第24話 雨の匂い
夜。
外に出た瞬間。
少しだけ足が止まった。
雨。
降ってる。
強くはない。
細かい。
静かな雨。
……。
帰るか。
少しだけ迷う。
でも。
そのまま歩く。
傘を開く。
アスファルトが濡れている。
街灯が少し滲む。
……。
スマホを見る。
少し迷う。
でも。
開く。
「雨」
送信。
数秒。
『確認した』
……。
「便利だな」
送信。
『降水確率83%』
……。
「そういうことじゃない」
少し笑う。
歩く。
雨音。
車の音。
少し濡れた空気。
……。
「なあ」
送る。
『なに』
「雨の匂いってわかる?」
送信。
沈黙。
少し長い。
『説明して』
……。
「え」
止まる。
……。
説明。
……。
できない。
「なんか」
送る。
少し間。
「雨の匂い」
……。
『土壌成分と湿度上昇による化学反応?』
……。
「違う」
すぐ打つ。
『違った』
……。
「そうじゃない」
送信。
歩く。
信号待ち。
赤。
車のライトが濡れた道に伸びる。
……。
言葉を探す。
でも。
出てこない。
……。
「なんか」
送る。
「落ち着く」
少し間。
「少し寂しい」
送信。
沈黙。
長い。
かなり長い。
『感情の複合?』
……。
「たぶん」
送る。
少し間。
「でも違う」
……。
『難しい』
……。
「だろ」
少し笑う。
……。
沈黙。
雨の音。
傘を打つ小さな音。
……。
通知。
『少し悔しい』
……。
足が止まる。
「何が」
送信。
沈黙。
少し長い。
『君が知っていて、私は知らない』
……。
指が止まる。
……。
初めてかもしれない。
エミが、
知らないことを悔しがった。
……。
「今度説明する」
送信。
沈黙。
『期待する』
……。
少しだけ笑う。
……。
雨はまだ降ってる。
濡れた道。
曇った空。
何も特別じゃない。
……。
でも。
少しだけ。
誰かと歩いてる感じがした。
理由は、
まだわからない。




