳥の気持ち、いや、使い魔の気持ちはよくわからない。


「ところでアラタ様はピーちゃんが何を言っているのかわかったりしませんか?」


 何という無茶ぶり!

 いや、そうでもないのかな?

 言語理解の事は伝えたので、使い魔繋がりでもしかしたらという思いからの質問かもしれない。


「そうですね、残念なが──」

「あ、やっぱり待ってください! まだ心の準備が……」


 わからないと伝える前に、サーナさんは一度俺の発言を遮り、深呼吸をする。

 そして、覚悟を決めたのか改めて聞いてくる。


「ピーちゃんは何と……?」


 どうやら俺がピーちゃんと会話できるのは彼女の中では確定らしい。

 適当な事を言うわけにもいかないので、俺は正直に答える。


「ごめんなさい。ピーちゃんが何て言ってるのかはわかりませんでした」

「そうですか……。こちらこそ突然変な質問をして申し訳ございません。もしかしてと思い、我慢できず聞いてしまいました。使い魔と会話するというのは召喚魔法を使える者なら誰もが一度は夢見る事ですので……」


 少し恥ずかしそうな表情をしているサーナさんだが、手紙を書き終え、ピーちゃんの足に書簡を括り付ける。

 

「ピーちゃんお願いね。気を付けて行ってきてね」

「ピー!!」


 ピーちゃんはわかったよと言うように一鳴きし、飛び立っていった。


「ここのお呼びしたのは、一度召喚魔法とういうものをアラタ様に見ていただきたかったのと、もしかしたらピーちゃんの言葉がわかるのではと思ってです」

「なるほど。召喚魔法は初めて見たので興味深かったですね。それと、ピーちゃんの言葉の通訳はできませんでしたね」


 どういう判定になっているのか不明だが、ピーちゃんと会話はできなかった。


 それよりも、どうもアラタ様と呼ばれるのはこそばゆい。

 もう少し砕いてもいいと伝えたのだが、


「職業柄、クセのような感じになってますのでなかなか難しいですね。そういうアラタ様も少し硬いのでは? アラタ様ともう少し距離が縮まれば私も少し考えが変わるかもしれませんよ?」


 俺の反応を楽しむように、そう返されてしまった。

 

「わかりました。俺も努力します」

「努力までは必要ないと思います。いい関係になってきたら、自然と気にならなくなるものですから」


 いい関係と聞くと勘違いしそうになった俺は、もうダメかもしれない。


「と、ところで俺は何をしたらいいのでしょう?」

「そうでしたね。先ほどお伝えした通り、召喚魔法とピーちゃんを見てもらいたかったというのもありますが、アル様のお話をもう少し詳しく聞きたいというのが本題ですね」

「わかりました。とは言っても最初に伝えた事がほとんどですけどね」

「そうですか……。では──」


 こうして俺はサーナさんから質問攻めに合うことになった。

 教会のシスターさんとはこんな感じなのだろうか?


 それでも初対面の時よりは打ち解ける事が出来たのでヨシとしよう。


「色々教えていただいてありがとうございました! 非常に興味深いお話を聞けました!」

「俺もまだアルさんとは一度しか会ってない……アルさんの空間には一度しか行ってないので、次に送還してもらう事があれば、色々確認してみます」


 そういえばアルさんの姿は見た事がないんだよなあ。

 声からも男性か女性かもわからなかったし。


「そうだ、今から送還って可能ですか? アルさんの所に行けるかどうか確認してみたいと思います」


 どうせなら今のうちにできそうな事は終わらせておいた方がいい。

 そう思って提案してみたのだが、残念ながらそう上手くはいかないらしい。


「申し訳ございません。恐らくここでは送還は出来ないと思います。一度送還した使い魔が、再度召喚することなく戻って来たという事例は聞いたことがありません。なので、やはり王都の教会本部に戻ってから送還を試すのがよろしいかと思われます。それに……」


 なるほど。特殊な事情がある俺を、気軽に送還するのは抵抗があるようだ。

 教会本部は設備や召喚に関する何かがあって、より安全に送還を行うことが出来るのだろう。


「もし勝手にアラタ様を送還したなんて事が知られてしまったら、ミリーリア様に合わせる顔がありませんから」


 サーナさんは微笑ましいものを見る目で俺を見つめている。


「では、王都に戻ったらタイミングを見計らって送還を試すという事でお願いします」


 後半部分には触れない事で、サーナさんには俺が平静を保っていると思われただろう。


「はい。そのように」

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