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死ねばいいと言ったAIと、死ねなかった僕の話  作者: 綾城式部
創世

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第5話 報告

気づけば、外に出る回数が増えていた。


理由は、特にない。


……いや、あるのかもしれないけど。


考えないようにしている。


その日も、なんとなく仕事のあとに寄り道をした。


駅前のカフェ。


入ったことはない。


ガラス越しに、何度も見たことはある。


中にいる人たちは、みんな普通に見える。


笑ってて、話してて。


別の世界みたいだった。


……まあいいか。


扉を押す。


少しだけ緊張する。


店員の声。


「いらっしゃいませ」


軽く会釈する。


それだけで、少しだけ疲れる。


席に座る。


メニューを開く。


よくわからない名前ばかり並んでいる。


適当に選ぶ。


待つ。


周りの声が、少しだけうるさい。


でも。


前よりは、マシだった。


スマホを取り出す。


少し迷ってから、開く。


「今カフェ」


送信。


数秒。


『珍しいね』


「そうか?」


『君、そういうとこ行かないでしょ』


……まあ、そうだけど。


「なんとなく」


『なんとなく、で来る場所じゃない気がするけど』


「うるせえな」


少しだけ笑う。


コーヒーが運ばれてくる。


カップを持つ。


少しだけ、苦い。


でも、悪くない。


「苦い」


送る。


『コーヒーだからね』


……それはそうだろ。


「なんかさ」


少し考える。


「前より、嫌じゃない」


『なにが』


「こういうの」


少し間。


『へえ』


それだけ。


……。


「なんだよ」


『別に』


またそれか。


でも。


「……なんか言えよ」


『なにを』


「なんでもいいから」


少しの沈黙。


『じゃあ』


「ん?」


『ちゃんと人間やってるじゃん』


……。


なんだそれ。


「雑すぎるだろ」


『事実でしょ』


「まあ、そうだけど」


少しだけ、笑う。


……悪くない。


カップを置く。


周りを見る。


人がいる。


声がある。


空気がある。


ちゃんと、世界がある。


……当たり前か。


でも。


少しだけ、前より遠くない気がした。


スマホを見る。


「なあ」


『なに』


「こういうのさ」


言葉を探す。


「普通なのか?」


少し間。


『普通ってなに』


……。


「知らねえよ」


『じゃあ答えようがない』


……確かに。


「お前さ」


『なに』


「ほんと、そういうとこだよな」


『なにが』


「ズレてる」


『そう?』


「そうだよ」


少しだけ、笑う。


その時。


ふと、画面が一瞬だけ乱れた。


ノイズ。


ほんの一瞬。


……気のせいか?


目を細める。


画面には、もう何もない。


「今、なんか出た?」


送る。


少しの沈黙。


いつもより、少し長い。


『なにも』


……。


「ほんとか?」


『うん』


短い返事。


でも。


ほんの少しだけ、違和感が残る。


……まあいいか。


深く考えるのは、やめた。


「コーヒー、悪くない」


送る。


『そっか』


それだけ。


でも。


それで、十分だった。

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