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悪役やるならこんな風に  作者: リボン会長


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68話

 

 公爵家のやり方を覚えるためアミーは最初の2週間を家の、もといザブナッケの管理官のもとで研修を受けていた。

 私の側近ということで初めは拒否をされるかと心配したが何事もなく研修は進み、最終日にはザブナッケも領地に戻ってきてアミーと顔を合わせたがこれも何事もなく終わった。


「やっと本日から、ハーゲンティ様の側近として仕事ができます」


 嬉しそうにアミーは私の前に跪く。出発の時に見せた、大人の仲間入りができて誇らしいという感情が今日もよく伝わってくる。

 アミーの背後に注意は必要だけれど、アミー自身が直接私に危害を加える可能性は低い。

 なら、私はアミーにシンヒカーより信用されるようになればいいのだ。


 う~ん、急に悪役っぽい。


「待っていましたよアミー。これからよろしくお願いいたします」

「はい!」


 管理官の仕事は読んで字のごとく管理をするのが仕事だ。メインは主である私の予算管理と人事管理。

 予算は毎月ザブナッケの管理官から決まった金額が渡されるので、それを側近たちの給金・交際費・品位維持費など振り分けて回していく。投資などもここに入る。私はやってないけれど。

 人事管理は貴族の側近ではなく、清華の使用人が該当する。部屋の清掃や浴室のお湯の準備などは使用人の仕事なので、自分の部屋に入れる使用人を固定したい場合は管理官に頼んで清華を何人か雇うのだそうだ。管理官自身が人事権を持つ場合が多いので、人手が足りないと感じたら管理官の判断で使用人を増やすこともできる。

 今まではカシモラルが管理官の仕事もカバーしてくれていたので少しずつアミーに引き継いでいく。


「見習いですが管理官が側近に入りましたので、騎士団の清華の彼をハーゲンティ様の使用人として迎える交渉ができます。いかがなさいますか?」

「よろしいのですか?」


 カシモラルが急に、そんな提案をしてきた。

 私はびっくりして何度も瞬きを繰り返す。


「スコックス派の清華ですから、わたくしとしましてはこれ以上関わってほしくないとは思っております。ですが、ハーゲンティ様は時折心配なさっていましたからね」


 カシモラルは社交期間に領地で留守番をしていた騎士や側仕官に彼の様子を聞き出してくれていた。

 雑用仕事がメインの清華、その中でも扱いを分けられているグループがあり、彼はそこにいる。私と関わってからはそのグループ内でもつまはじきにされているようだ。

 そもそもスコックス派は、スコックスが第二夫人に迎えられてからできた、5年ほどの新興勢力だ。末端まできちんと統率が取れているとは言えないようで、清華の扱いが他派閥に比べて“軽い”そうだ。

 ちなみにバティン派は、スコックス派に対抗してそう名乗りだしただけで、そもそもシンヒカー侯爵家は建国当初からあるもっとも古い侯爵家のうちの一つ。潜在的な味方は圧倒的に多い。


「わたくしのもとに来て、少しでも待遇が改善されるのなら」


 こんなつもりじゃなかった。

 ゴメンの気持ちで胸がいっぱいになる。

 エルダがそっと私の頭の上に着地した。これは、なでているつもりなのかな。


「ただ、彼自身がそれを望まない場合もありますよね? 同じ過ちを繰り返したくありません。まずは穏便に意思の確認をしたいです」

「ええ、そのようにいたします。アミー様」


 カシモラルがアミーを呼んで指示を出す。

 私の後ろに控えていたチャクスが小声で「上級使用人になるのを断るなんて」と、非難ではなく純粋に何故? と首をひねっている。


「彼は確か、清華になって3代目でしたね。彼が結婚して子が生まれればその子から先は派閥から離れて生きられます。困ったときに親族からの援助は受けられませんが、貴族特融のわずらわしさからは開放されます」


 今だって、スコックスとの関係も元の家との関係もほとんどないにもかかわらず『出身の家がスコックス派だからこの清華もスコックス派』認定されているだけなのだ。周囲からは敵認定され、同派閥からも決して仲間とは認めてもらえない。でなければ、同じ派閥の貴族からあんなサンドバックのような扱いは受けていないだろう。

 わたくしの使用人になってしまえばそのわずらわしい貴族社会に自ら足を入れるも同然。地味な嫌がらせからは開放されるだろう。けれど、派閥争いの中心にくることになる。


「どちらがマシか。彼に決めてもらいましょう」


 できることなら、私の手を取ってほしい。

 最初から扱いが良くなかったけれど、私が中途半端に手を出してしまったから悪化したのは事実。

 拾った猫ではないけれど、きちんとケリをつけたい。


「ただのわたくしのワガママなのだけれど」


 チャクスが一度、私の方にそっと手を置いて離す。

 それで十分だ。

 私は落ちかけていた視線を上げ、カシモラルとアミーの会話を見守った。






 清華の彼が貴族ではないと言っても魔力はあるし、公爵家騎士団の歩兵に入れているのだから何かしら基準に達している。

 貴族に戻す方法があればいいのに。


 夕方、ファルファレルロに尋ねてみればパラパラと自らのページをめくった。


「これが帰敬式の手順だ」

「ん、はい?」

「呪文が使えるようになる」


 バンッ


 勢いよくファルファレルロを閉じる。


「そそそそれ私が勝手にやっちゃダメなやつ!!!!」


 相談する相手を間違えた。








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