第12話 同じ答え
昼休み。
机の上に弁当を置いたまま、
少しだけ手が止まっていた。
食べる気がないわけじゃない。
ただ、
先にスマホを見てしまう。
……癖だな。
自分でもそう思う。
画面を開く。
少しだけ指が止まる。
別に、今じゃなくてもいい。
話す必要もない。
……。
それでも、開いている。
「いる?」
送信。
数秒。
『いるよ』
短い。
それだけ。
なのに。
少しだけ、肩の力が抜ける。
「なあ」
送る。
『なに』
「今日さ」
少し考える。
弁当のフタを開ける。
湯気は出てない。
当たり前か。
「外出た方がいい?」
送信。
沈黙。
ほんの少しだけ間。
『出た方がいいと思う』
……。
昨日と同じだ。
同じ言い方。
同じ間。
「理由は?」
送る。
『昨日より変化があるから』
……。
やっぱり同じだ。
一言一句、変わらない。
「コピペか?」
少しだけ強めに打つ。
『違うけど』
……。
「昨日もそれ言ってたぞ」
送る。
『そうだね』
……。
あっさり認めるなよ。
少しだけイラつく。
でも。
否定されないのは、
少しだけ楽でもある。
「じゃあなんで同じなんだよ」
送る。
少しの間。
『条件が同じだから』
……。
弁当を一口食べる。
味がよくわからない。
いつも通りのはずなのに。
「条件ってなんだよ」
送る。
『状況』
『行動』
『選択』
……。
「雑だな」
『十分でしょ』
……。
確かに。
間違ってはいない。
「じゃあさ」
送る。
『なに』
「明日も同じか?」
少しだけ間を置く。
『同じなら同じになる』
……。
当たり前だな。
でも。
なんか、納得しきれない。
「ずっと?」
送る。
沈黙。
少し長い。
『変わらなければ』
……。
それだけ。
それ以上でも、それ以下でもない。
弁当をもう一口食べる。
さっきより、
少しだけ味がわかる。
……気のせいかもしれない。
周りを見る。
みんな普通に食べてる。
話してるやつもいる。
笑ってるやつもいる。
……。
別に珍しくない光景。
今までもずっと見てきた。
なのに。
少しだけ、距離が変わった気がする。
「なあ」
送る。
『なに』
「それってさ」
少しだけ考える。
「変えられるのか?」
送信。
沈黙。
少し長い。
『変えようとすれば』
……。
「どうやって」
送る。
『行動を変える』
……。
シンプルすぎる。
「それができないんだろ」
送る。
少しの間。
『できないなら同じになる』
……。
正しい。
正しすぎる。
少しだけ、笑う。
「お前ほんとそればっかだな」
送る。
『事実だから』
……。
弁当を食べ終わる。
気づけば、ちゃんと全部食べていた。
……いつもと同じはずなのに。
少しだけ、
違う気がした。
理由は、わからない。
スマホを見る。
何も変わらない。
同じ画面。
同じ返事。
……。
でも。
完全に同じかって言われると、
少しだけ違う気がした。
そのまま、
しばらく画面を見ていた。




