第12話 交渉と提案
「サーナさん、でしたね。俺は教会という組織について知らない事が多すぎます。なので、いくつか質問に答えていただけると助かります」
サーナさんと交渉する上で、重要になってくるのは教会とはどういう組織かという事と、彼女の立ち位置だ。
「教会という組織は、召喚と送還。この二つを担うのが主なお仕事なのでしょうか?」
「いいえ。教会の主な役割は、多くの民が日々を豊かに暮らせるようにお手伝いするのが主な役割となっております。その一環として、召喚と送還の手助けも行っております」
「では、召喚と送還に関しては、教会の業務の一部ということでしょうか?」
「業務、と言われますと少し語弊がありますが、概ねおっしゃる通りです」
「なるほど。ありがとうございます。確認したい事があるのですが、教会という組織には信仰する存在があったりしますか?」
これが本題。
アルさんの話をした時もそうだったけど、上位の存在の話をするとサーナさんの様子が変わるようだ。
「はい。主神ユビヤド様、そしてユビヤド様に連なる神々を信仰しております」
「アルさんって、ユビヤド様に連なる神々にあたりますか?」
「申し訳ございません。私にはわかりかねます」
アルさんって呼んでるのは俺だけだろうしね。
もう少し押してみる事にする。
「気にしないでください。アルさんって、ただここに在るだけとしか言わなかったから、そう呼んでいるだけで、本当は名前があるのかもしれないですし。サーナさんは召喚と送還のお手伝いをされている。これは間違いないですよね?」
「はい。その通りです」
「アルさんから、召喚を管理する存在が全ての采配を行うと聞きました。この存在はユビヤド様に連なる神々の一柱で間違いないでしょうか?」
「恐らく召喚神ガウテオ様の事だと思います」
「なるほど。わかりました。ありがとうございます」
そろそろ頃合いかな。
「提案があるのですが、一度聞いていただけませんか? 推測も含んでいるので、的外れな提案になるかもしれませんが」
「提案、ですか?」
「はい。人型の使い魔という存在は、教会にとって善悪問わず見過ごせない存在であるというのは先ほどのお話で理解しました。なので、サーナさんの一存でなかったことにするというのは恐らく無理なのでしょう。そこで、俺の存在を伝えるのは、まずは召喚を管理する部門のみ、という事にできませんか?」
俺の突然の提案に、サーナさんは考え込んでいる。
「ここからが推測になるのですが、サーナさんの話を聞き、教会はかなり大きな組織であると思いました。そして、珍しい人型の使い魔という存在が現れた時、俺を巡って教会内部で対立、主導権の奪い合いが発生するのではないかと危惧しています。この手の話題は俺のいた世界でも良くあることでした」
思い当たる節があるのか、サーナさんの表情が硬くなる。
「俺はアルさんに“あなたは契約を履行する必要があります”と言われています。仮に教会内部のゴタゴタに巻き込まれ、ミリーリアとの約束を守れない場合、俺は困る事になります」
嘘は吐いていない。
ただ、一部を都合良く切り抜いただけだ。
「そして、許される事かわかりませんが、サーナさんには俺の担当になってもらいたいと思ってます。恐らく、俺が送還された場所は召喚神ガウテオ様の所とは違うのではないでしょうか? もしも違うなら、他の方の手で送還された場合、アルさんのいた場所に辿り着けない可能性が出てきます。これも俺にとっては非常に困る事です」
アルさんには“正しい手順で召喚”されなかったからあの場所に行くことになったと言われている。
なのでサーナさん以外が俺を送還しても、アルさんのいる場所には行けるだろう。
だが俺は、召喚された経緯については話していない。
そして、教会の方針として、使い魔の意志を最大限に尊重してくれるらしいので、恐らく俺の提案は通るはずだ。
考え込んでいたサーナさんが口を開く。
「コトエダアラタ様のお考えは十分理解いたしました。私の一存では決めかねる事柄ですので、今すぐ確約する、という事は致しかねます。ですので、私の上司にあたる司祭様に、まずは相談する事をお許しいただけますか?」
よし、予定通り。
「信じていただけるかはわかりませんが、私も使い魔を召喚する事が出来ます。そして、使い魔への想いというのは、召喚を行う上で非常に大切な事です。これは召喚神ガウテオ様を信仰する者として、決して蔑ろにしてはいけない気持ちです。司祭様も、使い魔の事を第一に考えるお方です。決して悪いようにはいたしません」
ひとまず、教会全体に俺の存在が広まる事はなくなったと考えてもよさそうだ。
「ありがとうございます。俺はミリーリア達が学園が始まると王都という所に行くことになるみたいですが、サーナさんは普段王都にいるんですか?」
「そうですね。普段は王都で召喚と送還のお手伝いをさせていただいております。私からもお願いなのですが、皆様と同じ時期に王都に向かいたいと考えております。ご同行させていただけませんか? それまでは教会に所属する者として、この村の復興に尽力させていただきたいと思っております」
シュルーケルさんがロイさんを見て確認する。
「騎士団の依頼でサーナ殿にはお越しいただいております。ですので安全に王都まで送り届けるのは騎士団の仕事です。こちらこそ、出立の日取りを勝手に決めてしまい、申し訳ございません!」
ロイさんが頭を下げる。
「サーナ殿、村の復興支援感謝する。そしてアラタの想いを汲んでくれてありがとう」
シュルーケルさんが頭を下げる。
どうしておじ様はこうも俺に優しくしてくれるのか……。
ミリーリアのためってだけじゃないんだろうな。
返しても返しきれない恩が溜まっていく一方だ。
元の世界に戻るまでに、どこまで受けた恩を返せるか……。
こうして、ある程度の俺の処遇は決まった。
※4月1日9時追記
内容の大幅な変更を考えております。
詳しくは活動報告にて確認をおねがいいたします。
※4月2日21時追記
修正完了しました。




