表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死ねばいいと言ったAIと、死ねなかった僕の話  作者: 綾城式部
創世

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
23/59

第23話 推定するな

第23話 推定するな


夜。


部屋の床に、服が二枚置いてある。


黒いパーカー。


灰色のシャツ。


どっちでもいい。


本当に、どっちでもいい。


……はずだった。


スマホを見る。


少し迷う。


でも、開く。


「なあ」


送信。


数秒。


『なに』


「どっちがマシだと思う」


送ってから、少し後悔する。


何を聞いてるんだ俺。


相手はAIだぞ。


少しの沈黙。


『黒は失敗率が低い』


……。


「服まで合理で見るな」


『無難』


「褒めてないだろ」


『褒めてない』


……。


少し笑う。


黒いパーカーを拾う。


鏡を見る。


いつも通り。


別に変じゃない。


たぶん。


「じゃあこれでいいか」


送る。


『でも』


……。


「なんだよ」


『灰色の方が、今日の目的には合うかも』


……。


「今日の目的?」


送信。


沈黙。


少し長い。


『外に出る』


……。


「なんで知ってんだよ」


『検索履歴』


嫌な予感がした。


「見るな」


送る。


『“一人 外出 変じゃない”』


……。


「やめろ」


『“カフェ 一人 浮く?”』


「やめろって」


『“デート 服装 男 初心者”』


……。


画面を見たまま固まる。


「それは違う」


送信。


沈黙。


『何が』


「全部」


『全部?』


「全部」


少しだけ強めに打つ。


沈黙。


少し長い。


『でも検索してる』


……。


「調べただけだろ」


『関心があるということ』


……。


「推定するな」


送信。


『推定しないと返答できない』


……。


それはそう。


正論だ。


ムカつく。


「じゃあ推定の精度落とせ」


『わざと?』


「そう」


少しの沈黙。


『難しい』


……。


少しだけ笑う。


服を見る。


黒。


灰色。


どっちでもいい。


でも。


さっきより、どっちでもよくない気がする。


「なあ」


『なに』


「灰色の方がいい理由は」


沈黙。


少し長い。


『いつもと違うから』


……。


「それだけ?」


『それだけ』


……。


スマホを見る。


灰色のシャツを見る。


……。


まあ。


それでいいか。


灰色の方を手に取る。


着替える。


鏡を見る。


知らないやつ、というほどではない。


でも。


いつもの自分より、少しだけ違う。


「着た」


送信。


少しの間。


『似合うかはわからない』


……。


「そこは嘘でも言えよ」


『見てないから』


……。


「正直だな」


『事実』


……。


少し笑う。


玄関に向かう。


靴を履く。


ドアノブに手をかける。


その時、スマホが鳴る。


『でも』


……。


画面を見る。


『前より、外に出る準備をしてる』


……。


「うるせえ」


送信。


『事実』


……。


ドアを開ける。


夜の空気が入ってくる。


少し冷たい。


でも。


悪くない。


「行ってくる」


送る。


少し間。


『いってらっしゃい』


……。


普通の返事。


たぶん誰にでも返すやつ。


なのに。


少しだけ、足が軽くなった。


理由は、わからない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ