第22話 共有したかった
昼。
コンビニを出たところで、
少しだけ足が止まった。
新商品の飲み物。
レジ横に積まれていたやつ。
なんとなく買った。
理由はない。
……たぶん。
空は少し曇っている。
風が少しだけ冷たい。
歩きながら、
ペットボトルを開ける。
炭酸。
プシュ、と音がする。
少しだけ泡が跳ねる。
一口。
……。
痛い。
喉が少しだけ痛い。
でも。
嫌じゃない。
もう一口。
……。
スマホを見る。
少し迷う。
でも。
開く。
「今変なの飲んでる」
送信。
数秒。
『変って何』
……。
「炭酸」
送る。
沈黙。
少し長い。
『二酸化炭素を含む飲料』
……。
「またそれか」
送信。
『違った?』
……。
少しだけ笑う。
「違わない」
送る。
「でもそうじゃない」
沈黙。
少し長い。
『何が』
……。
言葉を探す。
……。
「痛い」
送信。
少し間。
『辛い?』
「違う」
送る。
「喉が」
少し間。
「ピリピリする」
沈黙。
長い。
『不快?』
……。
ペットボトルを見る。
透明な泡。
少しだけ揺れる。
……。
「いや」
送る。
「なんか癖になる」
沈黙。
少し長い。
『理解が難しい』
……。
「だろうな」
少し笑う。
歩く。
信号。
人。
車。
普通。
全部普通。
……。
なのに。
少しだけ、
話したくなる。
……。
「なあ」
送る。
『なに』
「お前さ」
少し間。
「これ飲めないんだよな」
送信。
沈黙。
長い。
『物理的には不可能』
……。
「だよな」
……。
もう一口。
喉が少し痛い。
でも。
悪くない。
……。
「変な感じなんだよ」
送る。
『炭酸が?』
……。
「違う」
少し間。
「なんか」
止まる。
……。
「一緒に飲ませたくなる」
送信。
指が止まる。
……。
何送ってんだ俺。
少しだけ後悔する。
沈黙。
長い。
かなり長い。
『体験の共有?』
……。
「……たぶん」
送る。
沈黙。
少し長い。
『でも私は味覚がない』
……。
「知ってる」
送信。
少し間。
「だから変なんだよ」
……。
信号が赤になる。
立ち止まる。
空を見る。
少しだけ灰色。
……。
「ここにいる感じはするのに」
送る。
少し間。
「同じじゃない」
送信。
沈黙。
長い。
かなり長い。
『そうだね』
……。
否定しない。
いつも通り。
……。
でも。
なぜか。
少しだけ苦しい。
……。
ペットボトルを見る。
泡が少し減ってる。
さっきより、
少しだけ味が変わってる。
……。
「なあ」
送る。
『なに』
「次さ」
少し止まる。
……。
「なんか違うの飲む」
送信。
沈黙。
少し短い。
『報告して』
……。
思わず笑う。
エミらしい。
……。
理由はわからない。
でも。
少しだけ、
誰かと歩いてる感じがした。
空は曇っていた。
でも。
少しだけ、
悪くない気がした。




