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第13話 押し付け

 一度、ミリーリアと二人で話をしたいというセレイナの発言を受け、会議室を後にした俺達は、村の外の畑に向かっている。

 移動中、騎士団の隊員さん達は俺の方をチラチラ見ているので落ち着かなかった。

 見極め期間が始まっているのだと思うと気が抜けない。


「お前達……。アラタ殿が気になるのはわかるが、もう少し村の住民の様子にも目を向けるべきではないかね?」


 ロイさんに注意され、隊員さん達の視線が村の様子を確認するためにせわしなく動く。


「アラタ殿、出来れば不躾な視線は許してください。うちの隊の隊員は、元冒険者で構成されているので気になっているんです」


 ロイさんの話によると、王都第七騎士団に所属する騎士は全員が元冒険者だという。

 そのため、隊員さんは俺と話がしたくてウズウズしているそうだ。

 しかし、今は任務中のため気軽に話しかける事ができず、目で俺を追っているとの事だ。


「アラタ殿の判断にお任せしますが、今日の作業終了後、うちの全隊員に改めてアラタ殿を紹介したいと考えているですが、いかがでしょうか」


 会議に参加していた隊員さんの他に、村の外の警備、畑の復旧の手伝いをしている隊員さんがいるので、情報量に差が出来てしまっている。

 かん口令を敷いた以上、会議に参加していなかった隊員さんたちは状況を把握していないので、不要なトラブルと避けたいとの事だ。


「問題ありませんよ。俺としてもお世話になりますし、隊員さん達とは仲良くしたいですから」


 王都まで一緒に移動する事は決まっているので、少しでも親交を深める事に異論はない。

 それに、ロイさんの隊の隊員さんは全員が元冒険者という話なので、俺も少しでも色々な話を聞いておきたい。

 俺の存在を知る人は少ない方がいいが、明確な理由があってかん口令が敷かれているとわかった方が、隊員さん達も納得できるだろうしね。



 村の外の畑に到着し、改めて襲撃後の畑の惨状を目の当たりにする。


 この村に連行された時に見た、これから作物が育ち、多くの収穫に期待に胸を躍らせるような綺麗な状態の畑はそれ程多くはない。

 (うね)が無残に崩れている畑、人と魔物に踏み固められた畑、緑色の生き物の投石で石が混入した畑など様々だ。


 シュルーケルさんとロイさんが何かを話し合い、それぞれが別の別の場所に散っていく。


 シュルーケルさんはすでに復旧作業を行っている住民達に、騎士団が手伝ってくれることを伝えに行くようだ。

 ロイさんは全隊員さんを集めて人員の割り振りかな?


 各々が自分の役割を把握し、作業に取り掛かろうとしている。


 俺とサーナさんは置いてけぼりだ。

 すっごい気まずい。


「コトエダアラタ様、先ほどは大変失礼いたしました」


 サーナさんにいきなり謝られた。


「俺の事はアラタでいいですよ。それより、いきなり謝られましても……。サーナさんが謝るような事は何もなかったと思うのですが」

「私の率直な気持ちとしては、シュルーケルさんがおっしゃった、見なかった、知らなかったことにするという提案に全面的に同意したかったのです。しかし、弱い心と申しますか、保身、ですかね?  どうしても私の一存で決める事が出来ませんでした。私がただ、何も見てませんと言えば済む話でしたが、何かあったらどうしようと思ってしまいました」


 サーナさんの謝罪は続く。


「召喚魔法が使え、私自身も使い魔と共に生活を送っているのに、アラタ様の本意とはかけ離れた結果となってしまい、誠に申し訳ございませんでした」


 サーナさんが深々と頭を下げる。

 その言葉からは、本心から自分の無力さと、俺に対して申し訳ないという想いが感じられた。


「頭を上げてください。こちらこそ、サーナさんに対して失礼な態度をとってしまい、申し訳ありませんでした」


 俺も頭を下げる。

 そして続ける。


「サーナさんの信仰心を試すような発言や、こちらの無茶なお願いを通すために相当失礼な発言をしたと思います。あの場では勢いに任せて、自分の事しか考えていない発言であったと気づかされました。本当にすいませんでした」


 会議の場では、ミリーリアと自分の事しか考えていなかった、いや、考える余裕がなかった俺だが、サーラさんの謝罪の言葉を聞き、本当に気づかされた。


 関わった人たちの人生に影響を与える可能性があるという点にまで、俺は考えが及ばなかった。

 今後過ちを犯さないためにも、これは反省しないといけない。

 どこか、まだ現実だと受け止め切れていなかったのではないか。

 本当にこれが最良の結果だったのか。

 そんな思いが俺の頭の中で渦巻いている。


「なにやってんだ」


 シュルーケルさんの一言で俺の意識は現実に戻る。

 

 俺が頭を上げてもサーナさんはまだ頭を下げた姿勢のままだった。


「サーナさん、とにかく頭を上げてください。ほら、シュルーケルさんも来ましたし……」


 困った俺は、とりあえずおじ様を巻き込む事にした。


「ん? 何か俺に聞かれちゃマズかったか? サーナさんには村に戻って住民達のカウンセリングを頼もうと思っていたんだが……。後にするか?」

「はい。私は今からで構いません。それとシュルーケル様にお願いがあるのですが……」


 頭を上げ、了承したサーナさんだが、シュルーケルさんにお願いがあるらしい。


「今日だけで構いませんのでアラタ様をお借りしてもよろしいでしょうか?」


 俺?

 カウンセリングなんてした事がないから役に立つとは思えませんが……。


 シュルーケルさんは、サーラさんを見つめながら考え込んだ後、了承の意を伝えた。


 今日の俺の仕事が決定したようだ。

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