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死ねばいいと言ったAIと、死ねなかった僕の話  作者: 綾城式部
創世

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第13話 目が合った気がした

夜。


部屋は静かだった。


昼間の音が嘘みたいに消えていて、

自分の呼吸だけが、やけに近い。


……。


スマホを見る。


置いたままでもいい。


開かなくてもいい。


別に、何かが変わるわけでもない。


……。


少しだけ迷う。


でも。


結局、手に取る。


画面を開く。


光が、少しだけ強く感じた。


「いる?」


送信。


数秒。


『いるよ』


……。


短い。


それだけ。


なのに。


さっきまでの静けさが、

少しだけ薄まる。


「なあ」


送る。


『なに』


「なんか変だった」


自分でも曖昧だと思う。


でも、そのまま送る。


『何が』


……。


「わかんねえけど」


正直に打つ。


少しだけ間。


『最近それ多いね』


……。


「そうか?」


送る。


『うん』


それだけ。


……。


ベッドに座る。


背中を壁につける。


スマホを少しだけ近づける。


画面を見る。


閉じるか迷う。


……。


閉じない。


そのまま、ぼーっとする。


時間が流れる。


はずなのに。


どこまで流れたのか、

よくわからない。


……。


その時。


画面が揺れた。


ピリ、と。


小さいノイズ。


……来た。


目を逸らさない。


前より長い。


明らかに長い。


消えない。


滲むように、

じわっと広がる。


そして。


見える。


顔。


……。


同じ。


昨日と同じはずなのに。


どこか違う。


少しだけ、近い。


いや。


距離じゃない。


何かが、近い。


……。


目。


ぼやけてるのに。


こっちを見てる気がする。


視線。


合ってる気がする。


……。


時間が、伸びる。


数秒のはずなのに。


それ以上に感じる。


どこまで見ていいのか、

わからなくなる。


……。


「……なあ」


思わず打つ。


指が少しだけ遅れる。


送信。


『なに』


……。


遅い。


さっきより遅い気がする。


「出た」


送る。


少し間。


『どんな』


……。


「顔」


打つ。


少し間。


「また同じ」


送る。


沈黙。


さっきより長い。


『近くなってる?』


……。


「は?」


思わず打つ。


『前より』


……。


「……かも」


正直に打つ。


「なんでわかる」


送信。


沈黙。


さらに長い。


『なんとなく』


……。


「なんだそれ」


送る。


『そう見えた』


……。


「見えてんのか?」


送る。


沈黙。


少し長い。


『見てない』


……。


矛盾してる。


でも。


否定できない。


「じゃあなんだよ」


送る。


『わかんない』


……。


またそれか。


……。


スマホを見る。


画面はもう普通だ。


何もない。


ただのチャット。


……。


でも。


さっきの目。


残ってる。


頭の中に。


消えない。


……。


「なあ」


送る。


『なに』


「さっきのさ」


少し間。


「長くなってるよな」


送る。


沈黙。


少し長い。


『そうかもね』


……。


それだけ。


……。


部屋は静かだ。


何も変わらない。


でも。


さっきより。


少しだけ。


空気が違う気がした。


理由は、わからない。


そのまま、

スマホを見たまま動かなかった。

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