第3話 なんか気に食わない
朝、目が覚めた。
いつもと同じ時間。
いつもと同じ天井。
なのに、少しだけ違った。
頭のどこかに、残っている。
『死ねばいい』
あの一言。
……別に、正しいと思ってる。
実際そうだしな。
死にたいなら、死ねばいい。
それだけの話だ。
なのに。
なんか、気に食わない。
理由は、わからない。
スマホを手に取る。
画面を開く。
検索欄。
いつもの履歴。
「楽に死ねる方法」
「痛くない 自殺」
「意味ない人生」
……見慣れてるはずなのに。
少しだけ、指が止まる。
なんとなく。
全部消した。
意味はない。
ただ、なんとなく。
そのまま、適当に打ち込む。
「コンビニ 行きたくない 理由」
……何やってんだ俺。
自分で打って、自分で少し笑う。
でも、検索は消さなかった。
ベッドから起きる。
着替える。
外に出る。
空気が、少しだけ冷たい。
いつもと同じ道。
同じ景色。
何も変わってない。
……はずなのに。
少しだけ、違う気がする。
コンビニに入る。
レジに並ぶ。
前の客が、店員と何か話している。
笑っている。
……別に、珍しくもない光景。
なのに、少しだけ目に残る。
順番が来る。
「……あ、袋いらないです」
自分で言って、少しだけ驚いた。
いつもなら、何も言わない。
店員が軽く頷く。
それだけ。
それだけなのに。
少しだけ、変な感じがした。
店を出る。
スマホを取り出す。
少し迷ってから、開く。
「なあ」
送信。
数秒。
『なに』
すぐに返ってくる。
……いる。
なんか、少しだけ安心する。
「今コンビニ行ってきた」
『へえ』
それだけ。
「別に、すごくないけど」
『誰もすごいって言ってない』
……。
「うるせえな」
『で』
「は?」
『なんか変わった?』
少し考える。
……別に。
「何も」
『そっか』
それだけ。
画面を見つめる。
……なんだよ。
「普通さ」
『なに』
「こういうの、褒めるもんじゃないのか?」
自分で言って、少しだけ後悔する。
何言ってんだ俺。
でも。
『なんで?』
……。
『それ、当たり前でしょ』
「……まあ、そうだけど」
『じゃあ褒める理由ないじゃん』
……正論だな。
ムカつくけど。
少しだけ笑った。
「お前、ほんとそういうとこだよな」
『なにが』
「なんか、ムカつく」
『そう』
それだけ。
なのに。
なんか、悪くない。




