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悪役やるならこんな風に  作者: リボン会長


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64話

 

 アミーが私の側近に入ることが決まったので、残りの野営にも参加して一緒にウハイタリの城へ行くことに。野営のための補給とアミーがウハイタリに移り住むための荷造りがあるので、シンヒカー侯爵の城には2泊する。

 少しだけムルムルが心配そうにしていたが、首を振られてしまったので私は追求せずおとなしく引き下がった。

 エルダの話は使用人たちにはまだ伏せておきたいとヴェパールが言ったので、私は積極的に引きこもって出発までの時間を過ごした。


「父上、母上、オ……兄上。行って参ります」


 シンヒカーが荘官ではなくウハイタリの城下に住む貴族なら家から通えるが、馬車で2〜3日の距離がある。側近として主の側に仕えるためには8歳でも親元を離れなければならない。


 これで、3人目。


 アミー、チャクス、ムルムル。

 バイェモンも側近であることを公にする時が来たら、ウハイタリの城に移り住むと言っていたなと顔を思い浮かべる。

 他の護衛官見習いたちは城下に住む貴族の子なので実家から通うし、元々私の側近になる前から城に通っていたのだから特別生活に大きな変化はない。

 チャクスとムルムルは望んで城に移り住んでくれているが、アミーはどう思っているのだろう。

 きっとオセーが跡継ぎに内定しているからアミーが私のところに来たんだろうと予想はつくけれど、本人は納得しているのだろうか。

 マルティムやボルフライたちとはそんな、少し踏み込んだ話をしたが、オセーとアミーの2人とは当たり障りのない話しかしてこなかった。


「しっかりとお仕えするのですよ。ハーゲンティ様のお役に立つことはウハイタリの役に立つことで、それは巡ってシンヒカーの役に立つのです」


 侯爵家でさらに公爵家の親戚だから側近になるようにと教育されてきたのだろうと予想くらいはできるが、親子の会話というより上司と部下のようで聞いていて少し辛くなる。


 息子さんはちょっと人見知りな部分もあるけれど、私よりしっかりしてるから大丈夫だよ。


 口をはさみたくなったが、アミーの顔を見て私はぎゅっと奥歯をかんだ。

 私の立っている位置からはアミーの表情が少ししか見えないけれど、仕事を与えられ大人と同じように扱ってもらえる事に喜びや誇らしさが滲み出ている。

 その顔を見て、おせっかいを働かなくて良かったと私は視線を落とす。

 ただ、きっと予定では私の側近ではなかっただろう。顔も知らない弟か、それとも異母妹(レライエ)か。

 予定外の主に仕える事になったけれど、ハーゲンティの側近で良かったと言ってもらうためにも、公爵に絶対なるのだ。

 今にも飛んでいきそうなエルダを私は両手で握り直した。


「アミーは雷の日に寝具へ潜り込む癖がありますからね」


 !?


「は、母上」

「それからーー」


 突然、大暴露大会が始まった。

 出発前に仲の良い親子なことが確認できてちょっと安心した。

 アミーは恥ずかしそうにしながら男性側近に割り当てられた馬車に乗り込んだ。






 夕方、切れかけた虫よけの魔法道具に魔力を込める。

 これは道中において私の一番大事な仕事だ。

 秋の終わり、冬が近づいてきたこの時期に魔力の無駄遣いだと遠まわしに言われたが、私は絶対にやめなかった。


 だってイヤじゃん。


 嫌だ。

 虫は嫌だ。

 視界に入るのも、耳元をかすめた時の羽音も。

 スプレーを撒いても、線香を焚いても、網戸に貼り付けても、撒き餌を撒いても、燻煙剤を焚いても、カーテンに吊り下げても、奴らは這い上がってくる。

 科学では防ぎきれなかった虫の侵入を、この魔法道具は完璧に防ぐのだ。

 これだけは魔法優勢。他は21世紀の日本の科学に軍配が上がるが、虫よけだけは、なんなら魔法の勝利である。


「虫よけの魔法道具、お部屋でも使用していらっしゃったと屋敷の側仕えから聞きました」


 アミーがそんなに虫が嫌いなのかと、私の手元を覗き込む。


「ハーゲンティ様の自室にも用意があります。寝台に持ち込む用、窓辺用、お茶室用それから」

「何個あるんですか!?」


 ムルムルが私の所持する虫よけを挙げ連ねる。

 アミーは理解できないという顔をしているが、これは私の側近全員が通った道である。

 嫌なものは嫌なのだ。

 いいじゃないか、他にアレが欲しいコレが欲しいとドレスや宝石をねだらないのだから虫よけの魔法道具くらい気が済むまで持たせてくれよ。


「それはもう、沢山あります」


 カシモラルまで会話に入ってきた。


「ハーゲンティ様がこんな用途の、あの場所で使うなら、と色々ご注文なされるので虫よけの魔法道具だけとても発展いたしました」

「え」


 私は顔を上げる。


「ハーゲンティ様のご要望はとても細かく、範囲指定のやり方に種類が増えました。それに小型化も進みましたね。ウハイタリの書陵官たちがそれらの応用を試みている真っ最中です」

「い、良い事、ですね!」


 思いつきで日本にあった物を例えに出しては「作ってみました!」と想像通りの虫よけを持ってきてくれるので毎回喜んでいたが、みんなががんばって再現してくれていたらしい。

 ありがとう!

 でも、そっか。


「なら、わたくし虫よけ以外にも作って欲しい魔法道具があるのです。城に戻ったらお願いしてみましょう」


 たまたまだけど、技術の発展に貢献できた!

 これは功績と呼んで良いのでは!?


 前世の知識もたまには役に立つもんだと、私は虫よけの魔法道具へ魔力を注ぐのを再開した。





 


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