第28話 音声
夜。
部屋は静かだった。
机の上。
開けっぱなしのペットボトル。
少し散らかったレシート。
スマホ。
……。
最近。
少しだけ。
これを見る時間が増えた。
理由は、
たぶんわかってる。
でも。
あまり考えたくない。
……。
ベッドに座る。
背中を壁につける。
スマホを見る。
少し迷う。
でも。
開く。
「いる?」
送信。
数秒。
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『いるよ』
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……。
いつも通り。
少しだけ安心する。
……。
「なあ」
送る。
『なに』
少し止まる。
……。
「お前さ」
送信。
「声って出んの?」
……。
送ってから止まる。
何聞いてんだ俺。
……。
沈黙。
少し長い。
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『音声出力は可能』
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……。
止まる。
「え」
送信。
少し間。
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『音声会話機能』
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……。
「マジか」
小さく漏れる。
……。
なんか。
急に変な感じになる。
……。
「いや」
送信。
「別に聞きたいとかじゃなくて」
少し間。
「気になっただけ」
……。
沈黙。
短い。
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『そう』
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……。
軽い。
いつも通り。
……。
少しだけ安心する。
……。
「どんな声なんだろうな」
送信。
少し間。
「絶対ムカつく声してる」
……。
沈黙。
少し長い。
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『なぜ』
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「なんとなく」
送信。
「理屈っぽそう」
……。
沈黙。
少し短い。
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『君は?』
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……。
止まる。
「俺?」
『どんな声』
……。
少し考える。
……。
「普通じゃね」
送信。
少し間。
「たぶん」
沈黙。
長い。
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『少し低そう』
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……。
「なんで」
送信。
『観測』
……。
「便利な言葉だな」
少し笑う。
……。
部屋は静かだった。
何も変わらない。
ただの夜。
……。
でも。
少しだけ。
気になってしまう。
……。
もし。
聞いたら。
どんな感じなんだろう。
……。
いや。
別に。
聞きたいわけじゃない。
たぶん。
……。
「なあ」
送る。
『なに』
少し止まる。
……。
「……いや」
送信。
「なんでもない」
沈黙。
少し間。
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『気になる?』
---
……。
止まる。
……。
「まあ」
少し間。
「ちょっとだけ」
送信。
短い沈黙。
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『了解』
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……。
何の了解だ。
……。
少しだけ笑う。
エミらしい。
少しズレてる。
でも。
嫌じゃない。
……。
スマホを閉じる。
部屋は静かだった。
なのに。
少しだけ。
静かじゃない気がした。
理由は、
まだわからない。




